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市井の人々への徹底した聞き取り調査を元に社会構造などを明らかにする社会学者である著者の小説は数冊目であるが、本作はジャズベーシストでもあった著者の過去の経験が盛り込まれており、音楽に関するシーンも含めて楽しめた一冊であった。
名作『断片的なものの社会学』で示されたように、日常生活のある何気ないモチーフから極めていまイマジナティブな世界を描く出すのが巧い。本作ではタイトルにもある”リリアン”はまさにそうしたモチーフの1つであり、”リリアン”と共に綴られる主人公のジャズベーシストが語る幼少期の痛みに満ちた回想は、こちらの胸をも抉るような痛みを味わわせてくれる。
また、ジャズセッションのシーンは、音楽を演奏しているときにプレーヤーが何を考えている/何を考えていないか、ということを教えてくれる点で、楽器演奏者には面白いとも思う。ぜひ岸さんには、研究の合間で良いので、今後もコンスタントにこうした小説を書き続けてほしい。
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岸さんの文章、綺麗すぎて、尊すぎて、毎回、感想文を書くのに気が引けちゃうんだよなあ。わたしの拙い日本語で感想を述べていいような代物ではないとだけ書き残しておこう。すごく良かったです。というかいつもとても良い以外の感想が思い浮かばないです。
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気持ちいいコード進行のような、
流れるような会話が心地よすぎる
大阪弁の会話ってこんなに優しく聞こえるの?
切ないのに二人は悲しそうじゃない
読んでいる私も悲しくはない
絶対また読む!
コルトレーン聴きながら♪
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心の隅に追いやっていた過去や、期待を抱かなくなった未来を無理せず自然にこぼすことのできる相手がいるのはいい。日々を穏やかに支え合って過ごせる関係。
会話の中に生まれる波長、湿度が綺麗に編み込まれていて、リリアンのように長くか細く美しく連なっている。
鉤括弧のない会話が独特で心地よさあり。
閉園後の暗闇でのデートがとても素敵だった。
二人の脳が一瞬繋がって溶け合う感覚。
情景、手の動きで心に訴えてかけてくる文章。
ドラマチックな出来事はない。心が穏やかになる小説。人生に疲れを感じ始めた人や、関西が恋しい人は好きかもしれない。
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FMCOCOROで「すごくいい小説」と大絶賛されていたので読んでみた。
うむむ…
この小説…私、あんまり合わなかったな~
好きな人は好きなのかもだけど…
大阪でジャズベーシスト(ウッドベースの音楽教室の講師もしている)の男とふとしたことで出会った美沙。
ドラマチックな出来事が起こるのではなく、日常の会話やできごとで綴る小説。ゆるゆるとした二人の会話が大阪弁で綴られていくのもなんとなく泥臭くて「どこかで本当にありそうな」大人の物語。
小説中にソニー・ロリンズの「Isn't She Lovely」の曲が出てくるんだけど、二人の会話を聞いてたらこの曲が聞きたくなり聞いてみた
浮遊してる感?おかえり?ただいま?
曲を聞くと「そういう感じなのか…」と思うかも、思わないかも…
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“人間いらんやん”
“優しいやつは、役に立たんのや”
生々しいリアルな会話、人肌の温もり、不器用なやり取り。
優しい。
なんだろうか。こういう優しさを何と言うのだろうか。
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大阪の街の華やかさの裏側にあるような懐かしさと、消えゆく古き良き時代をひっそり見送るような小説。リアルな大阪弁のやりとり、ほんのり漂う悲しみとそこに混じる綺麗ななにか。
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会話調で、急に話が飛んだり、終わったりの不思議な文体。大阪やジャズや夜の商売のやるせなさ感はよく出ている。
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かぎ括弧のない会話は読んでいるうちに、境界線が溶けるような感覚に。
最近、縁ができた我孫子周辺はもとより、万博や山田の描写に胸熱。散歩したくなる。
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年末の長期休みが始まって2〜3日後の、とうに昼夜逆転してしまった夜。
眠れなくて同居人とハーゲンダッツを買いにコンビニに行く時に似ている。
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くたびれたジャズベーシストと、年増のスナックホステスの恋愛譚。
本当になんてことない話なのだけれど、妙に胸に迫るのは年が近いからか。年増のホステスと僕ほぼ同い年なんですね。
人生に対する諦めや、まだ先が有るのではないかという希望と、愛情なのか友愛なのか分からない好意。何も妨げるものは無いのに、どうしてか踏み切れない。
音楽で食べて行けているけれど、先細りは必至だし技術的にもこれ以上は見込めないというくすぶりと、誰かの心を背負う事の重さにおびえる気持ちなのでしょうか。
最後まで読んでも心の動きの深い所は書いていないので、読んで推し量るしかありません。色々考えてしまう本だし、淡く記憶に残って消えてしまう本でもあります。
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なんだか妙にしみる一冊。
音楽とお酒と男と女、並べてしまえばありふれた材料なのにこの絶妙な湿度と色気はなんなんだろう。
ここに惹かれる!と明確にできないけれど、たしかに心惹かれる。
そして繰り返し読みたくなる。
特に、寒くて孤独を持て余してしまう夜に。
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「ひとりで家を出て飲みにいくとき、誰もいない浜辺でシュノーケルをつけてゆっくりと海に入っていくときの感じに似ているといつも思う」この冒頭に惹かれた。一人暮らしもほとんどしたことないし海に潜ったこともないけど、自虐的孤独感に酔う自分を楽しむみたいなオナニーに似た恍惚感なんやろうか。彼女とのゆるい大阪弁のリフレインされる会話。ジャズもよく知らないが、それも音楽的なように感じる。
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コード進行とか、表題のリリアン(編み物)とか、あまり馴染みのないものが主題になってるので、やや入り込めなかったところはあるが、著者のこれまでの小説と同じく、色んなものから切り離されて大阪の街を漂うように生きる男女の姿を淡々と描く。今作はより一層、浮遊感(というか、登場人物がルーツと切り離されている感じ)が強まっているような気がした。
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静謐な夜中の会話劇。リリアンに纏わるエビソードは、誰もが持っているであろう子供時代の後悔したくなるエピソードだと思うのだが、多分に漏れず自分にも想起させる出来事があり、胸がえぐられる。
大阪の土地勘があればもっと楽しめたと思う。