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投稿者:マー君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
青柳さんの著書は他にも読んだことがあり、その時はピアノの技術的な話が結構ありよくわからなかったところも多かったのですが、今回はコンクールの舞台裏の人間臭い話や、演奏の評価など興味津々で一気読み。
コンクールで演奏されたショパン の曲を知ることもでき、ライブラリー作成の参考になります。
紙の本
臨場感あふれる現場レポートは、さすが
2017/05/03 15:26
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投稿者:森郊外 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ショパンコンクール、そもそもショパンの演奏とはどうあるべきか? ショパンは自作をどのように弾いていたのか? 戦前のパハマンに代表されるロマンティックな解釈と戦後の新即物主義の波にさらされ、時代とともに演奏スタイルは変わり、聴衆の趣味、もっと言ってしまえば審査員の嗜好も変遷してきた。しかしそうした時代の趨勢とは一線を画した新たな才能をどのように受容し、あるいは排除して今日に至ったのか。そうした極めて難しくデリケートな問題を正面から論じる青柳氏の誠実さと筆力にはただ賛嘆の意を示すばかりだ。
予選からグランドファイナルに至るコンテストのレポートも、そうした深い問題意識のうえで語られ、一般の演奏評とは一線を画するものだった。そして演奏家として、コンテスタントひとりひとりの才能をいつくしむ筆者の思いが随所に現れ、読後もさわやかな思いに満たされた。
読み進めるうちに、ケイト・リウの演奏がどうしても聞きたくなった。
この本、一つだけ不満はコンテスタントのアルファベット表示が記されていないことでした。
特にYouTubeで演奏家を検索するときに、不便を感じました。
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ポーランドのワルシャワで五年に一度開催されるショパン・コンクール。一九二七年の創設以来、紆余曲折を経ながらも多くのスターを生み出してきた。ピアニストをめざす若者の憧れの舞台であり、その結果は人生を大きく左右する。本書では、その歴史を俯瞰しつつ、二〇一五年大会の模様を現地からレポート。客観的な審査基準がない芸術をどう評価するか、日本人優勝者は現れるのか。コンクールを通して音楽界の未来を占う。
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2015年に開催された第17回ショパン・コンクールの模様をレポートした作品。コンクールは書類とDVDによる事前審査から始まり、予備予選、一次予選、二次予選、三次予選を経てグランドファイナルへと進む。
ちなみに予備予選出場158名のうち、グランドファイナルに残るのは10名である。著者の青柳氏は予備予選からワルシャワ入りし、注目する参加者一人一人について、臨場感あふれる詳細なレポートを行っている、他の国際コンクール同様に今大会もアジア勢の活躍が目立つ印象を受けた。
青柳氏が指摘するコンクールの難しさの中に、審査の基準が挙げられている。「楽譜に忠実に」「ショパンらしい演奏」「演奏者の個性」という、一見すると矛盾するような複数の課題を、出場者はバランスよく成立させなければならない。
唯一絶対的と思える楽譜に忠実というポイントも、実はショパン本人が書いた譜面は版によって違うらしく、審査の基準となる譜面が複数存在しているのだ。
今大会の優勝者は楽譜に忠実派で、王道を行ったチョ・ソンジンだった、しかし個性的な演奏スタイルの、リシャール・アムランが2位に入賞したのも興味深かった。やはり数ある基準の中でも楽譜に忠実である事が、優勝への第一条件であるのだろう。
もしショパン本人がショパン・コンクールに出場したら絶対に一次予選で落ちる、という青柳氏のコメントが非常に印象的だった。
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青柳いづみこによる第17回(2015年)ショパンコンクール観戦記が主要な部分を占める.その中でショパンの残した伝統とは何かということを考える.「ロマンティック派」と「楽譜に忠実派」とのどちらがショパンの伝統と言えるのか,またどうしてショパン像が歪められて行ったのかなどを考察している.実際はそういう部分よりコンクール観戦記の方がはるかに面白い.ピアノのプロかつ文筆のプロにしか書けないような,演奏描写の表現が憎らしいほどうまい.
