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あまり好きではなかった、誇れなかった愛知が、名古屋が極彩色で描かれる。エネルギッシュで華やかで退廃的な昭和一桁の魅力あふれる人々に、不安の翳りを感じる戦争の気配。
若干エログロ寄りミステリー何だけど、それ以上に当時の息遣いの感じられる紀行文みたいで愉快千万。
今は亡き、祖父母に贈りたい物語。
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乱歩のパノラマ島を思い出す雰囲気だなぁーと思って読んでいたら、巻末に影響を受けたと辻先生自ら書いていた
伊藤晴雨のオドロオドロしい絵を見たばかりだったので、ジオラマ館のイメージは容易だった
あとラストエンペラーで坂本龍一が演じていた甘粕正彦さんが出ていてびっくり
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2021年1月刊(親本は2018年刊)。アニメ作品の脚本家としても名高い筆者が、齢86歳にして著したミステリ。2020年に発表され、史上最高齢でのミステリ年間ランキング三冠を達成した『たかが殺人じゃないか』に連なる物語と側聞し、『たかが~』を読む前に取り寄せた。筆者の本を手に取るのは、25年ぶり。1937年に開催された、名古屋汎太平洋平和博覧会を取材する女性記者に同行した利発な少年・一兵が巻き込まれる奇怪な事件の顛末が描かれる。
この博覧会を実際に訪れた経験のある筆者(愛知県出身)だけに、戦前の博覧会の絢爛たる模様、当時の空気感をあますことなく描き出していると思う。乱歩的な怪奇趣味が詰め込まれた建造物が登場する趣向も印象的だった。一方で、「とある人物に、自分の居場所を誤認させる」というメイントリックは、私がたまたま読んでいた、筆者の過去作のトリックに同種のものがあったので、新味を感じられなかった嫌いもあり、そこは減点。犯人の意外性にも乏しかった。
とはいえ、幻想趣味あふるる、犯人の最期の情景、本編の10年後を描くエピローグの叙情感などには感打たれたし、本書トータルでは、そう悪い印象ではない。早々のうちに、一兵のその後が描かれる『たかが~』を手に取りたい。(終)
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探偵小説とはかくありき。というわけではないが、奇譚的な描写もありつつ、その時代背景を最大限に活かす、まさに大御所のなせる業なのでしょうかね。懐かしくもある探偵小説というか、推理小説の世界に入れます。どうやらこの主人公は、様々な作品に横断的に登場するようですね。銀座と名古屋から見るその次代の空気感を楽しみつつ、歴史の勉強的な部分もあります。新聞の立ち位置やその時事を巧みに探偵小説に洒脱な感じで描きます。関連作品も読もうと思います。
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時代描写が長く、事件に入るまでに挫折しそうになりました。内容もグロテスクで、自分の好みには合いませんでした。
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先に「たかが殺人じゃないか」を読んで興味をもったが、本格ミステリとしての面白さは上記に及ばなかった印象。
不思議な建物と大がかりなトリックは十分に面白いものだったが、動機部分(や登場人物の行動)があまりしっくりこないのと、本の分量に対して謎解きの比重が少ないように感じられた。
おそらく、時代背景の描写やほろ苦い青春の表現に力が入っていたためと思われ、好みは分かれるだろう。
前半が全くストーリーに入り込めずモヤモヤしたが、後半はかなり引き込まれるものがあった(最終盤になるとややくどい気もしたが)。
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昭和12年の銀座と名古屋が舞台のミステリー。実際に1937年に開催された名古屋汎太平洋平和博覧会が物語に取り込まれており、読む楽しさを倍増させてくれます。読み終わったあと、当時の会場の写真を検索してしばらく見入ってしまいました。
