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ああ、こういうものから逃げ出したくて地元を出たんだったな…と自分の感情の立ち位置を再確認しました。でも自分は結局、似た環境に嫁ぎ、これまた似た環境の土地に住んでしまい、今洗濯機の中の渦に飲み込まれたような生活をしています。
翼くんとレモンちゃんのように渦中にあっても揺るがない信念を大事にしたいと思える、素敵な作品です。
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「私の地元の話だ」、そう思った。
20数年離れてしまえば色んなことを忘れてしまう。でも実家に3日も居ればなぜここを出たいと思ったのかを思い出して、途端に居心地が悪くなってしまうから、それ以上滞在する事ができない。
「妥当じゃない」に出てきた「自分が周囲にどう思われているか」の話。
小学生の時に行われた「あなたの1番の友達は誰ですか?」っていうアンケートを思い出した。
私が1番と書こうと思ってる友達は、私を1番と書いてくれるんだろうか?仲の良い友達は5人くらいいたのだが、誰かを1番に決めていいんだろうか?とかなり迷って書いたことを今でも覚えている。
子どもって繊細だし、大人が思うより色々考えてんだよ。
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表題はもちろんだけど各話のタイトルにメッセージ性を感じるから好き。
男のくせに。普通は。みんなが。
他人軸で測られるのはひどく息苦しい。
抗う人、看過する人、追従する人、順応する人。
そんな人たちの心を解き放つ連作短編集。
各話を通して、翼とレモンの関係性の変化が見れるのも楽しい。
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歳が近いこともあってか、主人公と似てる部分があったと思う。すべて自分でやらなければ、自分がやらなくてはと。
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寺地はるなさんの作品のあたたかいところは、
すくい上げてくれるところ。
人と違うところもなんてことなく受け入れてくれるし、けっして否定しない。
そこに救われる。
子どもの頃、大人はもっと大人だと思っていた。
正しく間違わず、どんなことも、きちんとできる。
自分も大人になったらそうなるんだと思っていた。
だけど、いつまで経っても自分が思い描いていた大人に全然なれない。
ふと思い出したのは、祖母に先立たれた祖父の姿だ。
膝を抱えて、しょんぼりと床に座っていた。
どこへ行ったらいいのかもわからない
迷子の子どもみたいだった。
あんなに小さな祖父は見たことがない。
私のおじいちゃんが「おじいちゃん」という枠から外れた唯一の瞬間だった。
私には、おじいちゃんが泣くなんて考えすらなくて。
でも、正しかった。まっすぐに。
愛する人を失ったひとりの人間として。
だって人間なんだもん、みんな。
完璧じゃないし、間違ったり、
躓いたり、泣いたりする。
完璧である必要なんてないんだ。
私たちは寄り添いあったり、支えあったり、
手を取りあって生きていけるんだから。
すべての人が完璧だったら、誰も何も要らない。
欠けを補い合って生きていく。
それができるって素敵だなと思う。
寄り添えるこの世界が素敵。
様々な状況下の人たちが物語には登場するけれど、
その誰もが責めることなく、
ほのかな希望をもたらしている。
そういうところが、あたたかくて優しい。
どんな自分も受け止めてくれている。
大人だって泣いてもいいんだよ。
大丈夫、誰だってそんなに強くないし、
強くなくたっていいんだよ、って許してくれる。
そっと微笑んで、照らしていてくれている。
そこに、救われる。
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本当に好きな作家さん。
人生ってやつは、救いも教えも成長もはっきりと分かるようには訪れないけれど、ただ懸命に生きて、誰かと関わりあう事で、確かに何かが変わっていく瞬間がある。たまらなく胸を打つそんな瞬間を描ける人なのだと思う。
生きるということに正解も間違いもない。
誰かのために生きるのではない、でも、自分が誰かのために何かをしたいと思えるのは多分とても幸福なことなのだと思う。
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「他人にひとつも迷惑かけないとか、それは無理だって」
遠くを見過ぎて、目の前にあることをないがしろにしないように。
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一気読みせず、ちょこちょこ読んでたから登場人物忘れてるところがあった(笑)
全体を通して、良作でした!
