紙の本
夫婦の心を描く時代小説
2009/02/10 14:58
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YO-SHI - この投稿者のレビュー一覧を見る
時代小説と聞いてまず思い浮かべるのは、お奉行やお殿様、剣豪といった武士が活躍するものだろう。もちろん、女性を主人公として書かれたものもあるが、そこで進行している出来事は、国盗りであったりお家騒動であったりと、やっぱり武士の出来事だ。
そんな中で、本書は奉行所の役人の家に嫁いだ主人公、のぶの揺れる心をひたすらに丁寧に描く。奉行所の役人の家なので、誘拐や殺人などの事件は起きるには起きるのだが、妻であるのぶにはそうそう直接は絡んでこない。のぶの心を占める、いや本書のテーマは、のぶと夫の正一郎との関係にあるからだ。
心に溝ができてしまった夫婦の話は、現代小説では珍しくもないが、時代が江戸時代となるとどうだろう。テレビの時代劇で、時々「人情もの」の回があって、家族や夫婦の再生を描くことはあるが、あくまで脇役であって、ここまで丁寧には描かれないだろう。
別の見方をすると、夫婦の話を描くのに、時代を江戸時代にする必要はなかろう、とも言えるのだが、そういう意見は本書を読めば出てこなくなると思う。
今より格段に女性の立場が脆かったあの時代にこの物語、だから成り立つ味わいがある。のぶの舅姑が実に味わい深い人たちなのだが、そのキャラクターもあの時代だからさらに引き立っている。現代とは違う時間の流れも感じられるし、実にしっくりと物語と時代がかみ合っているのだ。
かみ合っているといえばタイトルの「卵のふわふわ」も、物語とうまくかみ合っている。本書の各章は食べ物の名前になっていて、後半になるとその食べ物が物語やのぶの心を動かすようになる。「卵のふわふわ」もある章の題で料理の名前だ。どんな料理かは読んでもらえば分かる。私はこの「卵のふわふわ」はもちろんだが、「心太(ところてん)」が食べたくなった。新しい形の時代小説に出会いたい方にはオススメだ。
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人生賛歌を感じる
2022/07/16 15:03
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投稿者:まお - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めたときは、夫に物凄く腹が立ち、いらいらとしましたが、最終的には丸く収まったので(時代物だと考えると致し方ないものかとも思い)、気持ちよく読了。
読むと、人生って辛いことや大変なこともあるけど、いいものですよと言っているように感じました。励まされる思いがしますよ。
こんな素敵な物語を紡ぐ宇江佐さんがもう既に亡くなってしまっていて、新たな物語を読めないのがつくづく残念です…。
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文章のところどころに出てくる食べ物は素朴で質素だけどこころをあったかくさせるやさしいかんじ。おいしそうだし。のぶもそんなかんじのかわいいお嫁さん。
でも一番はやっぱり食いしん坊な舅の忠右衛門!!すてきなじいさんだ!
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食べ物に好き嫌いの多い主人公は夫との生活が冷え切っている、
食道楽でやさしい舅が、黄身返し卵、淡雪豆腐、卵のふわふわ、ちょろぎ 等いかにもおいしそうな食べ物のエピソードにからめてなにかと助け舟を出してくれる。
本の題名に惹かれて借りる事はあまりないのですが、これはいかにもおいしそうで、実際に「卵のふわふわ」を作って食べてみたくなりました。
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食べ物って奥が深い。人の心も奥深い。だから、味わい深い食べ物は人の心に染みるのだろう。想いすれ違うのぶと正一郎夫婦、いつでもほっこりあたたかい舅忠右衛門・姑ふでの姿に胸がキュンっとしました。表紙のイラストも、後から見るとかわいらしく作品の雰囲気に合っている☆07年9/16読了。
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この物語の主人公は同心の娘として八丁堀に育ち
ちょっと憧れてた同心の元に嫁いだ『のぶ』
でも結婚して7年、夫婦としての心の情を交わすことなく
辛い日々を送る。
心の支えは食道楽の優しい舅と
口は悪いけれど温かい姑。
美味しい食べ物はそんな人たちを優しく包む。
それぞれの章に↑の食べ物が題名についていて
またそれも美味しそう。
のぶと夫・正一郎のすれ違いがとても切ない。
またそんな時の舅の言葉が(゚ーÅ) ホロリとくる。
最後は鼻の奥の方がきゅーんとなって涙。
久々に物語の初めから心惹かれ、
読み終わるのがもったいないと思える作品でした。
何回も読んじゃうんだろうなぁw
