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帯に惹かれて購入。
「号泣ミステリー」ということで、期待しながら読みましたが、期待とは違い、心に響いた作品でした。
この作品は全4章からなる連作短編集で、南洋の島を舞台に震災を経験した人たちが描かれています。中心となる人物は尚美という人で、それに関係した人達の心の葛藤が綴られています。特に一番最後の章が、一番リアル感がありました。これは、〇〇さんのストーリー?(ネタバレすると面白さは半減するかなと思うので、〇〇が誰かはぜひ読んでみてください)なのかな…と思うくらい心の葛藤が丁寧・繊細で、より心に響きました。
実際調べてみると、リンクするところがあるので、一部はリアルなのではないかと思います。
湊さんの小説では、イヤミスの作品が多いのですが、この作品はそれを期待すると、物足りないかもしれません。ただ、嫌な人物を描かれているのは、秀逸です。イラッとさせてくれるのは、さすがと思ってしまいました。
段々と読むにつれて、映像がより立体感・奥行き感が増していき、味わい深いストーリーになっていきます。
ミステリー感はそんなにないものの、イヤミスではなく、読後感はちょっと爽やかにさせてくれる良い作品でした。
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幸いにして私は今までの人生で被災した経験はない。
身近な人が被災したという話も聞かない。
なので本当の意味で被災者の気持ちを理解できてるとはとてもじゃないが言えない。
「震災さえなければ……」という切実な思いに胸が痛む。
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2020.08.10.読了
連作短編でした。
私的には湊作品の中で1番好きかもしれません。
阪神大震災を題材の中心においています。
登場人物には繋がりがあり、それぞれの震災を軸に話は進んでいきます。
被災者と一括りにできない、簡単に言葉で表すことのできない想いが伝わりジーンときました。
良い作品に出会えてしあわせです
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震災をベースに描かれた4つの短編集。
イヤミスとしてのイメージが強い湊かなえさんですが、この作品はとても切なく、過去を引きずる人たちがトンガ王国に行って、明日に向かって、その先の未来に向かって進んでいく、切なくて暖かいお話でした。
どのお話も印象に残っていますが、
やっぱり最後の「絶唱」は苦しいお話でした。
トンガ王国、どんな所なのでしょう。
気になりました。
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絶唱。
①極めて優れた詩や歌。
②声をかぎりに感情をこめて歌うこと
解説によれば、この小説の題名が表すのは②の方だという。
阪神淡路大震災の被災者4組がそれぞれ主人公となり、震災の記憶と向き合い気持ちに折り合いをつけて、また歩き出すまでの物語。
4組は各々の目的のため、各自のタイミングでトンガに降り立ち、ゲストハウスを営む(あるタイミングでは営むことを目指している)ナオミさんと知り合う。
彼女の太陽のような朗らかで暖かな人となりに慰められ、背中を押されることになる。
ナオミさんは物語の灯台的な役割だ。
被災したにも関わらず、死ななかったことや身近な人を助けられなかったことに謂れもない罪悪感を持ち、震災の話題をされる主人公たちが描かれている。
「わたしはあの時〜、と自分のことを語りたがるのは、境界線のもっと外側にいた人たちばかりなのです」
少しでも内側にいれば、あまりの悲惨さや身近な人たちの死傷により気持ちが塞いでしまうだろう。
無力さに打ちのめされ、震災を語る多くの大人たちを恨めしくも感じるだろう。
自分が生きている意味を嫌でも問わずにはいられないだろう。
だけどこれすら想像だ。
「実際」には触れられない。
それでも、「自分の想像もつかないものが多くあるのだ」ということは、分かっている人間でいたい。
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イヤミスで有名な湊かなえ味は薄いかなーと感じたけど、最後まで読むと心が浄化される良い話でした。
1つ1つの話は少しずつ繋がってて、でも語り手を話ごとに変えることで1つの全体像が見えてくる。それを踏まえた上で、人物の境遇に共感したりしなかったり...
