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生物には自然淘汰による適応が働いているにもかかわらず、なぜか不合理に進化しているように見える場合がある。これを、進化による適応が「制約」によりうまく働かなかった結果である、と断ずるのはたやすいかもしれないが、著者はそうではない、という。「一見すると不合理」に見える生物も、実は進化による適応として説明できるのではないか、そういう立場から研究を進めれば明らかになる適応もあるのではないか、というのが著者の立場である。その観点から、様々な具体例が説明される。例えば、捕まえにくく美味しくもないマツオオアブラムシに特化したクリサキテントウは、実はマツオオアブラムシ以外のアブラムシを食べても成育できる。その観点からクリサキテントウの生態を説明することはできないのだが、著者は、クリサキテントウがナミテントウに混じると、異種を見分けることができず交尾してしまい繁殖できなくなってしまうという仮説を説明する。それに至るまでの過程は大変にスリリングである。
その他、オスという子孫を増やすのに役に立たない個体を持たなければならない有性生殖に対して無性生殖は2倍の効率で子孫を増やせるが、それにもかかわらず有性生殖が優勢なのはなぜか、擬態が完全なものにならないのはなぜか、と興味深い進化の事例が、具体的に説明されている。非常に面白い科学読み物だった。
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本書を読んで、ぼくも「適応主義者」だったんだなと気づいた。生き物の形質や行動は環境にぴったり適応するために進化したもので、そうは見えないのは単にまだ研究が進んでいないから、とする見方だ。実際にはそうは見えない例がいくつも見つかっている。
本書では捕まえにくく、うまくもない種類のアブラムシを選んで食べるクリサキテントウの例が出てくる。普通の捕まえやすい、おいしいアブラムシを食べても問題なく成長できるのにどうしてだ? という疑問を著者は実験を通して解明していく。その過程はスリリングで、まるでよくできたミステリーを読んでいるみたい。その結論もびっくりで、これは本書にて。
それにしても、これは不適応に見えて、一回りして大適応と言えるんじゃないだろうか? 進化ってすごいなあ。
生物好き、自然好きにはこたえられない一冊。
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自分は分子生物学の研究してるので、ちょっと専門外の進化とか生態とかに興味を持って手に取った一冊。
「一見不合理な形質や行動をする生物も、別の見方をすればとても合理的に進化している」という仮定のもと、色々な昆虫の進化について紹介されていて、非常に面白かった。
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全ての章が面白いが、とりわけ生殖の章が面白い。
なぜ、性があるのか。オスがいるから仕方なく維持される。この目的よりも結果的にそうなった。いかにも生物が選択しそうな生き方です。しかし、オスは不便な存在です。