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起承転結の転に当たる、第2部の上。まりえの肖像画を描くのが中心に進むのかと思いきや、雨田具彦の過去が分かってみたり、ユズの今が分かってみたり。こう拡散させてどう収束させるんだろうと思ったら、事件発生。気になるところで4巻目の下へ。とりあえず、メタファーって何だって気になるな。
5月の週末で読み進め、復活した出張の飛行機で読み終えました。
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ー あたりが暗くなってくると私は台所に行って、缶ビールを飲みながら夕食の支度をした。ブリの粕漬けをオーヴンで焼き、漬け物を切り、キュウリとわかめの酢の物を作り、大根と油揚げの味噌汁をつくった。そしてそれを一人で黙って食べた。
語りかけるべき相手もいないし、語るべき言葉も見当たらない。その簡素なひとりぼっちの夕食を食べ終えかけた頃に、玄関のベルが鳴った。どうやら私があと少しで食事を終えようというところで玄関のベルを鳴らそうと、人々は心を決めているらしかった。
一日はまだ終わってはいなかったのだ、と私は思った。長い日曜日になりそうな予感がした。私はテーブルの前から立ち上がり、ゆっくりと玄関に向かった。 ー
村上春樹の作品はどの作品も正確に何が起こっているのか分かりにくい作品が多い。今回も本当の意味で何が起きていて何が起きていないのか、よく分からない。
まぁ、最終巻を読むか。村上春樹は最初から村上春樹でしかないのだから。
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(第2部の上下巻あわせての感想です)
『1Q84』よりは面白く読めました(『多崎つくる』は未読)。でも『ねじまき鳥』以降に発表された短編にあったような凄みは無いかなと。長編だと『羊をめぐる冒険』とか『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』あたりの頃のドキドキ感が今となっては懐かしいです。
面白かった点
・免色の人物造形。最初は村上作品でよくある完璧型の人間かと思っていたら、意外とそうじゃなかったりするところがいい感じでした。
・イデア(他者の認識の基となるもの)とメタファー(思考そのもの)の対比構造に持ち込むあたりがうまい。
・騎士団長とのシュールな掛け合いが読んでいて楽しい。まるで伊坂幸太郎作品を読んでいるような感じでした。あ、元々伊坂さんは村上さんをリスペクトしていたんだっけ・・・。
残念だった点
・『1Q84』ほどじゃないけど長すぎ。
・顔のない男の肖像の件が煙に巻かれた感じでモヤモヤ感が残る。
・もういいかげんセックスフレンドは登場しなくてもいいんじゃないですかね?本作でも必要不可欠なものだとは思えなかったですし。
・ラストにもうひとひねり欲しかった。やや予定調和的な印象を受けたので。
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「これまで確かだと見なしていた物事の価値が思いもよらず不確かなものになっていくみたいに(文中)」という表現に代表されるように、段々と主人公の周囲の物象が歪んでいくような感覚にとらわれました。また、言葉の持つ意味の奥深さ、美しさに浸っています。 物語は下巻に向け大きく動き始めます。
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まりえは免色の娘?フォレスターの男は何者?鈴とまりえはどこに消えた?知りたいのに真実がわからないものが増えていく感じ。そしてこれらには何かでつながるのか?オイラの興味はユズとコミだけど、いつになったら出てくるのかな。オイラの知りたいことは4巻目で全部わかるのかな?この物語そのものもちゃんと終わるのかな?投げっ放しジャーマンか!