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うあぁ……音楽コンクールってうさんくさいもんだとは知ってたけど、やっぱりショパンコンクールもうさんくさいんだな……やっぱ音楽業界はジャンル問わず、魑魅魍魎の住処なんだわ。
とはいえ、ショパンの聴き方、ハイレベルコンクールの聴き方としては、目から少々パラパラと落ちたものが。
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5年に一度の権威あるショパン・コンクールの裏幕。2015年の予選、本選から登場したピアニストたちを詳細に語る。同じショパンの曲がこのように演奏家により表現の違いを語ってくれるのは実に痛快なひと時だった。2010年の予備審査でDVD撮影により一旦落選したアヴデーエワが審査員のクレームで復活者に加えられ、本選で優勝!という事件までがあったとは物凄い話。東アジア勢(日中韓3国)が予備予選合格者158名の約半数を占めたというのは、やはり経済の勢いも背景にあるのだろう。ポーランドのピアニストが有利に働くというのも興味深いところ。審査基準があいまいで、混乱を極める裏幕が実に興味深い。100点満点で、75点以上の場合に次のラウンドへ進ませたいかどうかをYes/Noで回答し、そのYesの数、最終は10名のファイナリストへの順位点合計で決まるなどの考えが一昔前のフィギュアスケートを思い出させる。当たり前のことながら、優勝者チョ・ソンジンだけではなく、チェ・チャン(2010年)、アムラン、ケイト・リウ、エリック・ルーなど優勝者ではない人たちの音楽性の高さもよく分り、優勝者だけではない層の厚さを改めて感じる。
個性的なピアニストのページで女装したMrジー・チャオ・ユリアン・ジアが登場した際の会衆が思わずプログラムを確認する場面の逸話は思わず笑える。
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2015年にBS1で放映された「もうひつとつのショパンコンクール・ピアノ調律師たちの闘い」という番組を見ました。ピアニストが競うコンクールですが、その舞台裏ではエントリーした演奏家がどのメーカーのピアノを選択するのかというピアノメーカーの闘いが繰り広げられており、それを現地でサポートする調律師達の仕事ぶりを紹介する秀逸のドキュメンタリーでした。そんな感じの内容を期待したんですが、本書は出場した各演奏家のパフォーマンスへのコメント、コンクールが求める理想の音楽像、コンクールが抱える問題点など音楽そのものに焦点を合わせた内容でした。テレビ番組なら出場者の演奏の一部でも聴きくことができますが、何せその演奏自体を全く聴いてない状態でその演奏のコメントを読んでも想像力が及ばずに理解しにくい部分が多かったです。ただ、著者の繰り広げる音楽を表現する文章、文言の豊かさには驚かされました。ピアノを演奏する方ならもっと共感できだんじゃないかなと思います。
コンクールの抱える問題点や、日本のピアノ演奏家がこれから取り組むべき方向性などの部分はよくわかりました。
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YouTubeで ショパンコンクールの予選から公開してるので 照らし合わせて愉しむのも一興。
とにかく この本は音楽初心者には難しいけどそれ以上に面白く刺激的だった。
論文ではない
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ショパンコンクールについて、2015年のDVD審査から本選までを中心に、ピアニストである著者が主観を交えてレポート。審査員やコンテスタントに多数インタビューしており、様々な考え方が見えてきて面白い。
森のピアノや蜜蜂と遠雷のようなファンタジーの有無ではなく、譜面に忠実か自由な発想も認めるか、というふたつの潮流のぶつかりがあることが分かった。
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来年は5年に1回のショパン・コンクールの年。
18回目になるらしい。
演奏家でもあり、ドビュッシーの研究者でもある筆者が、コンクール「公式ジャーナリスト」として記録した前回のコンクールの記録である。
ショパンらしさとは何かを巡って、揺れ続ける審査基準。
楽譜に忠実派と、ロマンティックな弾き方か。
ルバートは左手は一定のリズムを刻み続けるのか、それとも「右と左を交互に」ずらすのか。
さまざまな対立軸があるようだ。