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装丁買いの逆で、表紙が好きじゃなくて気になりながら買わずにいたのですが、、、「八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし」というサブタイトルが付いております。自由で型破りで、さまざまな逸話がたくさん残っている役人、椙田忠右衛門。息子の正一郎も役人です。この家に嫁に入った<のぶ>が、主人公です。
自分で望んで椙田家へ輿入れしたのぶですが、舅と姑とはうまくいっているのに夫の正一郎との仲がぎくしゃくとして、思いつめて家を出てしまいます。当時は離婚も夫側から離縁状を出してもらわないと成立しないというし、女が意見など言おうものならそれだけでなじられる時代のお話で、実家に戻りたいと打ち明けても、実母も実兄も同情しつつも「お前の我儘だ」と、距離を置かれてしまいます。
そういうむつかしい状況と、江戸の町に起こる事件と、姑の生い立ち、舅の喰い道楽などなどが、絡まり合いながらほぐれながら、上手に料理されていく、という、とてもよく出来たお話でした。
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久々の宇江佐さん。とんとん拍子に何事もすっきり収まる畠中さんに比べてこの人は「世の中そんなに上手く運ばないよ」ってかんじw
でもその分切なさにリアリティがあって、やっぱうまいなーと。
一気読みでした。お舅さんとか、最高ですね。
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●2008年5月23日読了
夫との心のすれ違いに悩む主人公のぶ。
でもそんな彼女には優しい舅と姑がいました。
―――てか舅の忠右衛門がすごく好きっっ!!!かわいいよ!
「わし、いやだよ。のぶちゃんじゃなきゃ、いやだよ」とか
「のぶちゃん、何かうまいもん作っておくれよ」とか、なんて子供みたいな口調なんだ!!
なんだかんだ言って、夫いいヤツだし。
心温まる作品でしたww
でも……でもラストがぁぁぁぁ!!! orz
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同心の正一郎の妻・のぶは、夫との心の擦れ違いに悩んでいた。そんなのぶを助けてくれる舅・忠右衛門は大変な食道楽。偏食ののぶに珍しかったり美味しかったりする食べ物で心を和ませてくれるが……食べ物を絡め、ぎこちない夫婦の軌道を描いた物語。
* * *
私を時代小説に引き込んだ一冊。時代小説に興味のない人でも是非読んでみて欲しい。女性受けがとてもいい本だと思います。
正一郎が酷いツンツンで、のぶもこれは堪らないだろう、と思うのですが、矢張りのぶも受け身過ぎたのかなと思いました。後半になってくると正一郎の気持ちもわかって、なんというか甘酸っぱくもどかしい気持ちになります。時代小説というより恋愛小説ですね。
登場する食べ物も美味しそうで、私にしては珍しく、何度も繰り返し読んでしまう本です。
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食べ物がらみのお話に、好き嫌いの多い主人公。
最初はどうかと思ったが、徐々にこの世界にひきこまれていく。
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食い物をサブテーマにしつつ、なんだかすれ違いの続く夫婦を描いた人情作品。
とにかく姑の忠右衛門さんがいい味を出していて、嫁いできたのぶを大事にしてくれるその暖かさにほっとさせられます。
また、つれない旦那(色々訳ありではあるんですが)の正一郎にもやもやされつつも懸命になんとか尽くそうとするのぶがいじらしい。
忠右衛門さんは私の脳内では西田敏行さんに変換されていました(笑)
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時代物
夫婦のすれ違いと舅さんのキャラクターが注目
話の終わりが、ホッとするやら寂しいやら
読み終えてから文庫本の表紙を見るのが良い
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面白い。
歴史物もおいしければまた乙。
小さい頃から食い意地が張っているため、本書もタイトルだけで購入。
最近は軽いばかりの時代物をちらほら見かけるが、存外面白い人もいるのだな、と感心。
宇江佐さんという方、これを読むまで全く知らなかったけれど他の作品も読んでみたいと思った次第です。
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宇江佐真理の時代劇は、やさしいと、読むたびに思う。
主人公が武士であろうと町人であろうと、
彼らの気持ちの機微が暖かく描かれている。
この本は、タイトルに惹かれて買った。
頑だった心の夫婦が、回りの人たちの暖かい心根に支えられながら、
「ふわふわ」とした暖かく柔らかいな目で
お互いを認識し合えるまでを描いている。
人のつながりが心地いい人情話だ。
だから、心がしゃちほこばっている時に読むと、
自分の気持ちがほぐれていくのがわかる気がする。
出てくる食べ物も素敵。
「卵のふわふわ」と「ちょろぎ」が食べたくなった。
お舅さんの忠右衛門とふでの夫婦がいい。
あんなになれるんだったら、結婚もいいものかもね。