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〈ミレニアム〉を目前に控えた二十世紀末のアメリカ。
物語は二人の男を中心に展開される。
ひとりは各方面に強い影響力を持ち、飛ぶ鳥を落とす勢いの売れっ子テレビ司会者であるバニオン。
もうひとりは’国民にUFOの存在を信じ込ませる’為に存在する政府の秘密機関〈MJ-12〉で宇宙人の仕業を装った自国民の誘拐・襲撃ミッションを担当し、うだつの上がらない生活に倦んでいるスクラブス。
華々しいバニオンの活躍をやっかんだスクラブスが〈MJ-12〉のチームを私的に、しかも二度も動員して彼を襲撃し、二度に渡り性的暴行を加えさせるというとんでもない事をやらかす。
完全に宇宙人の所業と信じ込んだバニオンは周囲に異星人侵略の脅威を訴える。が、やればやるほど妻・友人は去り、正気を疑われ、凋落の一途を辿る。
ところが徐々に宇宙人支持派層の人々がバニオンの周囲に集まり出し、やがては「UFO界のイエス」(p307)とも呼べるような強大な一大勢力を作り上げ、一度は彼を見限った人々に対しての強烈なカウンターを見舞うはずだったのだが…!
…と、話は二転三転。
ベースはコメディタッチでありながら政府の陰謀や企業の権力闘争、スクラブスを追う謎の組織、バニオンを中心に描かれる友人関係の崩壊と再生、謎の美女ロズ・ウェル(この名前も実に冗談臭いが)の正体は?…と要素もりもり。ちょっと取り留めが無さすぎるように感じた。
タイトルの『リトル・グリーンメン』はいわゆる宇宙人のステレオタイプなイメージを指した言葉であるが、つまるところ、欲や色や業に縛られた人間は本作にも沢山登場するけどもそれって結局普通の感覚の人であって、要するに我々自身が『リトル・グリーンメン』みたいなものだったのだ!という理解に私は落ち着いたのだが、どうなんだろう。
今思えば90年代ってまだまだ色々なことがあやふやでアバウトな感じがむしろ良かったんだよな…としみじみ。
今は正しさを顕す事こそが正しいとされる空気が強いけど、息苦しさもありますよね。
1刷
2021.10.16
フェイクニュースに躍らされる民衆、みたいな点は現代にも十分通じるな。
インフルエンサーの発言は盲目的に信用してしまう層っていうのは一定数いるもんだ。
2021.10.17 加筆