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1973年から現在に至るまでの異なる時代にタクシーを走らせた運転手たちの生きざまを通して当時の世相をあぶり出すノンフィクション。
73年のオイルショックにおける石油高騰に拍車をかけた売り惜しみ、トイレットペーパーや洗剤の買いだめ、バブル期の05年、「居酒屋タクシー」と呼ばれ霞ヶ関の役人と特別な関係を築いた個人タクシーがあったこと、07年、農協の誘いのままに新規の作物栽培に手を出し失敗して借金を重ねた挙げ句、タクシー運転手になった男の話などがドラマティックに綴られている。
うまくいくときは月100万円以上も稼ぐがリーマンショックや規制緩和など、世の景気や流れに翻弄される業界の様子を自らもタクシー運転手だった著者が臨場感豊かに描いている。
ただ、3人称で各人物を紹介していると思えば、時々
1人称で語られる場面もあり、それぞれの人物の関係が最後までわからないのが自分にはすっきりしなかった。また、各章内の小項目の始まりがいきなり唐突な感じで切り出される文体もひっかかった。
さらに、タイトルから察するに、バックミラーに写る客との対話を通して世相を描く場面が中心になるのかと思っていたが、そうでもなく、期待感か削がれた気がした。
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著者はあとがきを「タクシー運転手の物語を書きたかったわけではない。」と言い切って書き始めています。しかし、ノンフィクションかフィクションかわからないままつぶやかれる登場するタクシー運転手たちのモノローグはそれぞれに極私的な人生の物語になっています。それはスコセッシの映画「タクシードライバー」のようです。それぞれが時代の流れの中で翻弄される葉っぱのようなディテールの積み重ねで語られています。ザ・ナターシャ・セブンとか阪神のペナントレース競り負けとか加賀まりこ出産とか夏目雅子死去とか…そうして日本のデ・ニーロたちの小さな思い出が日本の昭和、平成、そして令和の物語に編み上げられています。自分のタクシーの思い出の瘡蓋もだいぶ引っ剥がされました。変わったタクシードライバーいっぱい出会ったなぁ。題名のように「いつも鏡を見ている」というようにルームミラーには時代が写っていたと思います。タクシー車内は時代の缶詰かもしれませんね。このコロナ禍でも「地球タクシー」とか「あのとき、タクシーに乗って~緊急事態宣言の東京~」とかタクシー目線の番組増えているような気もします。
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タクシーのフロントガラスは世相の鏡。
『悪い話は最初にきて、いい話は最後にならないとタクシーには回ってこない』
1973年から2020年までオイルショック、バブル、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍。昭和平成令和と続くニッポンの世相を様々な事情でタクシー運転手になった5人が交錯し日本の生活を映し出す「断片の社会」。
自分が生きてきた半世紀を振り返った自分史なのだ。
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タクシードライバーと世相、ということで「人生タクシー」をイメージしたけれど、ごくパーソナルな個人史だった。
文章が読みにくくて残念。