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江戸後期に活躍した学者、頼山陽。
この方はエピソードの多い方で、漢詩においては溢れんばかりの才能を持ちながら、放蕩三昧の末には脱藩を繰り返すといった破れかぶれな人生を歩んだことで有名です。
源平以降の歴史を体系的にまとめた「日本外史」は彼の業績としては最も有名。
川中島合戦における、「鞭声粛々夜河を渡る」(べんせいしゅくしゅく、よるかわをわたる)といった漢詩のエッセンスを活かした一文などは、ご存知の方も多いでしょう。
さてこの小説ですが、この頼山陽にひとめぼれしたがために、その後の人生を頼山陽への恋にささげた女の半生を描きます。
作品で描かれる主人公「細香」ですが、男性に対して献身的につくすような女性とは違い、自らの恋の情念を男性いストレートにぶつけるタイプ。
男女の理屈では割り切れない恋愛を、25年に及ぶ長い関係の流れから紡ぎ出していきます。
文化文政期、京の都に住む風流人達の美意識と、ねじれながらも恋愛の深みにはまっていく男女の不可思議さのコントラストが非常によかったです。
不倫がモチーフになっている小説が好きな方にはオススメです。