それぞれの登場人物目線で話が構成されてて非常に読みやすかった。
段々、小柳さんへの気持ちが大きくなっていくところは少なからず甘酸っぱさを感じた。
自分は翼と違って、あんまり先のことを考えすぎないから、あんまり共感はできなかったが、小柳さんから翼への考えすぎという言葉はめっちゃ共感できた(笑)
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「らしさ」なんて、いらない
それは偏見の塊。それは圧力。それは暴力。
強さはひとつじゃないね。彼女のまなざしはそれだけで、なんだかとっても尊いし、きっと思いが伝わっている。
ひとつずつでいいんだ。きっと私は強くなるから。
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小説を読んでいて日頃なんとなくモヤモヤしていたことが腑に落ちることがある。
父親が入院して主人公が看護師さんにいろいろ言われる場面の文章がめちゃめちゃ腑に落ちた。職場の人の顔が浮かんで笑ってしまった。それから少し嫌でなくなって優しく対応できるようになったかもしれません。
兄弟がいたら、交代で看病もできるのにね、たいへん。ひとりっ子ってたいっへん。宮野さんは相変わらずにこにこしている。それか、お嫁さんがいたらよかったのにね、とも言う。「ああだったら、こうだったら」と他人の人生にあれこれ口を挟むのはこのあたりの人たちの娯楽なので、生返事をしながらこの話が終わるのを辛抱強く待つ。みんな、自分の人生に飽きているのだ。
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九州の田舎町で時田翼は大酒飲みの父親と二人暮らし。
母親とは翼が大学生の時に家を出て行った。
そんな時田家の庭の柚が盗まれるというところから始まり、
語り手の視点が変わりながらこの田舎町に暮らす人たちとの繋がりが綴られている物語です。
初めて寺地さんの作品「水を縫う」を読んでとても心が温まって
良かったのでこの作品を手に取りましたが、
今回もその作品と変わらずじわじわと心が温まりました。
どの主人公の視点でも誰もが生きていくうちに
味わうであろうとする家族間での悩み、
男女ならではの悩みが問題視されていて
とても身近な問題として描かれているので
更に親近感やリアル感があって感情移入しやすかったです。
翼は様々な場所で人との交流があっても
物腰が柔らかく、そして優しく人に対して親切すぎる
という印象があるので翼が置かれている現状を見ていると
とても痛々しく思えてしまいいつか心身が何処かで
ぽきっと折れてしまうのではないかという思いに駆られました。
けれどそんな彼に触れあう人達が時々優しく手を差し伸べていて、
それがまた微笑ましく見えました。
とかく子供の頃から大人になるまでには夢を持つとか、
何か目標を持って生きるとか言いがちですが、
この作品を読むとそうゆうことではなく、
ただ目の前にあったことを一つ一つこなしていくことも
また大事だということがしみじみと伝わってきました。
物語の中で素敵だった言葉が端々にありましたが、
特に印象的だった言葉は
「来年」や「将来」があらかじめ設定されていて、
ただそこに向かって駒を進めるようにして生きていけば、楽だろう。
でも違う。
予想外のことがかならず起こる。
俺たちはたぶん目の前に現れるものにひとつずつ対処しながら、
一歩踏み出す方向を決めるしかないのだろう。
いちいち悩んだり、まごついたりしながら。
という一節なので心に留めておきたいと思います。
男だから「男らしく」とか
女だから「女らしく」とかという生き方や扱いを受ける
古き日本古来のものや「子供だから」とか
「大人のくせに」という考え方も
この作品では自分らしく生きていくのが良いというのが
描かれているような気がします。
何にとらわれず自分らしく生きていくのが、
自分にも心地よく過ごせて、
それが一番の幸せな時間の近道だとも思いました。
少し心が落ち込んだりした時に
そっと背中を押してくれるような作品なのでお勧めだと思います。
まだ寺内さんの作品はあまり読んでいないので、
これからはこの他の作品も読んでいきたいと思います。
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しみじみしたなぁ・・・。
けして生きやすくない閉鎖的なコミュニティの中で、男らしくないと言われながらも、自分なりの考えや好みを曲げることはしない、翼。かれと対極にいるような男らしい幼なじみの鉄也と、やりとりするところがいい。
なんでも大ざっぱに(おおらかに)、「わからん」と言い放ってきた鉄也。結婚しようとしている女性のことに及んでも「わからん」を連発していたら、翼に叱られる。
「なんでも『わからん』で済ませるな」
そう言うしかないこともあるけれども。大事な人やものごと、そして自分のことこそ、分かろうとする姿勢や努力が必要なのだ。その過程で何度、涙しようとも。
みんなちょっとずつ臆病で、でも、曲げられない想いがある。その小さいけれどしたたかな、野の花のようなつよさが、愛おしい。
怒りや悲しみのような、はげしい感情からではない・・・でも胸の奥深くから湧いてくる、"大人の"涙。
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九州の、郡から市に併合されて間もない片田舎に住む32歳の青年時田翼と彼に関わる人達の、「こうあらねばならない」という世間のしがらみにもがきつつも、より良き選択をしようと今日この時を懸命に生きていく様を描いた連作短編。性別も年齢も個性も違う人達の様々な視点から物語を書いていて、誰か一人に肩入れするのではなく公平に一人一人の人生を尊重しているのが感じられてとても好感が持てました。翼とレモンの恋の行方を話しの軸にしているのだけれど単純に恋愛小説ではないところが好きです。寺地はるなさんはずっと気にはなっていた作家でしたがこれが初読みになりました。他の作品もぜひ読みたいです。
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この本を読んで、相手のことを本当に思いやるとはどういうことなのかを教えてもらった。
周りの目を気にしたり、世間のくだらない常識にとらわれていたり、空気を読んで何も言えなかったり。そんな人に対して、そんなの気にせず自分を強く持てと言うこと。
今抜け出せない渦中にいる人に対し、「逃げてもいいんだよ」「手抜きしちゃいなよ」などと簡単に言うこと。
苦しみをやっと抜け出し笑えるようになった人に「もう忘れなよ」などと簡単に言うこと。
どれもこれも思いやりのように見えて価値観を押し付けているんだ。
わたしもつい言ってしまってきたと思う。相手の苦しみや状況何もわからないのに簡単に無責任な言葉をかけるべきではない。
広海さんの言うように、「他人は自分ではないから、わたしができることは、自分で納得できる道が見つかるといいなとぼんやり思うことだけ。」というのが、本当の思いやりなのかなと思った。
とてもこの本は優しいと思った。
寺地はるなさんの本もっともっと読みたい。
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「ものすごーく好きになれる相手って、実はあんまりいないもんだよね。出会いなんていくらでもある、と言う人もいるけど、すごく気の合う相手も好きになれる相手も限られてる。ほんとうに一生に一度、現れるかどうかだよ」
摘まれた花は、摘まれない花より、はやく枯れる。だから翼は花を摘まない。でも、わたしは花を摘む。摘まれた花はだって、咲いた場所とは違うところに行ける。違う景色を見ることができる。たとえ命が短くても。