死によって近くなり得る関係もある
2020/12/30 18:30
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投稿者:優乃 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私も大切な存在を亡くした経験がありますが、そうだよね、と思える本でした。
死んだから終わりではない、死によって分かる想いも必ずある。
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大好きなドラマ『富士ファミリー』では既に幽霊だったナスミの生前が描かれてる…でもう涙。
ナスミ視点の第一話から涙でした。この本もしみじみ、良かったです。
小国一家や周囲の人たちの視点のお話も良かったけれど、愛子と光の話が特にぐっと来ました。
ドラマでははじめから馬鹿みたいに笑える人だと思ってた愛子、「ナスミさんになりたい」ってほどにナスミと関係が深かったとは。
第一話はまるっと、死にゆく人の心はこうかも、みたいな感覚でした。「わからないなりに、こんな感じかなと想像する」のですが、こんなに静かなのか。闘病が長いと、もう世界から降りているという感覚になるのかもしれない。
「いのちがやどる、とは、図書館で本を借りるようなもの」という光の哲学も良かった。
木皿泉さんの作る世界は、人物の濃さや、エピソードや会話の面白さに笑っていると、不意に哲学的な重さを投げ込まれるのでドキリとします。
設定や境遇はハードでも、すべての人たちがしゅくふくされていることに気付くので充足して観終わります。
あ〜『富士ファミリー』また観たくなりました、ナスミの幽霊に怯えまくる笑子ばあちゃんが恋しい。でも、ナスミが来るって言ってた日に一日中レジに座ってるシーン、寂しくて好きだった。おじいちゃんおばあちゃんが真剣な顔して遠くを見つめて何かを待ってるの、ほんとこう。はいりさんの笑子ばあちゃん、可愛くないのが可愛かったなぁ。
小国家のキャスティングがバチッとハマっていたのも好きでした。ナスミの小泉今日子さんと、愛子の仲里依紗さんも良かった。
片桐はいりさんのひとりはいり対談な解説も面白かったです。確かに、「昨夜のカレー、明日のパン」も死者が真ん中にいて家族が繋がってる奇妙な暖かさがある。こちらは立場が日出男に近い人物に重きを置かれていました。演じてるの仲里依紗さんだな
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単行本も読んだのですが、なんとなーくしか覚えていなかったので、今回文庫化するということで改めて読んでみました。
癌で亡くなったナスミ。関係者たちがナスミについて色々昔の思い出を語っていきます。次々と浮かび上がるナスミの存在に衝撃の過去があったり、感動があったりと最初に思い描いていたナスミとは違う像が浮かび上がるので、意外でした。
関係者たちが各話ごとに異なる人が主人公となっていきます。一つ一つのエピソードは短く、簡潔なのですが、読んだ満足感がありました。死だけでなく、不倫や誘拐未遂など比較的暗めなテーマが登場するのですが、気持ちとしては明るく捉えられました。一旦受け止めてからのその先の行動が、気持ちを明るくさせてくれるので、全体として、読了感が良かったです。
最後には、片桐はいりさんの解説があるのですが、印象深かった文章が。
「死後の世界って、あの世ってことじゃなくて、この世こそたくさんの人の死後の世界なんだ」
たしかに、そう考えると、より身近で明るい感じがしました。ナスミの死後の世界は、存在はないけれども、今までと変わらず、みんなの記憶には残っている。
「あの世」として考えるのではなく、「この世界」として捉えるのも悪くないなと考えてしまいました。
ページ数が多くの小説よりも少なめなので、いろんな方に読んでいただきたいなと思いました。
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主人公のナスミは43歳という若さで亡くなってしまうが、この作品は死を悲観的に描いていないところが興味深かった。
また主人公自身の、自分の余命が長くないと悟った時の人生の引き際が清々しいとさへ思った。
実際には色んな葛藤があったのだろうけどナスミにはそれを感じさせない強いパワーを感じた。
私自身はどうだろう、自分の命が短いと知った時ナスミのような強い心で家族や友人に別れを告げ、去ることができるだろうか。
ああ、悪くない人生だった!と言えるよう今を大事に、人に優しく生きていきたい。
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けっこういい人生を送るには
どうしたものかと
自分の人生を振り返ってみると
なんだかんだ言っても
案外いい人生を
送ってたりする
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若くして亡くなったナスミ、彼女の周りの人たちが彼女にまつわるエピソードを語りながら、70年弱の時間が進む。人と人がつながり、思い合い、影響しあい、多くの人の人生がそこにあることは当然なのだけれど、それを小説にしていただいた。そっか、「ぽちゃんと池の波紋が広がるみたいに」死んでからも広がっていくんだね。
特にナスミの夫の日出男が、ナスミの死後も家族として暮らし、日出男が再婚した愛子、その子どもの光が皆にしゅくふくされているのがありがたい。
ナスミと日出男の出会いはドラマである富士ファミリーで描かれているのかな?
