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自然科学の分野では科学者が実験室で条件や環境、変数を任意で設定できる(ことが圧倒的に多い)が、社会科学の分野では難しい。既に生じている事象から、条件に合うものを自分で探してピックアップして比較しないといけない…とまあ、そのケーススタディが紹介されている訳ですが。さほどの厚みもないこの本で、2段組ですらなく。これで7つの事例が挙げられている。それも結構、「イギリスのインド統治」とか「奴隷制度とアフリカ」とか、大きい話が多く。これらの事例を咀嚼した上での「人類史を比較する」。頭、使ったわー。
頭使った割には個人的に引っかかる所があまりなく、読み流した感が。なんだか既視感もチラつくし、過去のベストセラー人気に寄りかかってる作りに編集部のさもしさを感じるんだよなー。
小綺麗で知的だけど、面白くない。期待し過ぎたかな。
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歴史にIFを持ち込む、ジャレド・ダイアモンド編による一冊。異なる分野のスペシャリストが、それぞれの分野の「歴史」について考察する。
「歴史にIFはない」という正しいのか間違っているのか、よくわからない(根拠が明確でない)「縛り」を取っ払い、仮定をして実験してみる、とだけ聞くと「本能寺の変がなかったらどうなっていたのか」といった感じで正直うさんくさい。ただこの本で繰り広げられていることは、あらん限りの数値を用いて、考えられる限りの変数を持ち込んでいて、なかなか説得力がある。
たとえば「奴隷貿易はアフリカにどのような影響を残したのか」という章では、結果「XXという結果を残した」という結論だけを重視せず、その結論を得るまでの過程、プロセスをいかにして組み立てたのか、因果関係と相違関係をどのようにして見分けたのか、得られた結果をどのように理解するべきなのか、に多くのページが割かれている。
同様の内容が「仮に」新聞に掲載されたとすると、『今も残る帝国主義の爪痕』といったタイトルに、奴隷貿易がもたらした結果だけが記事として添えられ、貧しいアフリカの農民の写真も載せられていることだろう。(それが「なんとなく正しいあり方」であると感じるのはあまりに素朴だと思う)
そういった素朴さと無縁の世界が覗けてとてもよかった。
https://twitter.com/prigt23/status/1018133148100542464
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「統計でそんなことがわかるのか」という面白さがあった。統計に使う要素を見つけてくるところは「さすが専門家」と、うならずにはいられなかった。本当に、よくそれを比較しようと思ったなあ、と。
それでも、「とりあえず統計でいろいろ調べてみよう」という取り組みでも、面白い結果が出たりするのではないか。
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ジャレド・ダイアモンドやダン・アセモグルなど、世界の知性と呼ばれる方々が、社会科学の領域で、自然実験の検証を行うもの。ドミニカとハイチは同じ島の東西に位置しているのに、どうしてドミニカは裕福で配置は貧困国から抜け出せないのか。フランス革命とナポレオン戦争の結果、フランスが支配した地域は他の地域と比べ発展しているというのはなぜか、など、人為的に「実験」できない事象を丁寧に比較して分析する手法。世界をみるのにこんなやり方がるのかと新鮮な驚き。
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気候が異なるポリネシア諸島、ハイチとドミニカ、アフリカの奴隷による人口流出の状況などによって、同じ条件のもとどう変わっていくかを見ていった。ポリネシアでは争いが大きくなっていった(イースター島)。アフリカでは奴隷は豊かな国でより取られ(貿易が盛んだったので)それによりその地域は没落していった。ハイチとドミニカは、連行されてきた奴隷の構成(ドミニカの方が多様性がなくコミュニケーションが取れていた)、独立時のリーダーの国土に対するアプローチにより大きくその後の繁栄度合いが変わった。
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比較研究法で、歴史を分析する。論文のような本なので、一般人よりも研究者向けかもしれない。私は研究者ではないので、内容が難しすぎてついていけなかった。まあでも、比較◯◯学といった分野はこのような研究をしているのだろうか。人々の営みを歴史的出来事や地政学的なこと、人の心理も含めて、統計的に分析するのは、よく分からないが、人類の未来をよくするためには重要な学問のように思えた。社会学を学ぼうとしている学生には、入門書として良いのではないだろうか。本書をきっかけに、さらに深く学べばいいような気がする。
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歴史学という学問は一般的にナラティブで定性的な叙述の積み重ねによるものだと理解されている節があるが、本書では自然実験という統計学のアプローチを用いた歴史学の世界のパースペクティブを極めて明快に提示してくれる。
自然科学において何かしらの因果関係を証明しようとする際には、原因にあたる因子を盛り込んだ実験群と、その因子以外の条件を全て同一にした対照群とで、比較実験を行うアプローチが一般的である。一方、社会科学たる歴史学においては、当然そのような純粋培養された研究室で測定できるような実験は不可能である。
そうした社会科学において取り得る統計的アプローチが自然実験というもので、これは自然環境などの先天的条件や制度・規制・統治方法等の後天的条件などの組み合わせにより疑似的に複数の実験群と対照群を分析する方法論である。
本書では以下のような8つのケーススタディが示される。
・アフリカの奴隷貿易は、その後から現在に連なるアフリカの経済所得の低さと関係しているのか
・太平洋諸島で森林破壊が発生する要因は何か
・アメリカ、メキシコ、ブラジルの銀行制度の設立に影響した因子は何か