ミステリー要素はなくはないけど、もっとドロドロした感じのがお好きな方にはおススメしないです。
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大切な人を失い、大切な人を想い、大切な人を求め、祈り、救いを求め、また日常へと歩み始めるためのほんな一冊。
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【あらすじ】
阪神淡路大震災から20年。
心に傷を負った人々が、トンガで出会った尚美という女性を軸に紡がれていくそれぞれの後悔と希望を描いた連作短編集。
【感想】
これをミステリーと分類して良いのか、少し悩みました。ですが、それぞれの主人公が抱えている傷を解きほぐしていくという意味ではやっぱりミステリーなのかな?という気がしたので、カテゴリはミステリーを選択。
そろぞれの物語に登場する主人公たちはみんな不器用で、心に傷を抱えています。その根底にあるのが阪神淡路大震災。
それを風化させず、でも、生きている人々に希望も感じさせる物語はさすがです。
イヤミスの女王と言われた湊さんですが、最近では心の痛みを描き出す方向にメインが切り替わってきているように思います。
イヤミスが主流だっ頃も、やっぱり心の痛みを書いていたから、最後まで読み通せたのかな?そんな気がします
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湊かなえの連作短編集。
阪神大震災の記憶と、地上の楽園:トンガ王国・・・
四編の短編と五つの視点でそれらを結ぶ連作短編に仕上げています。
「イヤミスの女王」にしてはめずらしい読後感・・・イヤミスを求める人には薦めませんが、非常に読後感の良い作品です。
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史上最強の号泣ミステリーと書いていたので、
読んでみると、自分が期待する方向性とは、少し異なったのかなと。でも相変わらず、
女性の視点を表現するのが上手だ。
大学時代が人生の夏休みと呼ばれる所以は、
バイキング方式の料理のように、好きなものを好きなだけとればいい。自分のペースで生きていけると、表現してみせた。
確かに。
小中高校では、自分とソリが合わない人がいるが、どんなに避けようとしても、共同作業などで、排除したがる輩はいたなぁ~
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帯に書いてあったのでそのつもりで読めたけど、これまでの作品のようなラストの展開じゃないのは知らずに読んだらまた違った感想を抱いたかも。予備知識なしで読んでみたかった気もする。
従来の手法に作者自身が飽きてしまったのか、それともテクニックに頼らなくても大丈夫という自信や確信を得たのか。私は後者のような気がした。今までも優れていたけど、心理描写にさらに磨きがかかって派手な展開がなくても読み応えは十分にあった。また、私小説としての側面もあると解説でも語られていたけど、作者の書かずにはいられない衝動が感じられた。
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この本を読み切ったときに全ての話が意外なところで繋がって驚きました。沼田まほかるさんの作品ほどではないですが、感動する、綺麗で美しいミステリーでした。湊かなえさんの文章はどんな風にもなるんだなあと改めて感じました。
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心情の書き写し方や、各章の話のつながり方がいかにも湊かなえっぽくて引き込まれる。でも終わり方は、これまでとはちょっと違った。解説にやたらと納得した。最終章は、これがどういう「湊かなえっぽいエンディング」につながるのか、ドキドキしながら読みました。
境遇それぞれ、自分にしかわからない自分のことも色々、でもどうやって折り合いをつけて生きていくのか、そういうことかな。
そしてなぜトンガが舞台になったのだろう。行ってみたいぜトンガ。
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短篇集。4篇ともに主人公は異なるが、全て阪神淡路大震災を経験したことが共通点となっており、最後の短篇は著者の経験を多く使った私小説であることを匂わせてくる。ということで、震災により何か心に穴が空き、そこから一歩進む舞台装置として、太平洋の島国トンガが出てくる。
私は日本の各震災で災害の内側にいたことはない。関東にいたからガソリンの品薄等で困ったくらいだ。だから、日々報道される痛ましい事件の一つという認識であり、それ以上でもそれ以下でもない。だからなのかもしれないが、読んでいる途中から判明してくる「震災」という串が一冊の本に刺さっている理由が、いまいち見えてこなかった。
また、どれもこれも上手くいかない人が登場して、後からその根っこの部分に震災がある!みたいに書かれると、何でそんなに読み辛い見せ方をするのだろうかと思う。今でもNHKの「あの日 わたしは」など、テレビを始めとしたメディアで実際に被災された方やご遺族の声が紹介されることがあるが、そこには過剰な演出があるわけでもないにも関わらず、人の心を恐ろしいまでに強く揺さぶる。この小説であとからネタばらし的なミステリの手法を使うことで著者は何を狙ったのだろうか。
短篇それぞれの内容は、まぁ面白い。とりわけ、『楽園』『太陽』ではそれぞれの主人公が交差するのだが、互いに「なんだこいつ」的な目を向けていて、主人公の考えが一面的であることをあぶりだす。もちろん、「なんだこいつ」と思われるような行動や視界が限られてしまうことにも、そこに至るまでの複雑な事情があるわけで、その事情は外部の者には究極的には分かりようがない。
子どもの夕食をシュークリームで済ませることには驚いたが、牛乳が消費期限3日過ぎたくらいでわざわざ過熱して飲むことにも驚いた。私の基準は一週間である。加熱などしない。みんなどこかおかしい。そんなもんだ。
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「イヤミス」の湊かなえさんが好きだけど、絶唱の湊かなえさんは、もっと好き。
以前テレビで話しているのを聞いて「頭の中がストーリーで溢れてる人だ」と興味を持ち、その溢れ出るストーリーをたくさん読んできたけど、それが全て絶唱を書くための準備だったんじゃないかと思った。
いつもの湊さんっぽくないなー、イヤな感じが全然ないじゃん!と思いながら爽やかな気持ちで読み進めていたけど、最後でグッと心をつかまれて、泣きそうになった。電車の中だったから、泣くのはガマンしたけど。