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読み始めてすぐ「おや、この人達知ってるぞ」と思い、文庫本を裏返すと『富士ファミリー』と書いてあるではないですか!
ナスミさんにまた会えるとは。
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ナスミの言葉に救われたり、助けられたり、元気をもらったり希望を持てたり…等…等…
過去の人も現在の人も未来の人も色々な形で関わった人たちがいる。
そこまでの言葉をかけたことがあっただろうか?
そこまでの言葉を受け取ったことがあっただろうか?
慕われた微かな記憶、そうかと腑に落ちた覚え、ぼんやりとした心からのやり取りをした思い出。語れるほどの物はないけれど、そんな場面もいくつかはあったと感じてほっとしている自分がいる。
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不思議な魅了がある作品でした。
章毎で主人公が異なるが、共通の主人公と繋がっていて、かつ感動的な内容。
他の作品も読みたくなりました。
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この世から人がいなくなる。『死』とはそういうものだと思っていたが、この本を読んで少し考えが変わった。亡くなった方と共に生きていくものなのだ。もちろん、亡くなるということは実体に会えなくなるし話せなくなるから悲しいことではあるが。大切な人が亡くなった時、自分はこのように思えるだろうか。今を大切にしよう。
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大好きな木皿さんの小説はやっぱり大好きな一冊になった。
なすみの
「そうか、自分はもうこの世界から降りてしまったのだと気づいたのだった」
っていう台詞が死ぬほど切なくてぐっときた。この世界から降りるということ。まだ降りずに生きること。
「自分にしかわからないものが、この世にはある」
「さびしいけれど、宝物だな、とも思った」
この世の寂しい悲しい切ない、生きている中での色んなもの全部ひっくるめて優しくて美しいと、輝かせてくれるのが木皿節だなと思う。さびしくて優しくて悲しくて安心する一冊。
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「やどる」
今この身体に命がやどりその人生を終えた時また次の身体にやどる。生まれ変わりとからそう言う大袈裟なモノでは無くて。
今は悲しみの真ん中でもそう思えば未来が楽しみになります。
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ある日、43歳のナスミが癌で死ぬ。
その死に接して、ナスミと共に生きてきた家族や友人、人生の一場面ですれ違うように関わっただけの人たち、それぞれの胸にそれぞれの思いが沸き起こる。
それは個別のものであるようで個別のものではなく、ナスミという存在によってつながりあっているもの。
ゆるやかに、そして強く。
死が周囲にもたらすものは悲しみだけでない、ということ。
悲しみにもいろいろな色合いがある、ということ。
涙は思いがけないタイミングで流れるのだ、ということ。
作者はよくわかっているなあと感じる。
ナスミの人となりをそれぞれの思い出の中で浮かび上がらせる、という構成も秀逸。
読みやすいのに、深い、そんな小説でした。
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富士山の間近でマーケットストア「富士ファミリー」を営む、小国家三姉妹の次女・ナスミ。一度は家出をし東京へ、のちに結婚し帰ってきた彼女は、病気のため43歳で息をひきとるが、その言葉と存在は、家族や友人、そして彼女を知らない次世代の子どもたちにまで広がっていく。宿り、去って、やがてまたやって来る、命のまばゆいきらめきを描いた感動と祝福の物語。
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43際の若さで亡くなった女性が残した思い出や言葉が、残された人達にどう影響するかを描いた話。この作者の作品は2作目で、重いテーマをほんわかと描く作風なのが分かった。個人的には毒気が無さすぎるというか、心に引っ掛かる部分がなく、心に残りにくいかもしれないと思った。