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何かいい本はないかなと探してる中で、目に入りタイトルにハート射抜かれました。
『大人は泣かないと思っていた』その一文から広がる想像といったら。想像できる景色や背景があるけれどどんな風に描かれているのだろうか、知りたい、と思い読みたくなる。名タイトルと思いました。
舞台は同じだけど、章ごとに視点となる話の主人公が入れ替わる形式。これ、好きです。
いろんな角度から、その本の世界を楽しむことができるから。
最近書かれた本なだけあり、単純な人間ドラマという感じでおさまっておらず、現代の鬱憤や爽快感が散りばめられていて新鮮味がありました。
フィクションもこんな空気感となる時代なのか!と。
性別の役割や家父長制に囚われない一面もありながら、そういったものの表面をなぞるだけではなく、一人ひとりの登場人物が、相手や周りの人を一人の人として尊重して接しようとしてることが文章から伝わるので丁寧で好感が持てました。
ジェンダーギャップって…日本はかなり遅れてて…フェミニズムが…と本質の理解に追いつく前に騒がれていることの側面だけで何故かバトって論破して言い負かそうとする不健全な言い争いは不毛に思える時もあります。
単語や説明を教科書的に覚えるより、人ひとりを尊重する心が浸透していけば理解により繋がりそうと思います。
この本を読むことでその空気感を感じ取り、今までに自分にない、もしくは言語化されていなかった考え方を知ることできっかけとなり理解が進むかもしれない。
上質なフィクションと思いました。
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あぁ、そうだな、そうだな。
って噛み締めながら読んだ。
ものすごく感情が揺さぶられるような部分がない
のが、とてもリアルで人生だと感じた。
当たり前のように大事にしてきたことに
ふと違和感が芽生えるようになったり、
何かのきっかけで知らなかった感情を知ったり、
でも、何か劇的に変わることなんてない。
人と人。
価値観が違っていて当たり前。
ちょっとだけ、ちょっとだけ、鼻の奥がツンとするお話。
とても良い本だけど、たくさん泣きたくて手に取った本だったから3。
大人も泣きたいさ。
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題名だけ見ると、ちょっとおセンチな感じの内容なのかと思ったのですが、全然違った。
登場人物みんな魅力的で、頑張っていて、物語の中で、みんなが少しずつ成長している。
そしてそれぞれの関係性が素敵。
翼と鉄腕、翼とレモン、良いですね。
印象的なセリフが所々に転がっていて、いちいち「はっ!」となった。
そして終わりが良くて、読んで良かったと思った。
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女の隙につけこむような男を、私は好きになりませんから。そういう人からもてなくても、平気なんです。
バ先の社員さんに隙がないよね、と言われた矢先だったから、この言葉が今の自分に刺さりすぎた。
今度言われたらこう言い返してやるんだ。
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・子どもの頃、大人は泣かないと思っていた。そんなふうに思えるほど、子どもだった。泣くな、とは俺は言わない。相手が男であれ女であれ、誰にもそんなことは言わない。
・「隙のない女は、もてないよ?」
「女の隙につけこむような男を、私は好きにはなりませんから。そういう人からもてなくても、平気なんです」
なんと。なんとかっこいい女なのか。俺はもうその瞬間、玲子に惚れてしまったのだ。
・化粧は若づくりのためではない。異性に見せるためにするものでもない。自分の心を明るく保つためにある。
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田舎暮らしに憧れてる人に特に読んでほしいかな。
私も脇差ほどでは無いが、生まれも育ちも片田舎なので共感する点がかなり多かった。
例えるなら、真夏の夜のジットリとした暑さ。我慢できない訳では無いが不快、季節のせいなんだから仕方ないと諦める。そういう住みにくさが田舎には確かにあると思う。
オムニバス形式で描かれてて、同じ出来事も別の視点から語られることで真相を知る。私の大好きなタイプだ。
弱く見える姿も実は強い意志を持ってなされた行動だったり、失礼で横柄な態度には、傷付いた自分を守るための思い込みや解釈などの過去の経験が根幹にあったりする。
要らぬお節介をやくことや、他人の良くない噂を喜んで収集することが唯一の娯楽。
作者は本当によくご存知なんだなと思った。
心配・親切を装ったこの娯楽であり本能的な悪意でもあるこの2つは、小さい頃から感じ取っていたし遠ざけようとしていたものの、大人になった今改めて言葉にして言われるとハッとするし少し恥ずかしくなる。自分も「大人」になりかけているのだと。
いや、唯一の娯楽でないにしても都会にもこういうのあるのかな…と都会に出たことの無い私からすればいろいろと想像するのも楽しかった。