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その時代に書かれたかのような作品のせいか、
グロテスクなシーンが多々見られ、
事件の動機も納得出来ず
私は受け付けませんでした。
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【メモ】
昭和12年頃の銀座、名古屋を舞台とするミステリ。
主人公は、辻真先の他の作品にも登場する那珂一兵
一兵は、銀座で似顔絵を描きながら漫画家を目指している。
一兵は、帝国新報の記者である降籏瑠璃子とともに、名古屋汎太平洋平和博覧会の記事の挿絵を描くために、名古屋に向かう。
名古屋では、帝国新報社の社長、樽井建哉の友人、宗像昌清伯爵に世話になる。
宗像の助手である別宮操、女執事である一条巴の世話を受ける。
宗像の友人である満州の大富豪、崔桑炎に出会う。崔の妻は朴潭芳であるが、愛妾の柳杏蓮、秘書兼看護婦の金白泳、護衛役の久遠チョクトがいる。
博覧会で、降籏瑠璃子の行方が分からなくなり、万平ホテルで保護されるという事件が発生する。
銀座では、一平があこがれている宰田澪という少女が、事件に巻き込まれる。
博覧会の後、宗像が建てた慈王羅馬館(ジオラマ館)の構造が紹介される。
また、崔桑炎の妻である朴が阿片中毒であるといったことが示される。
これらの中には事件の真相につながる伏線が張られている。
崔の愛人である柳杏蓮は、澪の姉であった。柳杏蓮の切断された足が銀座で見つかる。澪は、柳杏蓮が死ぬ前に出会う。澪は、裸にされ、髪を切られた状態で、名古屋で保護される。
トリックの一部を構成する宗像が作成した慈王羅馬館の紹介。1階から、「ひろがる間」、「あそびの間」、「まどいの間」、「ころしの間」、「わらえぬ間」、「いこいの間」、「いのりの間」がある。
1階の「ひろまる間」は遠近法を利用した錯覚の演出がされている。
2階の「あそびの間」は、関しあの遊園地で流行しているゲームを発展させたジオラマがあり、いくつかの遊戯に模様替えが可能
3階の「まどいの間」は、ルビンの壺の絵があり、真っ暗な部屋に得体の知らないものがある。
4階は、「ころしの間」で、壮大な戦争のパノラマ
一兵は事件の真相を推理する。杏蓮が東京に行ったのではなく、澪が名古屋に連れて来られていた。澪は名古屋で杏蓮に会っていたのであり、杏蓮は名古屋で殺害されていた。
その証拠は雨の音とレコード。澪は傷のあるレコードの東京音頭を聞いていたが、銀座では傷のないレコードが使われていた。
辻真先の作品らしく、最後にちょっとしオチがある。それは、
慈王羅馬館
那珂一兵(灘一兵)、降籏瑠璃子、宰田澪、崔桑炎、宗像昌清
柳杏蓮、別宮操、
● 推理のポイント
・瑠璃子が魚雷に閉じ込めたのは宗像。耳のいい瑠璃子が録音と聞き分けられるのかをためすため。瑠璃子が耳がいいことを聞いていたのは宗像だけであるという点が、一兵が宗像を疑うきっかけとなった。
・
● 隠され事実
宗像が事故に見せかけ、修市を傷つけたのは、大陸に行くのを阻止するため。大陸に移った日本人は、敗戦後、悲惨な目に遭っていた。
● 後日談(跋 名古屋の墓苑に青年は額ずく)
別宮操→継父の跡を継ぎ住職になる。
巴→��襲により死去
降旗瑠璃子→夕刊サンの樽井建哉と同棲
仙波(夜店の人物)→疎開しており生存
甘粕→李香蘭を世に送り出したが、自嘲の落書を残し自害
寺中少将→愛人とともに、満州軍の銃撃により死亡
金白泳→崔桑炎と結婚。財産を中国政府に寄付。崔とともに消息不明
澪→修市とともに生活。娘(杏)がいる。
● サプライズ
● 熱中度
● 納得度
● 読後感
● インパクト
● 偏愛度
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トリックとしては可能としても、建物の構造に仕掛けがあるのは、フェアではない気がする。動機もかなり無理があるような。