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物語では奇妙なことが起こり続けており、次は最終巻であるのに、謎は深まるばかり。
この世界のどこかで、イデアが騎士団長の姿を借りて、おかしな言葉で話しているんじゃないかと思えるほど、物語に引き込まれてしまった。
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真夜中の鈴とみみずくの羽音に導かれ、4枚の絵がパズルのピースのようにひとつの物語を語り始める。不思議な世界に読者を誘う、村上ワールド真骨頂の第2部上巻。
いったい何処に辿り着くのだろう。果たして今が過去なのか現在なのかもわからなくなる。主人公の現在地は、まさに私たち自身の姿を投影しているのかもしれない。
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起承転結の転
何もすべきではなかったのだ、そう思わせるのはなんなのか、物語はどう落ち着きを見せるのか、次の展開が気になる。
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一巡目での感想。
(村上春樹氏の作品は、何度も読み返す度にまた違うものが見えてきて、新たな気付きや、新たな解釈が生まれるので)
ストーリー展開や結末が分かっていても、再びページを開いてしまうとそこから読み返してしまう。読み返すと止まらなくなる。これは村上作品全てに共通する普遍。
気に入った音楽を飽きることなく何度も聴きかえすように。
村上作品は、文章を追うだけでしっかり体感できる。自分の心の中で描かれた情景が揺るぐことない映像として記憶される。
ピンクのスーツを着たふくよかな女性の後ろ姿だったり(世界の終わり)、イルカホテルに棲む羊男だったり(ダンスダンスダンス)。
村上作品だけは、何十年も前に読んだ本でも記憶を映像として呼び起こすことができるのは、この「心の情景」が描けている稀有な作家だからだと思う。
●心の情景
まるで女性器のような雑木林の祠の穴。
屋根裏に棲みついたみみずく。
「騎士団長殺し」「白いスバルフォレスターの男」「未完成のまりえの肖像画」が置かれたアトリエ。
谷の向こう側のまるで要塞のような免色さんの白い豪邸。
会話の合間に眺めた、窓にうちつけられた雨の雫。
●「性」「生」「死」
「性」「生」「死」は、村上作品で一貫して重要になってくる要素。
なかなか消化できないそれらの問題を、全てをまるごと享受して生きていく。
今回は「井戸」ではなく「穴」。
それは、茂みにひっそり隠れた「まるで女性器のよう」で更に「異次元に繋がっている」ことから、子宮を連想する。
無から有に変わる場所(命が有形化され、魂が宿る場所)、無風だけど水がある(羊水)。
別次元に迷い込んだ子宮(もしくは狭くて真っ暗な卵管なのか産道)を潜り抜けて再びこの世に生まれ落ちた時、私はもう一度生まれ変わり、ユズに会う決心をする。
そして、実質的な我が子ではないけれど、ユズの身籠った子供は、自分にとってかけがえのない子だと揺るぎない確信を得る。
●「イデア=顕れる」
ここで顕れたイデアは、内なる自分。
「罪悪感」「怒り」「内なる悪」「邪悪なる父」の仮の姿、可視化。
大切なものを奪われ、どこにぶつけたらいいのか分からない怒りのようなもの。
表立って出ることなく、心の中だけに留められた怒りのような感情を、ただやり過ごして生きてしまった、未消化のままのもう一人の自分。
昇華しきれてない感情があるものだけに見えるイデア。
雨田具彦にとって、愛する女性を殺された怒りと、自分だけ助かった裏切りと罪悪感(騎士団長殺し)。
私にとって、幼いコミを奪われた病魔と何もできなかった罪悪感、ユズが浮気して突然去っていった怒りとそれに向き合えない罪悪感(白いスバルフォレスターの男)。
秋川まりえにとっては、母の命を奪ったスズメバチへの怒り、心を通わせられない父親への憤り。笙子への罪悪感。(免色家の謎の男)
私が騎士団長を殺したことで、雨田具彦のイデアは救われる。
そして、穴の中に��り、コミを失った現実としっかりと向き合う。
まりえは免色家で、スズメバチや謎の男と対峙する。
喪われたはずの愛する存在は、完全に失われたわけではなく、今も尚、自分を救ってくれている。