わんわん泣けるような本かと思い心して手に取ったけど、思いのほかしっとりとした良作だった。
おすすめです。
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私の周りの人達の話かと思った。地域狭くて、人の目気になる感じ。 くーっと唸ったり、よしっ!と拳握ったり、疲れたー。
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タイトルとはちょっと違った印象の内容でした。
田舎だからいろんな古い考えがあって、でもある程度変えていかないといけない価値観もあったり。
人それぞれ価値観は違うし、それを家族であっても人に押し付けるのはちょっと違う。
なんかこう上手く言葉で伝えられないんですけど、それぞれの価値観がうまく描かれていた作品でした。
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かなり前から本棚登録をしていた。今になって中古で求め、なぜもっと早くに読まなかったのかと悔やまれる。
最近多い、ほっこり短編小説でしょと思っていたけど、かなり良かった。まぁ、ほっこり短編小説で間違いはないんだけど、何故か自分にはやたらと刺さる言葉が多く、ジーンと心に沁みてしまった。
翼のお母さんの話が1番良かった。
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毎月一冊だけ文庫本を買っているのですが、今月は何にしよう?と悩んで、フォローしている方の感想から、このカッコイイ女性をみてみたい!それに好きな作家さんだし!と思い購入しました。
うん!カッコ良かったです。
主人公時田翼は農協に勤めています。
わたしも田舎に住んでいるので、共感できる部分が多かったです。
この翼は周りからいつも遠くをみている。といわれますが、人がこうだからとあわせるのではなく、自分の意見をちゃんと持っているところを、すぐ登場人物を好きになってしまうわたしは今回の翼も好きになってしまいました。
この翼とレモンが可愛くてキュンキュンしました。
買って良かったです。
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まってまって、すんごくよかった!
こういう連作短編集、とても好み。
「迷惑かけろよ!かけまくれよ迷惑を!お前がこの世でいちばん愛するこの俺に!」
「えっ」
このくだりが最高だった〜〜鉄腕、なんていいやつなの。
翼と小柳さんの、ガツガツしないつつましやかな愛の育み方もとても素敵だった。
寺地さん、また読むぞ。
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物分かりが良すぎて、物事達観しすぎな時田さん。それから直情型で周りに流されないはっきりした物言いの小柳さん。二人から始まって、ぐるぐる周りの人も関わりながら、みんな幸せに変わりつつある。
齢◯十年重ねた人間が急に変わるなんてファンタジーもいいとこだけど、時にはそんな可能性を秘めた夢だって見たくなる。
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大事件は起こらない、人の悪意が露悪的に描かれない、日常が描かれた、こんな本が好き。
語り手が次々と変わっていくオムニバス方式は、その行動や言動が、どうしてなされたのかの裏がわかるのがおもしろい。最初の『大人は泣かないと思っていた』が一番好き。
終わり方も、余韻があっていい。
「たき」って誰? って思うけど、それも含みでいい。
奥さんの名前だったなんて安直な結論じゃなくてよかった。
p39
子どもの頃、大人は泣かないと思っていた。そんなふうに思えるほど、子どもだった。
p71
家族って、僕は、会社みたいなもんだと思う。
~
会社って、ひとつの目的のために、いろんな人が集まるでしょ。みんなでそのひとつの目的を達成るするために、力を合わせるでしょ。
~血が繋がってたってさ、他人だよ。~気が合わないやつも、虫が好かないやつもいっぱいいるけど、協力しなきゃいけない。仕事だからさ。
p122
(10年前に家を出た母が一人暮らしをしながら)
両手を合わせてから、箸を取る。正座をして、背筋を伸ばして食べる。ひとつでもいい加減な習慣を自分に許したら、きっとどんどんだらしなくなっていく。わたしはだらしない生活をしながら強靭な精神を養えるほど人間ができてはいないのだ。
p136
(花を摘まない息子の翼を前に)
摘まれた花は、摘まれない花よりはやく枯れる。だから翼は花を摘まない。でも、わたしは花を摘む。摘まれた花はだって、咲いた花とは違うところに行ける。違う景色を見ることができる。たとえ命が短くても。
「お母さんはもう振り返らずに生きていけばいいよ」という息子の言葉に、著者はこう書く。
p135
昔のことにたいして罪悪感を抱えるんじゃなくて、そうしてまで選び取ったものを大切にして生きてくれるほうがいい、そのほうがずっといい、と。
きっぱりとした決別の言葉だと思った。
ええー? 決別なの?
