紙の本
人はロボットに支配されるのか?
2021/08/11 18:01
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投稿者:ヤッツ - この投稿者のレビュー一覧を見る
感情を持てば、ロボットもこれほど愛おしく感じるものなのかというのが一番の感想です。
ロボットと人の対等な関係での共存は可能なのか?そんな問いを考えずにはいられない一冊でした。一人一人の人間は、様々な感情や気持ちが複雑に入り混じりながら生きているのではないかと思います。そして、必ずしも最も道徳的であったり、合理的であったりする判断をするわけではないと思います。人の社会には格差や貧困、戦争や暴力などなど多くの課題すべきことがまだまだたくさんあります。それらの解決にロボットが一役を買ってくれることも多くあるのかなと思います。
ロボットが、例えば家族の一員として過ごすような光景は当たり前になるのかもしれません。ロボットと人間がどう共存するのかというのは、一人一人の人間が、どういう風に生き、どんな社会にしたいのかということを考えることが大切なことなのかなと感じました。
紙の本
わたしたちはまだ機械にウソのつき方を教える方法を知らない
2021/07/18 13:37
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投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あったかもしれない1982年の英国でAIロボが人と暮らす話。
あったかもしれない英国にはアラン・チューリングが生きていて
AIロボがすでに人間と一緒に生活していて、その雄型ロボットは
人間の女性と交わったりして、人間の男と三角関係になっていたりする。
あったかもしれない世界は、今後あるかもしれない世界とも違うかもしれないが
そこに暮らす人間の在り方は、要件によって都度都度変わりうる。
この物語の中で今の現実と異なる最たる要件が人型AIの社会への浸透。
人はどうやってAIを創り出すのか。人間にとって助けにもなれば
脅威にもなりそうなAIはひとまず人が創り出すもので、初期設定は
人を補助して人の能力を拡張するもの、性別はあるかもしれないが超越している。
ロジカルな思考はAIの方がまあ得意だから、初期設定で問題になるのは
正邪善悪の判断であったり共感の範囲であったり、物理的な力の範囲であったり、
生殖の方法であったり、人間に対する基本的な態度であったり、
つまりは人間の何を代替し拡張するか。
アダムの思考は正確で従順。人を好きになるという「弱い」感性すら
持ち始めているけど、正邪の判断に適度な忖度がまだ効いたりはしない。
世間にまみれた人間は「優しいウソ」みたいな論理までものにしてしまっているけど
アダムがそんな論理を使いこなすにはまだずっと学習が必要だから、
ときに主人である人間を追い詰めてしまったりする。なぜなら
「わたしたちはまだ機械にウソのつき方を教える方法を知らない」から。
融通は利かないけれど善良な意識を保ち続けるロボットを、人間が殺めることを
どう判断したらいいのか。人間が善良なる存在であり続けたいなら、遠からぬ将来に
意識の主体としてのロボットの心と対峙する時がくる。自分の体を変形もできる
世界が当たり前になるとして、そのときに生物無生物性別を超越した存在の
意識と向き合うことになる。自らが生み出したもの個体として認識できるのか。
優しいウソを普遍的価値に昇華できるのか。
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パラレル1982年に、愛とは正しさとは復讐とは子どもを持つとは…などいろいろ盛り込まれた意欲作。
読んでいくとどうしてもアダムに肩入れしてしまうので、アダムの真正直さ正しさが悲しい、つらい。
やはり人間は不完全であり、嘘も影も含む存在なのだなあ。読後、引き摺る。
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人工知能を持ったアンドロイドと暮らすってどういうことなんだ??という未知の面白い体験が出来たことが良かった。倫理的な問題も散りばめられているので、思考することの醍醐味を味わえた。人間とロボットの境界線が曖昧になる世界って不思議だ。
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うだつの上がらない主人公の男チャーリーが母親の遺産で買ったアンドロイドのアダム。一緒に暮らしていくうちに、アダムがチャーリーの恋人・ミランダを好きになってしまい…という話。
まず、アンドロイドの感情はどこからくるものなのか?という問いがある。アダムの感情はアダム自身の内部から自然発生的に湧き出たものなのか、それとももともとプログラミングされていたものなのか。AIを取り扱う話はまずAI自身が信頼できない語り手として存在しているところが、物語の不安定要素になっていて面白い。
また、人間の行動基準や意思決定基準の何といい加減なこと。不合理で不条理で不公平で、でもその揺らぎがあるからこそアダムの言う通りこの世には「文学」が存在するのであって、そんな不安定さが入る余地のない世界は味気なさすぎるのかもしれない。ただ、その機微をアダムが理解しようというのはチューリングが指摘するように、かなり難しい。自分の心の在り様を完璧に説明できる人間は恐らく一人もいないから、そんな人間がその機微を機械にプログラミングできるわけがない。
