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「弟切草」の続編。
〈小烏神社〉の宮司で様々な呪術を操る竜晴と彼を守る二柱の付喪神・抜丸と小烏丸の活躍を描くシリーズ第二作。
前作で大きなダメージを負った小烏丸は医師・泰山に診てもらいながら療養中。勿論カラスの姿で。
そんな折りに神社の鳥居の下に無惨な蝶の死骸が置かれるという不気味なことが続く。抜丸に見張りをさせた時は何事も起こらず、見張りを止めた日に再び死骸が置かれる。
同時にかつて幽霊に取り憑かれたのを祓ったことのある、おきいという娘が毎日梅雨葵の花を持って現れる。また同じ頃、氏子である花枝もまたある願掛けのために毎日葵の花を鳥居に置きに来ていた。
花枝に恋のライバル登場。それも花枝の弟・大輔が嫌悪感を抱くほどあからさまな態度の娘なのだ。
しかし世間ずれしている竜晴には通じない。花枝の秘めた想いにも気付いていないが。
大輔がヤキモキする間にもおきいは毎日神社へ通い詰める。果たして蝶の死骸もおきいの仕業なのか? 何故?
一方で小烏丸が大怪我を負ってまで助けた武士・伊勢貞衡が再び現れる。小烏丸との関係は分からないが、貞衡が飼っている鷹・アサマは何と話す鳥だった。カラスの姿の小烏丸を一目見てただのカラスではないことも見破っている。アサマもまた付喪神なのか?
そして天海僧正からは不忍池に蝶の大群が現れたので見て欲しいという。そのことは後の恐ろしい呪術の前触れだった。一体誰が、何のために?
恋の苦さと苦しさと切なさが大半だった。梅雨葵に隠された古く苦しい恋の記憶、そして今も花枝やおきいに潜んでいる成就するかどうか分からない想い、更には小烏丸の遠い記憶の中に納められた主らしき平重盛と異母妹の…。
「からころも」から続けて篠さん作品を読んだが、こちらのシリーズにも和歌がいくつか出てくる。作家さんはずいぶん和歌に思い入れがあるようだ。
それにしても気になるのは小烏丸と伊勢貞衡の関係。貞衡は小烏丸・抜丸の本体である刀を探していることも分かった。抜丸の本体である刀は〈小烏神社〉にあるが、小烏丸の本体である刀は安徳天皇と共に檀ノ浦に沈んだとされ行方不明。勿論貞衡には言えない。
貞衡の鷹・アサマは何らかの力を持っているらしいが、そのことを貞衡が知っていて知らぬ振りをしているのか本当に知らないのかは分からないまま。だがそのうちにアサマが〈小烏神社〉の秘密を探りだしそうで心配になる。
そして大掛かりな呪術で江戸に、多分将軍に害をなそうとする存在の正体も分からないまま。こちらもそのうちに竜晴・天海僧正連合で見えざる強敵と闘うことになるのか?
様々な疑問と不安だけが残って終わりそうなところ、花枝の願掛けの内容が分かってホッコリした。大輔も姉想いが過ぎて熱くなるけど根は良い子。竜晴も徐々に人間らしさを見せている。
※「弟切草」レビュー
https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4344429966#comment
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シリーズ第2弾。小烏神社の鳥居の下に、蝶の死骸が置かれるという事件が起きる。そしておきいという美少女が登場。前作より花枝と大輔の出番が増えたかな。良い姉弟だ。一応花枝がヒロインっぽい。
そして気になるのは小烏丸の過去と伊勢殿との関係。蝶の事件のほうは解決するけど、伊勢殿についてはむしろ謎が深まったかなあ。
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小烏神社奇譚 シリーズ2
小烏神社の若き宮司・賀茂竜晴は、整った顔立ちゆえ、やや冷たく無愛想に見える。
陰陽師の流れをくむ竜晴には「抜丸」と「小烏丸」と言う、付喪神が二柱いる。
小烏神社の庭で、薬草を育てている医者で、本草学者の立花泰山が唯一の友である。
ある日、何かに憑かれたように飛び立った「小烏丸」は、伊勢貞衡と名乗る侍が、鷹に襲われる所を助け、大怪我を負ってしまう。
そんな折、小烏神社の鳥居の下に無残な蝶の死骸が置かれていて、手向けるように梅雨葵が置かれていた。
翌朝も、同じ場所に、蝶の死骸があった。
そこへ、梅雨葵を置いたのは自分だと言う、美しい娘・おきいが現れる。
江戸の裏鬼門にあたる芝 増上寺付近に悪霊が寄り付き、結界が綻び始めている事を察知した天海は、貞衡を伴い、芝へと向かう。
知らせを受けて、竜晴も、抜丸本体を携えて、芝へと向かう。
壇ノ浦以前の記憶を無くしている、小烏丸だが、貞衡との関係や、記憶の断片がでてくる。
冷たく、人間味のなかった竜晴も、泰山や、花枝・大輔姉弟と触れ合い、少しずつ、温かさが出てきて、目が離されなくなってきた。