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10年程前に新聞の宅配サービスを辞めました、妻に提案されたときは驚きましたが、あまり紙ベースのニュースを家では読んでいないこと、新聞は会社で数種類置いてあるので、必要な時はそれを読めばよいと思ってそうしました。
ところが今年4月に末娘が文系の大学に入学したのを機会に、日経新聞を宅配してもらい家に新聞がある生活になりました。毎朝少しの時間ですが、日経新聞を目に通すようになりました、そんな私ですが、この本のタイトルの一部にある「日経新聞には絶対に載らない」ネタが一杯の本、というコピーに惹かれてこの本を手に取りました。
日本経済の現実について、55の質疑応答に応える形で、「埋蔵金発掘」で有名な高橋洋一氏が解説しています。大変勉強になった本でした。
以下は気になったポイントです。
・2017年3月、ノーベル経済学賞を受賞した、スティグリッツ米コロンビア大学教授が来日したときの提言のポイントは、1)消費増税を行うと景気が悪くなる、2)日本は財政危機ではない、ということであったが、マスコミは報道していない(p17)
・日経新聞に利用価値があるとすれば、財務省と日銀の事務方が何をどう考えているかを知れること(p18)
・2016年12月期の日経グループの連結バランスシートによれば、負債は総資産から純資産を差し引くと、3201億円、従業員3000人なので、一人当たりの借金は6000-1億円となる。これと同じことを、日本政府に当てはめて騒いでいる(p18)
・デフレは「マネーの量が少ないことが原因」と明言している、その理由は世界中のデータからマネーの量とインフレ率は関係があると証明されているから。日本では、近年の金融緩和政策によりデフレが解消されているから、その正しさが証明されている(p23)
・人口と経済成長には相関関係がない、という正しい前提のもので考えるべきである、移民の受け入れは関係ない(p25)
・マクロ経済政策については見るべき指標が決まっている、雇用(職があるかが経済の根幹)と、GDPである。最も重要なのが雇用である(p33)
・現在の当座預金残高260兆円のうち、マイナス金利になっている政策金利残高は、実は10兆円程度。法定準備金を含む「マクロ加算残高」と呼ばれるゼロ金利も40兆円程度、残りの約210兆円には、0.1%の金利(2008年に導入)ついている。全体でならすと、0.07%である(p38)
・ヘリコプターマネーとは、国債発行プラス金融緩和、のことで、一定のインフレ率を達成したら、そこでやめること。定義を明確にして使うべき(p45)
・先進国(日本、アメリカ、EU)が考えている自由貿易と、中国が言っている自由貿易は異なる。中国は「モノ」の自由貿易(FTA)、先進国の場合、モノの話は終わっていることが多いので、モノに加えて金融・資本取引も含めて自由化(EPA)をする、その違いの背景として、中国には知的財産の概念がほとんどないから。EPAを受け入れるならば、模倣する修正をやめなければならない、また資本取引も許されていない(p51、52)
・トランプ大統領は、多���間でやるのが嫌であり、二国間交渉なら乗るはず。従って、日本はTPP11という枠組みと、日米二国間自由貿易協定(FTAかEPA)という二本立てで交渉することになる(p56)
・ふるさと納税で官僚が文句をつけているのは、官僚による税金の差配ができなくなることが気に入らないから。この制度の趣旨は、税金を官僚による差配から、納税者による差配に変更することにあった(p66)
・パチンコが「遊戯」とされているのは、客がパチンコ店から出玉相当分の景品を受け取り、店のすぐそばにある景品交換所で換金する「三店方式」と呼ばれるシステムになっているのでギャンブルとされていない。パチンコは法的には風営法で規制されており、犯罪予防という名目で警察の所管=天下り利権。カジノ法案により国内にカジノが開業すれば、街中のパチンコ屋は一気に衰退するだろう(p70)
・日本人の成人の4.8%がギャンブル依存症とされている、米国の1.6%、韓国の0.8%と比較して高い(p71)
・アメリカでは学校の認可申請すると、教員とお金さえあれば、とりあえず認可がおりるが、これは運転免許による「仮免」のようなもので、本認可がおりるまでは何年か実績を上げる必要がある。日本では一発免許だから、森友学園のように慎重になりすぎる(p78)
・英語を自国の教師が教えているのは、世界中でほぼ日本だけ。論理的に導かれる教育の未来像は、英語教育の充実ではなく、文科省の方針に沿って英語を頑張っても、ほとんど意味がないということ(p81)
・ゆとり教育は最悪、そもそも教育というものは、強制性が伴わなければ意味がない、特に幼少時の教育は、ほとんど「躾」のようなもの(p83)
・最近では、一定の社会資本が整備されたので、コストはかかるが成果が乏しい「無駄な公共事業」が増える傾向にある。いまでは、教育や科学技術分野への投資が良い(p91)
・豊洲で問題になっているのは、環境基準=井戸水が飲めるかどうか、である。これを安全の基準にしてしまうと、東京の大部分の土地がアウトになる(p101)
・防衛には、自国防衛か他国と組むかがあるが、歴史データが明らかにしているのは、最も強大な軍事力を持った国と同盟を組んでいた国は、他国からの侵略を受けにくい、そして集団的自衛権の行使容認による日米同盟の強化となる(p105、106)
・実は、戦争の犠牲で最も多いのは、前線での同士討ちである(p106)
・コンサートの市場価値は、あくまでファンの主観的評価で決まるもの、チケット転売が起こるのは、定価が市場価値を反映していないことの表れ(p120)
・学歴とは、そいつが従順かどうか、尻を叩かれて頑張れるかどうか、18歳までどんな生活をしてきたかについての証明書のようなもの、スクリーニング手段としては未だに有用(p127)
・ブラック企業が跋扈するのは、失業率が高いことの証明、人手不足になれば条件の悪いブラック企業で働く理由がなくなるので自然淘汰される(p146)