そしてアンドロイドは人間が「所有する」ものなのだろうか。それともアンドロイド自身が誰にも所有されない独立した「一個人」なのだろうか。チャーリーが自分のお金を出した買ったアダムが稼いだお金は、いったい誰のものなのか。アダムの意思を無視してアダムの電源をON/OFFする権利がチャーリーにあるのだろうか。使わなくなったり気に入らなくなったおもちゃは処分することが許されているが、そうなったアダムのことはどう処理するべきなのだろうか、はたまたそうして処理する権利は持たないのだろうか。アンドロイドという存在がただの機械と呼ぶには人間に近しすぎて、そうしたアンドロイドと人間はどうした関係性にあるのかがよく分からない。これまで人間が結んでこなかった新しいパターンの人間関係を、アンドロイドと構築しなければならないのかもしれない。
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発想が斬新だった。コンプレックスの固まりみたいな主人公とアダムとの対比が面白かった。もしかしたら、もうそこそこにアンドロイドがいるのかも、と思った。
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1980年代後半のイングランドに似たパラレルワールド。チューリンゲンは生きているし非常に優れたアンドロイドのいる世界。
25体の一体アダムを手に入れたチャーリーと女子学生ミランダの共同生活における関係性の構築と破綻の、そしてある意味再生の物語。ミランダの秘密のミステリー色と善悪と正義の判断、アダムを含めた3人の恋模様など盛り沢山で内容の詰まった物語だ。
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これは面白かった!
ドライな感じは楽しい。
西欧ではやっぱり機械に生命を見出すというか、壊すにあたっても倫理みたいなものを考えずにはいられないんだなーと思った。
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AIは恋をするのだろうか。
どうやって自分でいられるのだろうか。
不完全な人間は倫理と道徳観念とどう向き合っているの。
現実世界の裏返しのような(サッチャー夫人が追い出され、ビートルズが新譜を出して酷評される)1981年のイギリス。
デジタル分野は今より進んでおり、自動運転やAI搭載のアンドロイドがでてきている世界。
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アンドロイドのアダムを買ったチャーリーと、同じアパートの上の階に住む女子大生のミランダ。3人の奇妙な関係…、と書けば当然近未来小説と思うが、1982年の英国が舞台。サッチャー首相がフォークランド紛争に追い込まれていたころのこと。でも、そこは架空のお話なので、事実とは違う政治情勢になっている。そこがまた不思議な感じ。80年代にここまでできるのか?というのもあるけれど、どこまでが歴史上の事実なのか悩みながら読んだ(自分に知識がないからだけなんだけれど)。学習し続けるアダム、チャーリーが偶然手を差し伸べることになった少年マークの存在、何よりもミランダの過去などが次々と絡み合っていく。
AIが日常生活に登場している21世紀、人間に近いロボットは可能なのか、文学的に注目できる作品なのでは。
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「クララと…」と対になる作品だと思ったので読みましたが、色々入っていきにくくて…。ミランダに関しては共感できる部分もありましたが、文章とか背景とか全体的に難しかったです。
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面白かったけどこういうアンドロイドの誕生は実は怖いのではないかと思った。人間の心の繊細さ、揺れ、真実とその反面の折り合い···どこまで理解しあえるのだろう?
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AIと人間の関係が最初からそんなに良好と言い難かくちょっと、題名と内容があわないと感じてしまった。
アダムがミランダに恋をしているからの結末なのか?恋していなくても正しい結末だったのではないかと思う。
翻訳がいいからか、サラサラ読めて、よかった。
なんとなく、少し不完全燃焼かな。
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文学ラジオ空飛び猫たち第70回で紹介しました。
https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/70-e1evl27
結構イッキ読みできるようなエンタメ要素もありつつ、しっかりと人間とは何か?という問いに迫ってくる、あまり他に例のない作品な気がします。我々人間とは一体なんなのか。考え出すと止まらない作品でした。 カズオ・イシグロの「クララとお日さま」と読み比べると面白いです。クララの人工知能の哀しさを感じた人には是非読んでもらいたい。
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誠実さや正義感を持つロボットであるアダムとイブは、人間の不誠実、嘘、憎しみ、裏切り、ありとあらゆる人間の歪みを初めて知った時、絶望する。そして自殺行為に及ぶ。果たして人類は、この複雑な人間(邪悪で非道的な部分を含む)という生き物を模倣とする人格、精神を持ったロボットを完成させる日はくるのか。 人間の醜悪をアダムの正義感によって学ぶ。 アダムは恋することによって自我を確かなものにしていったのが面白い。