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どこか私の心を肯定してくれているような、可視化してくれたような、空洞ができたような。淡々と澄んでいて滑らかで柔らかくて仄暗い、一冊まるまるとてもいい時間を過ごせました。
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なんか、凄かった…
カズオイシグロの「わたしを離さないで」に似たような、静かな熱を帯びてる小さな声に、注意深く耳を傾けるような読書だった。
オルゴール、リボン、写真、船、、、あらゆるものが「消滅」し、それをただ受け止める人々。
消滅したものと、その記憶が残った一部の人を取り締まる「秘密警察」。
小説家である主人公が書く小説と、起こっている出来事が次第に交わって絡まって逆転して、目眩がした。
読み終わった後、自分がどんな気もちなのか、わからなくなるような寄る方なさ。
小説でしかできない事だと思う。
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記憶刈りによって、「消滅」が進む島。ある時は鳥が、フェリーが、香水が、ラムネが…次々と記憶から消滅していきます。小説家である主人公『わたし』も、日々消えていく消滅を淡々と受け入れながら暮らしていきます。島民たちは、消滅を当たり前のように受け入れる不気味さ。
でも。
ある日。
小説が消えていき…。そして衝撃の結末に。
かけがえのないもの、本当に大事なものは何なのか。モノが消滅するよりも、心が消滅する虚しさと怖さ。
このコロナ渦とも重なって、感慨深く読み終えました。
小川洋子さんの小説は、丁寧な表現と、なんとも言えない空気感が大好きです。
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秘密警察に隠し部屋に焚書.小川先生はアンネの日記を愛読しているそうなのだけれども,そんな世界が描かれている.何かが失われていくという不条理をただ受け入れるだけの住人たち.それにヒロインの小説家が書く,言葉を奪われて時計塔に閉じ込められたタイピストの女性の物語が重なる.
小川先生が描く作品は,何かが失われる(あるいは失っている)という不穏な状況のなかで,淡々としていて少し死を予感させるセピア色の印象を受けるすてきな作品が多いのだけれども,本作もそんな作品.
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読み進めていくうちに、不思議な感覚がありました。
ファンタジーのような、けれど今の世の中に大切なことにどが、書かれているように感じました。
忘れてしまうとはどういうことか、
その意味が少しわかったような気がします
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何かが一つずつ消滅して忘れていく。忘れちゃいけないこともあるし、忘れないものもきっとあるのだと思う。だから「密やかな結晶」なんだろうな。きっと誰にでも忘れたくない、忘れない「結晶」はきっとあってそれは誰からも奪われないものだと思う。むずかしいけど消滅を描きながら消滅しないものを表現したいのかなと感じた。いや、でもわたしにはまだむずかしかったなぁ。
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何とも言えない独特の世界観。
この手の作品て内容や文章が小難しくて読みずらい印象があるがこの作品はとても読み易く取っつきやすかった。
無意識のうちに失ってるものなんて無限にあるし失わないと生きていけない感情や想いもある。
この小説の中の記憶が消えない人達は特殊な能力を持った生き辛い人達で、世間から見ると異質なものなんだろう。
こんな事、現代でも普通にある気もする。
如何にも海外の評価が高そうな作品。
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今、そして過去のどこかで起こっている、起こっていたことを、速度を上げて進めたり、ゆるめたり、濃度を高めたり、じわじわ迫りくるような切実さをもった小説だ、と感じた。
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こうだけ書くと、小説の中の小説家が描く小説の存在が置いてきぼりになり、ますます気になる。
R氏を、時計塔に閉じ込められた"わたし"と似たような環境下におくことで、記憶狩りに順応していく側が 記憶を保持し続ける抵抗者を保護する という構図が際立つ。小説家はこれを書くことで、自分が優位に立ったように感じたり、R氏との間に感じる隙間を埋める慰めとしていたのだろうか。
なら、"わたし"はなぜ最後に保護下から外れ、別の(若い)女に取って代わられるのか?小説というものの記憶を奪われたその後に?