本書の面白さは、自然実験というアプローチを、対象が広範囲かつ時間軸も長い歴史学の中でどのように導入することができるかを読むだけでも面白いケーススタディを通じて学べる点にある。これらを通じて、自然実験という統計的手法について同時に理解することができ、歴史学に興味のない人にこそ読んでほしい一冊。
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ナラティブな手法がメインと思われる歴史学だが、統計分析を用いた量的な自然実験や比較研究法と呼ばれる手法もある。そういった手法を用いた8つの研究を紹介。
ポリネシアの3つの社会の地理的条件に基づいた比較、アメリカ西部の移民増加の背景に物資や情報、マネーの移動や移民のイメージ向上があったこと、メキシコ、ブラジル、アメリカでの銀行制度の定着度の違いに民主的な政治制度の違いが関わっていること、イースター島の森林破壊は環境の影響要素が大きかったように、ハイチとドミニカ共和国の発展の違いに環境の要素もあったが、奴隷が多く人口密度が高く国民がクレオール語を話すハイチの不利、奴隷貿易がアフリカの発展に与えた影響、イギリスのインド統治において地税徴収制度が与えた影響、フランス革命がドイツに拡大したことがどのように影響を与えたか、制度が経済発展に与えた影響、そういった研究。
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複数著者からなり、研究対象も様々な内容で構成されていてすぐに読み切ってしまえた。 歴史の勉強は発生した事件と原因の羅列であることがベースとなっており、考古学もしくは文献的な証拠に基づくものである。本書の比較研究法は、思いもよらなかった因果関係や、新たな視点で事物を洞察できる点において画期的で、辻褄が合う説明に食い付きやすい人間のミスを緩和する面もあると感じた。 統計的な内容は専門度が強くてはっきり理解できないところではあるが、そこは割り切って流してしまってよいかと
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歴史でも物理と同じように実験出来るのか?
条件さえ整えばある程度は可能だし、上手くすればかなり比較により事実が明らかになるようだ。
奴隷の輸出が多い地域ほど発展が阻害されているという事実は、古い過去の事象がいまだに大きな影響を及ぼすという事例として広く認識されるべきであろう。
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ジャレド ダイアモンド氏編なので、期待して読んだが、本人担当の第4章は基本、既刊本の焼き直しだし、他の章はあまり楽しくなく、ややがっかり。
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邦題の名前が「歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史」と刺激的な内容である。
が、原題は「Natural Experiments of History」である。直訳するのであれば歴史の自然実験であろうか。
つまり、歴史を科学的に実験することは可能かという問いではなく、過去の歴史を丁寧に比較・検討することになって差分をとっていき原因を同定していくことを目的とする。
たとえば、ポリネシアの島々の風俗を比較することによって、その島がどのように発展してきたのか、そもそも何が原因となっていたのかということを理解する。
内容が各論的であり、章ごとの内容は以下の通り;
第1章 ポリネシアの島々を文化実験する
第2章 アメリカ西部はなぜ移民が増えたのか―19世紀植民地の成長の三段階
第3章 銀行制度はいかにして成立したか―アメリカ・ブラジル・メキシコからのエビデンス
第4章 ひとつの島はなぜ豊かな国と貧しい国にわかれたか―島の中と島と島の間の比較
第5章 奴隷貿易はアフリカにどのような影響を与えたか
第6章 イギリスのインド統治はなにを残したか―制度を比較分析する
第7章 フランス革命の拡大と自然実験―アンシャンレジームから資本主義へ
興味がないと退屈かもしれない。
邦題から期待していた内容から少し外れていたため少し残念。
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「歴史は実験できるか」ではなく、自然実験を用いた歴史論文集。個々の論文は面白いが、歴史は実験できるか、実験的手法をもって、意味がある結果を得られるのか、という話を、正面切って論じている訳では無い。
論文としては、第5章-アフリカ奴隷貿易はアフリカの経済発展に負の効果を及ぼした(多数の奴隷が輸出された地域ほど現在も貧しい)が、読み応えがあった。奴隷の輸出が多かった地域ほど、民族多様性があり、民族多様性がある程貧しいというのはショック。多様性があるというのは、ポジティブに捉えていたのだけれど、経済発展を阻害する要素にもなり得るのか。
全ての論文の結論が正しいと限ったものでは無いが、歴史の偶然や必然を考えさせられる。
しかし、自然実験、比較によって、いろいろ言えることはあっても、それは、実験室実験とは違っていて、やっぱり歴史は繰り返さない、同じものは二つとないよね。
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ジャレド・ダイアモンドが関わっている、ということで借りてみました。
が、正直言ってつまらなかったです。
これ、「わかっている人しかわからない」という、ある意味、「読者の知識に頼った本」、あるいは「読者を置き去りにした本」じゃないですかね。
ジャレド・ダイアモンドが関わっている章と、ジャレド・ダイアモンドが関わっているであろう「あとがき」は、読むに値する部分だと思いますが、他の部分は…。
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同様の初期条件のもと、変数となるパラメータが、一定期間後の社会にどんな違いをもたらすかを統計的数値ベースで比較する。対象は、ポリネシアの島々、インドの地主制度、奴隷貿易など。環境の影響、民主的しくみの重要性などがわかる。
歴史の新たな捉え方を知る。人類の行動の積み重ねの上に今があることを再認識。