応募者の増加で、審査方法もルールも変更の連続。
審査員やコンテスタントをはじめ、多くの関係者のインタビューなど、多彩な情報源からそういった矛盾があぶりだされていく。
本来言語とは異質の音楽を言葉にするのは大変だ。
予選、本選の鑑賞記録は、演奏家ならではの細やかさ。
プロはこういうところを聞いているんだ~、と興味深く読んだ。
審査基準については、青柳さんは演奏家審査員寄りの立場をとるのかと思いきや、音楽学者寄りの立場だったのが意外。
ヤマハやスタインウェイ、カワイ(シゲル・カワイという最高級モデルがあるそうな)、ファツィオリの特性の違いなども、面白かった。
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ショパン国際ピアノコンクール2021の予備予選の配信を視聴しながら、どんな基準でコンテスタントが選ばれていくのか知りたくて読んだ。
この本は、主に前回の2015年のコンクールについて書かれたものだが、コンクールの歴史的背景から、ショパンの曲についての解釈、様々なピアニストの特性等、多角的な方面から描かれていて面白い。登場したピアニストの映像をYouTubeで観ながら、理解を深めることもできた。
また、この本で挙げられたコンテスタントが再度2021年にも登場し、予選を通過していたりして、秋の本選もますます楽しめそう。
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個性的な日本人コンテスタントが多数本選に残った今年のショパンコンクールは、youtubeでのリアルタイム配信もあり近年にない盛り上がりを見せた。そのブームに乗ってショパンコンクールについてちょっと勉強してみようと図書館で借りて読了。
青柳いづみこさんの文章はいつもながら大変読みやすく、ピアニストの視点でありながら一般人にもわかるように噛み砕いて説明することも忘れない心配りが行き届いていて臨場感あるリポートとなっていた。そう、本書はショパンコンクールの概要や歴史についてももちろん触れられているが、基本的には2015年に開かれた第17回大会の記録である。現地で演奏を聴き、コンテスタントや審査員らとも直接話をしたのでなければ得られない臨場感が伝わってくる。
しかし出版からすでに5年経っていることもあり、本書の価値は、ショパンコンクールの成り立ちから現在までの経緯をわかりやすくまとめている点にこそある。ショパンコンクールは設立意図からして思想的・政治的な思惑も絡んでいた。その後も世界の動静と無関係でいられるわけはなく、ポーランドが「東ヨーロッパ」だった間はソ連の影響を受け続け、音楽業界が巨大ビジネス化する弊害もあり、現在は押し寄せるアジア勢の大波で予備選抜の方法も手探りが続いている。浮世離れしているかのようなクラッシック音楽最高峰の舞台は、実は世相を映す鏡だということをあらためて概観することができた。
そしてショパンコンクールで常に問題になるのは、その演奏はショパンらしいのかどうかだというのも興味深かった。もちろん、ショパンの名を冠しているから当たり前といえば当たり前なのだが、そもそも、こんな有名なコンクールで一人の作曲家の曲だけを演奏するコンクールというのは他には寡聞にして知らない。そういう意味ではかなり変わったコンクールである。審査員も聴衆もずーっとショパンだけを聴き続けるのだ。本書ではその「ショパンらしさ」についてかなり専門的な説明もなされていて、なるほどなあと思った。
しかしその方向を突き詰めていくと、音楽はタコツボ化してしまうのではないだろうか。専門的な解釈を突き詰めた演奏者が、同じくわかる審査員に向けて演奏する世界。それはコンサートホールで多くの客に向けて演奏するよりも小さなサロンで親しい人に弾くことを愛したショパンに似ているようでいて、実は最も遠いような気がする。解釈とか説明とか抜きで、聴いている人にあわせて弾いてくれる、そんな演奏が本質的なショパンなのではとサービス精神に満ちた反田さんの演奏を聴きながら思ったのだった。
そしてまさにコンクールが終わり本書を読んでいる最中に、2000年の優勝者ユンディ・リの買春容疑のニュースが流れた。ショパンコンクール、あらゆる意味で世情と最も懇ろなコンクールであるの意を強くした一報であった。
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2021年末の大掃除で発掘した本です、この本は2021年の間に読む本の様ですね。読みかけになっていたために、評価は「★一つ」にしております。内容が不満足だったわけではありません。
2021年12月29日作成