●「あらない」(「在る」と「無い」)
騎士団長の口癖「あらない」には、「在る」と「無い」を両方含んだ「ない」である。
「在る世界」と「無い世界」で判断しがちだけれど、実は「無くなった」ものは、完全に「無」になったのではなく、「在りながらして無い」のだ。
●「顔なが=メタファー=遷る」
顔ながは、時空や次元を超えた目撃者(冷静に判断できるもの)で、二つの世界の蓋を開ける者。
屋根裏を覗いた私そのものが、雨田具彦にとっての顔なが。
●「顔なし=二つの世界の橋渡し」
現実の世界(生・肉体)と非現実の世界(死・魂)の橋渡し的存在。
橋渡しが可能になるアイテムが顔なし次第で都度変わる。(鈴、ペンギンのお守り、完成した肖像画)
免色渉=顔なし。
免色渉の肖像画を完成させたから、ふたつの世界を行き来することができた。
私は冒頭のプロローグで、顔なしの肖像画を描こうとしていることから、何らかの理由で再び向こうの世界に行こうとしているのかもしれない。
●穴の中の世界
穴の中の世界は、子宮の中で命が芽生えることと似通っているように感じた。
有形が無形になり、無形が有形になる、「在る」と「無い」が通り道となる場所。
逆らえない運命のようなもの。
水があれば飲まずにいられないような(羊水)
川を渡るしか選択肢がないような(三途の川)
細い穴を潜り抜けるしか道がないような(産道)
●二重メタファー=免色渉?
「1つの精神が同時に相反する2つの信条を持ち、その両方を受け入れることができる能力のこと。あなたの中にありながら、あなたにとっての正しい思いをつかまえて、次々に貪り食べてしまうもの。そのように肥え太っていくもの。それが二重メタファー。それはあなたの内側にある深い暗闇に、昔からずっと住まっているものなの」
物事には相反する表と裏があり、それがセットでひとつである。日が当たれば必ず影ができる。どちらか一方だけを無くすことはできないけれど、場合によっては影に覆い尽くされてしまうことはある。
目に見える現実世界の出来事だけでなく、別の世界(想像の世界)も信じてもいい。しかし、免色のように想像の世界に現実まで貪られてしまっては元も子もない。
現実世界と想像世界を上手に行き来できる柔軟さ、不確かなものを信じる力も大事、でもその信念は時に行きすぎると盲目的になり現実を脅かすものにもなりかねない。
真実の顕れであるイデア(揺らぎのない真実)観念よりも、メタファー(揺らぎの余地のある可能性)不確かな現実を信じる免色渉は、「まりえが自分の子どもかもしれない」という不確かな可能性を拠り所にするために、半ば強引に豪邸を買い取ったり、笙子を手中に納めたりする。
人間誰しもが、自分の正しさ(信仰)を追求するあまり、結果的に悪をもたらしてしまう���とがある。
●最後のユズのくだり
「私が生きているのはもちろん私の人生であるわけだけど、でもそこで起こることのほとんどすべては、私とは関係のない場所で勝手に決められて、勝手に進められているのかもしれないって。
つまり、私はこうして自由意志みたいなものを持って生きているようだけれど、結局のところ私自身は大事なことは何ひとつ選んでいないのかもしれない。
そして私が妊娠してしまったのも、そういうひとつの顕れじゃないかって考えたの。
こういうのって、よくある運命論みたいに聞こえるかもしれないけど、でも本当にそう感じたの。
とても率直に、とてもひしひしと。そして思ったの。
こうなったのなら、何があっても私一人で子供を産んで育ててみようって。
そして私にこれから何が起こるのかを見届けてみようって。
それがすごく大事なことであるように思えた」
これは、私が18歳の時に日記に綴った言葉とほぼ一緒。
私は免色渉やユズのように、完璧主義で徹底している。
避妊だってぬかりなく、計画外の妊娠なんて絶対に在りえないはずの条件で、妊娠してしまった。
そして、私はユズと同じように「産もう」って決心した。
結局産めなかったし、その後も流産を繰り返し、結果的に子宝に恵まれたなかったけれど。
それでも、あの時思ったこの感情や出来事は、私にとって「あらない」なのかもしれない。
現実には「無い」けれど、今でもしっかりと「在る」。
私の人生の核となっている。
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3/28発売!『騎士団長殺し』文庫第2部!