・年齢を重ねるほどに同年代との差が開いていく理由は、現役時代の地位・収入がダイレクトに反映されるから、老後の��差はどうしようもない、自分で金を稼いで、あまり公的なところに頼らないほうがイイのが基本(p165、167)
・インフレ目標を設定するのは、失業率を下げるため、失業率とインフレ率は逆相関がある(フィリップス曲線)、2%のインフレが3%の失業率に対応する。失業率を下げようとして、金融緩和をしてインフレ率が上がりすぎるのを防ぐために、インフレ目標を設定している(p185)
・年金が保険である以上、保証額の大小は、掛け捨てになる人がどれくらいの割合いるかによって決まる。年金の保険料と給付額は、「40年間で払った額を、20年間で受け取る」ように設計されている、これは保険料=給付額になるように、保険料が設定されている(p189、190)
・公的年金加入対象者:6721万人のうち、実際に保険料を払っていないのは、たった3%。学生など支払を免除されている人を対象にしていくと、未納率4割という数字がでてくる(p191)
・人口が減っても、それを上回る経済成長があり所得が伸びれば、頭数はさほど問題にならない。過去には6-7人で一人を支えていた時期もあったが、それは単に現在よりも所得水準が低かったからに過ぎない(p195)
・AIの進歩が止まることはないので、アイデア力を磨く、あるいはAIを使う側に回るなど、何等かの対策を建てるのが必須(p199)
・人が仕事を熱心にできるのはせいぜい30歳から50歳の間であろう、人生の充実期は体力と脳の衰えが多少あっても、それまで積み重ねた知識や経験が衰えたところを補完しながら活動できる、30-40代であろう。50代になると、なかなか気力も体力も持続しずらくなり、全体的にフレキシビリティは失われている(p202)
・ビットコインと、従来の電子マネーとの違いは、管理コストが格段に低いこと、管理者を必要としない、世界中にいるユーザーのだれかに見られている(p209)
2017年7月9日作成
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一問一答形式で経済に関する事柄から身の回りに関することまでを明解に解き明かしてくれているので読み進めているうちになるほど!と感心する事が多いです。
特に秘密ネタがあるわけでも、特殊な解法があるわけでもなく、世の中にあるデータを元にロジックを組み立てて検証していく方法は本当に為になります。
著者の言葉を借りて言えば、前提が正しいかどうかを検証した上でロジックを考える。前提が間違っている問題を考えても意味はない。まさしくその通りです。
感情やイメージだけを通して物事を見る事の戒めになる貴重な一冊です。
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日本の問題点について一問一答でズバズバ答えてくれているのが良い。並べてみると日本の問題点はけっこうある。
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正直、この著者にはいい印象を持っていなかったが、この本はふむふむなるほどと頷けるものだった。
・人口と経済成長には相関関係にはない。
・東芝破綻の最大の原因はWH買収。買収には西村泰三氏が深く関与。
・原発は維持コストが猛烈にかかりビジネスとしての将来など何もない。
・年金破綻はウソ。
・慶應大学教授のD氏は財政討論で逃げたチキン。
土居教授のことかな?
などなど。
ただ私にはこの人が正しい意見なのかどうか経済学の素養がないので分からない。
反対意見の人の本も読んで考えたい。
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現在大学教授であり、官省での経験から政界とも深いつながりのある著者が日本社会で問題となっている55の項目について著者の観点から答えた一冊。
著者が専門としてきた経済の問題はもちろんのこと政治やビジネスや人生に至るまで本質を捉えた切り口からズバっと答えられていて読んでいて刺激を受けました。
第一線での経験から得られたこともふんだんに書かれており、パチンコ店と警察官僚との関係やインフレと失業率の関係性などが興味深いものでした。
また、マスコミに対する不信感の原因を知ることができ、学歴の著者の解釈が面白いと感じました。
そして、集団自衛権と防衛に関することや年金の財源問題などからみた老後についての考察は参考になりました。
また、著者自身の仕事術やエビデンスやファクトに基づいた著者の本質を捉えたものの見方の作法も書かれており、本書での回答の根拠の裏側も知ることができ、より納得ができました。
マスコミなどのメディアから伝わっていることと本書で書かれていることの相違が多くあると感じ、本書を読んで経済政策において失業率についての考えが変わりました。
物事の本質を捉えるために自分で考えることが大事だと改めて気付かされた一冊でした。
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本当に、新聞に載らない、腑に落ちない疑問が、沢山書かれていて、一刀のもとで両断されていることが面白い。
少子化と経済関係で、経済の低成長は少子化が、原因か?の答えも、それを証明するデータは一切なし!で、切り捨てている。
築地のベンゼン問題 東京都の土地の下には有害物質だらけの事実。
森友学園の廃棄処分費の金額が大きすぎてビックリしたけど、、、何処にでも、有害物質の上で、生活しているという事に、気づかされた。
インフレ目標2%の達成は、失業率低下のためにあると、、、淡々と述べている。
マスコミ、メディアの末路も、落ちるところまで落ちて行くのみ!マスコミの未来は真っ暗!
本で、こんなことを解答に載せて良いのか!と、思うような痛烈な言葉を言い放っていて、面白かったが、日本の行く末が、案じられる。
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言っていることにはほとんど賛成なんだけど、なんだかほんとにうさんくさいなあ、著者。
あと自分は批判から逃げない、みたいなかっこいいこと言っているけど、どうもそんなことはなかった記憶があるのだが。