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シリーズ四作目で、タイトルが斜め上ではなくなった。今回の題材作品はゴーゴリの『鼻』と江戸川乱歩の『幽霊塔』。
しかしいつものことながら、題材作品とスガリさんの感想文と本作内の事件の関連性は低い。ここがもう少しつながってくるとビブリア古書堂のような深さが出ると思う。
ミステリとしてもオチが読めてしまう展開ばかりで、特に第二話はシリーズ二作目のレビューでも書いてずっと引っかかっていたスガリさんの行動が関係しているので、謎といえるほどのものでもなかった。
ではなぜこんな文句ばかり口にして四作目まで読み進めているのかというと、スガリさんの読書感想文が気になるからだ。自分で読書レビューを書くように、人の感想も気になる。そして、本作のスガリさんの着眼点は面白かった。
例えば第一話。『鼻』という作品は、主人公の鼻がある朝なくなっていて、洋服を着て歩き回り言葉を話すようになっていたという物語だ。最終的に鼻は元に戻って一件落着かと思われたが、スガリさんは鼻が戻ってきた日に主人公が唇を震わせる癖をしなくなっていることに注目する。鼻は戻ってきたが、今度は唇が別のものになっているのではないか、と。
私がレビューを書くときはその物語を読んでどういう教訓を得たかとか、主人公の考え方や心の動きについて書くことが多い。しかし、感想文というのは自由だから、スガリさんのように別の物語の可能性について話して、世界を広げようとする試みがあってもいい。
五作目が出ているので引き続き読み進めたい。