その疑問に対する答えが、母親の広海と会社を共同経営する千夜子の言葉。
p148
「いろんな人を傷つけもしたし、迷惑をかけたもの。でも過去があっての、今のあたし。だからどうせ頭をつかうなら、あの時こうしてたらどうなったかな、なてことじゃなくて、今いるこの場所をどうやったらもっと楽しくするか、ってことを考えたいのよね」
~
昔のことにたいして罪悪感を抱えるんじゃなくて、そうしてまで選びとったものを大切にして生きてくれるほうがいい、そのほうがずっといい。
あれは決別の言葉ではなかった。翼からのプレゼントだ。これまでのわたしと、これからのわたしへの。
p251
(入院した父の病院で、翼はかつての恋人と再会する)
恋人だったひとは「いつまでも仲よく、一緒に暮らしました」を選べなかった関係が、すべて無意味かというと、そんなことは絶対にないのだと言った。
p260
(死期を悟った父が翼に、どうせ死ぬんだから。~生きていても、もうなんの役にも立たないんだし、だったらはやく死んだほうがいい。と言うのに)
「やめろ。役に立たないからなんだよ。それがなんだよ。役に立つために生きてるわけじゃないだろ。他人のために生きてるわけじゃないだろ。どうせ死ぬんだからなんだよ」
p267
自分の知らないところで、いろんなひとたちに心配されたり世話を焼かれたりしているのだと思い知った。「誰にも頼っちゃいけない」なんて、たいした思い上がりだったということも。
p268
去年の今と比べても、いろんなことが変わった。だからほんとうにわからないけど、でも遠くばかり観ないように、と今は思う。遠くを見過ぎて、目の前にあることをないがしろにしないように。
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大人になる事が怖いから、なりたくないから、大人という言葉にひかれ手に取った。
この本に出てくる女の人は全員かっこ良くて、私がなりたいものそのものだった。だけど、その分失うものや、考え方が悲しくもあるもので、私も同じ事を感じるのかと思うと、少し読みにくかった。
この本に出てくる人達はちゃんと自分の軸を持っていて憧れた。言いたいことを言わないのも、認めたくても認めれない事も、言いたいことを言うことも、全て、行動も思考も全てが大人だった。きっとそうなんだと思う。何かを我慢することは、何かを守る事で、何かを失うことなんだと思う。だから私はやっぱり大人になりたくないなぁと思った。
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やっぱり寺地さんの作品が好きだな、と思った。
どこかに身に覚えがある。それは、自分が感じたことだったり、ときには、これわたしもしてるかも、と思ったり。共感というより、共存してる、という感じ。この作中の人たちは、きっとこの世界にいるんだろうなと。もしかしたらわたしの友達かもしれないし、すれ違った人かもしれない。
答えが見つかるとか、道を照らしてくれる、教えがある、とかではない。ありのままの彼らをありのままで感じさせてくれて、読んだ後に、さぁ明日も過ごすか、と、軽い気持ちで呟く、そんな自分にさせてくれる。
あと鉄腕がとてもいい。わからなくても、ちゃんと、感じることのできて、行動に移せる彼は、とても素敵だなと思う。あと鉄腕の父親も、多分そばにいたらムキーってするけど、ただ取り巻く環境の中で信念はちゃんとあって、それが現代に合わなくて、理解できないとしても、その人の全てを否定するのは違うよね。(いや、まぁムキーってなるけど…)わからなくても、おじさんは、これからは今までと違う方法で家族を大事にしてほしいね。それでいいんじゃないかな。