4枚の絵が、新たな謎を語り出す。人気作第2部も、まもなく文庫化!
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前巻と同じくとても読みやすかった。
秋川まりえの肖像画を書くところの続きから始まり、
秋川まりえと叔母の笙子と免色さんが意図的に、初めて対面を果たす。
そして笙子と免色は男女の関係になる。
これは図ったことではないと免色は言う、。
まりえはそれに気づいており、
夜の森の小径を抜けて私の家を訪ね、
私に伝えてきた。
また、掘り返した穴のことをまりえは知っていた。
そして、あの場所はあのままにしておくべきだった。
と言った。
あの場所が遊び場だったまりえは何を知っているのかどのように関わっているのか謎が残る。
私は無性に描きたくなり、あの穴の絵と白いフォレスターの男の絵を描いた。
この2枚の絵とまりえの絵と騎士団長の殺人の絵。
この4枚の絵が何を意味するのか、、
生き霊なのか幻想なのか、家のスツールに腰掛けていた雨田具彦は何を訴えようとしていたのか、、
さらに、私は衝撃の事実を聞かされる。
元妻のユズが妊娠しているとのこと。
相手は雨田政彦の会社の同僚のイケメンで性格もいい年下の好青年。
政彦はユズからも相談されており、板挟みになっていたとのこと。
私はショックを受けながらも受け入れるしかないといいきかせていたが、あることを思い出す。
ユズに離婚を切り出されてから当てもなく車で放浪していたころ、行き着いた東北である夢を見た。
寝ているユズと交わる夢。
とてもリアルな夢。
妊娠7ヶ月と考えるとその時期と合致する。
さらに、ユズは新しい彼とは結婚しないと言っているらしい。
ユズも同じ夢を見ていたのだろうか、
とここにも疑問が残る。。。
そして、最後にまりえが姿を消した。
穴のことを妙に語っていただけに、
穴が関係しているのではないかと推察はするがどうすることもできないでいると、
また騎士団長の姿を借りたイデアが現れた。
今日の午前中にかかってくる電話で、私を誰かが誘う。
私はそれを断ってはならない。
そんな言葉を告げた。
ここで、第2部上巻は終わる。
たくさんの謎が残り、これがどう解明されていくのか早く続きを読みたいと思わされた。
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このところ多忙につき、読感を書いている時間がない。
とりあえず、読みましたということで、読了日と評価のみ記載。
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ここに来て、大きく物語が動いた…
どこかに繋がっているのかも知れない、と主人公は言っていたが、どこかってどこだよ!みたいな。
遷ろうメタファー編ってあるだけに、穴は何かのメタファーなんだろうし…うーん……
私の頭は考察向きではないので、純粋に作品を楽しもうと思います
ただ、最初から思ってたけど、1Q84に通ずるものがあるような。まりえちゃんの話し方とふかえりの話し方は似ていると思うし…章があるところも同じだし…主人公は絵画で天吾は小説…
前々から思っていたけど、村上春樹作品に出てくる食事シーンが大好きで、どのご飯もとても美味しそうなんだよね……
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不気味で非現実的なようでいて、一線は超えない。そんな印象を受ける作品だと改めて認識した第3部。
これまでの村上春樹作品は現実的な物語と非現実的な物語とがはっきりと分かれていたけれど、これはちょうどその中間の、線引きできない領域を狙っているように感じられる。そういう意味で新しい物語とも感じる。
ただ、良くも悪くも村上春樹の”色”をやや薄めたように感じてしまい、これが新しい読者の獲得のためなのか、新しい村上文学の地平なのか、よく分からない…。
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主人公の周りの人物と共にいくつかのイベントが行われ、いくつかの不思議な事象に直面する巻。
1巻の最初と繋がりそうなアイテムは出てくるが、不思議な出来事に関しては3巻時点で断片的に起こっている印象。4巻ですっきりできることに期待したい。