小説の記憶を奪われた後だからこそ、R氏との繋がりはもはや意味をなさなくなり、小説の中で抹殺し、R氏の投影ではなく本当の(物理的な)身代わりを登場させざるを得なくなったのか。結局は、R氏ではなく自分がこの世から無くなる=抵抗者との関係性は想像の中でしか成り立たない関係性だった ということなのだろうか。
抵抗とはその異変に確信を持つ者だけが行うのではなく、順応していく過程の中にいる者も、何かしらの形で抵抗はしていて、確度の差あれ 人が異変に対して反応しているそのことが 密やかな結晶 とも読めるのかな、と思った。
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一読だけでは読み落としがたくさんありそう。小説家とR氏の関係性はこんなに歪んでないのかもしれんし。
この本を送ってくれた友人と膝を突き合わせて話したい…
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小川洋子ワールドを堪能できる1冊。
主人公の住む島は、1つまた1つ物や事が消滅する島。
ラストが気になり読み進めるも、世界観が美しくて噛み締めるように読んだ。
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その島では、記憶が少しずつ消滅していく。鳥、フェリー、香水、そして左足。何が消滅しても、島の人々は適応し、淡々と事実を受け入れていく。小説を書くことを生業とするわたしも、例外ではなかった。ある日、島から小説が消えるまでは…。刊行から25年以上経った今もなお世界で評価され続ける、不朽の名作。2019年「全米図書賞」翻訳部門最終候補作!2020年「ブッカー国際賞」最終候補作!
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【いちぶん】
「ええ。小説なら誰にもとがめられないそうよ。つまり、ゼロから作り上げてゆけるの。目の前にないものを、あるかのように書くの。存在しないものを、言葉だけで存在させるの。だから記憶が消えても、あきらめる必要はないんだって」
(p.285)
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二年くらい前から読みかけては途中で放置してってのを二度くらいやってしまってたので、読みきれるかなー と懸念はあったのですが難なく読めました。
小川洋子の『薬指の標本』が大好きなのですが、この密やかな結晶は、薬指の標本を死ぬほど冷たい海水にぶち込んでそのまま三年間くらい放置したみたいな、ど直球で、やりすぎなくらい小川洋子の世界観!
「モノ」に関する記憶が消滅していく、消滅によって支配された島の話、という異常なほど美しい設定なのに、小説そのものに鮮やかさは全くなくて、枯葉すら残ってない冬の風景をずっと見せられている感覚。まあ実際小説の中の季節も冬なので、そう感じるの当たり前なんですけど。あと、この密やかな結晶、薬指の標本と比べると結構分厚いんですよ。長編、と呼ぶにふさわしい厚みなので、美しいけれど退廃的なその設定や謎にエンディングとか解明を期待するじゃないですか?
あーーー!!知ってた!!!!
小川洋子!!!
小川洋子だからね!!!
知ってた!!!!
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R氏は隠し部屋で匿ってもらえて幸せだったのかな…そして主人公の私やおじいさんはR氏のように消滅しない心をもった人が身近にいて幸せだったのかな…
時計台に軟禁されたの小説の中の主人公とリンクしたときそんなことを考えてしまう。
大切な記憶が消えていく以上に、記憶も持つ者と持たざるものにある埋めようのない溝が最も辛く感じた。
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小川洋子さんの著書は2冊目。
なるほど、独特なんだ、と分かった。
新聞の読書欄で知り、読んでみた1冊。
初めのうちはまるでナチス政権下のドイツように、狩る組織と狩られる民とで不穏な空気感が流れていた。けれど、段々と様子は変わってくる。
「わたし」が消えたのは「わたし」自身のせいなのだろうと思った。
R氏に小説を書き続けるように言われればそうするし、おじいさんにすがり「どうやって生きていけばいい?」と訊ねる主人公には自分自身がない。
「記憶狩り」とは、そういうことを揶揄しているのではないだろうか…私たち一人一人が、世の中に人に流されて自分を失うことで起こることなのではないか…と思ったが、考えすぎだろうか。
でも、好きだったはずのものを誰かに言われたひとことで手放した経験は意外とあるようにも思う。
この作品は、読む人毎に感じ方や受け取り方が違うだろう。日本人だけでなくいろいろな国の人にも読んでもらって、どう感じたか、感想を聞きたくなる。
帯やあとがきには、コロナ禍に結びつけているけれど、私はそれはいささか強引なように思った。
私たちは声を出せないわけでもなく、無口にならざるを得ないわけでもない。
いっときの辛抱を大袈裟に捉えているようで、無理矢理結びつけて売りつけようとしている感が滲み出ていてちょっぴり不快だった。
単純に、この不思議な世界観が自粛生活のお供にピッタリだとは思う。
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なんとも、悲しいラスト…
解説まで読んで、このコロナ禍もたしかに不要不急なものが消滅させられてしまっているような、当たり前にあったものが無くなってそれに私自身慣れていっているものだってある。自粛警察もいるし。
小説のように記憶だって概念だって消え去ってはいないけど、無くなる事への慣れや、(いいんだか悪いんだかの)順応力がある。
最後、「わたし」の視点で事実出来事ばかり綴られてた気がするけど、こころはどう思ってたんだろう。