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「推子のデフォルト」と「マイイベント」の2篇を収録。
「推子のデフォルト」は、現在とは違う発展をした世界(ちょっとサイバーパンクっぽい)で起きる不気味な現象を描いた作品。
「マイイベント」は、50年に1度の大規模災害になるとされる台風の接近を前に、マンションの最上階と1階に住む一家の関係をスリリングに描いた作品。
どちらの作品も“イヤなやつ”が主人公で読んでいて不快になったが、こんな人達は周りにいくらでもいるなと思う。どう感じるかは人それぞれだろうが。
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推子のデフォルト
【読んだきっかけ】
本谷有希子さんがゲスト出演されたアシタノカレッジ/武田砂鉄 さんのラジオ番組にて
「ママチャリって乗ってるだけで子どもを乗せていなくてもその人をママにさせる」
と話していらっしゃって、たしかに!と思ったのがきっかけ。
─名前のある一人の人間なのに、ママチャリをこぐ人はただ「ママという性能そのもの」になるのだ
【心に残った要素】
─みんなきんいつに!
─きんいつなおにいさんおねえさんになろう!
個性豊か、自分らしく、と求められることに違和感を覚えたことすらないけれど、いざ反対の言葉を聞くと、個性を育てることが本当に正しいことなのかな?って不安になった。
好き嫌いが分断を生む?
─違いはすべての不幸の元よ。始めから違いがなければ戦争も起こらないし、差別も生まれない。人生の勝ち負けも存在しない。だから全員がシアワセになる。
─大人の約二倍の体感速度で生きている
─平均寿命の更新
によって
─時間を倍長く感じる上死なない体を、死なない体を与えられてしまった息子の老後を想像して絶望し、こんな時代に産んでしまったことを後悔
したというママ友の話。
実際、大人の10分が子どもには60分に感じるらしい(子どもは大人の1/6の体感速度)。つまり作中の設定と比較すると12倍!?想像するだけで脅威の時間感覚です、、
─おいしいまずい、を判断する味覚は将来的に不要である
え、それは悲しい。絶対反対笑
p.37-夢離れ
べーちゃんの夢工事ラムレスを読んでいる身としては心がギュッとなる。4,5歳になると徐々に夢を見なくなる、スリープモードになるのだと言う。
本来脳が整理されるための時間なら、夢を見なくてもいいはず。…なんだけど夢は見てたいなあ
─言葉をポジティブに変えるだけで人生が上向きになる。
疲れた、ではなく、今日もよく頑張ったと自分に声をかける。お疲れ様です、が禁止だった会社があったなと思い出しました笑(退職済)
【ここが好き!】
子どもは無邪気に遊び回ってなんぼ!保育園児が洗濯の必要がないほどきれいなままの洋服だったらやっぱりヤダな…とか、
─夏の蛍のようにしつこいあの人
様々なことが発達し、常識がかわっていくということが表現をかえてゆく。言語も発達し変化する。深い。。
読み始めはこの世界観や設定にワクワクしてたんだけど、結末のシーンに向けて段々と胸がザワザワしてきて、人間らしさとは、自然の摂理とは、って考えている自分が居ました。シアワセってなんだろう。
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マイイベント
【心に残った要素】
─奴らには不幸もシェアしなきゃいけない義務があるんだよ
─犠牲になって然るべき人間だけが、犠牲をシェアするんだよ
もし息子くんがこの日も自宅にいたとしたら展開は変わっていたのかな?
【ここが好き!】
終始モヤモヤする感じなんだけど、本谷さんの結末に向かうところのスピード感��、読み切った時にさらに感じるモヤモヤ感があって
短編小説なのに大作を読んだようなある意味すごく体力と気力を必要とするところ。
セブンルールで本谷さんが怪談話の好きなところを「オチがない」「なんか理解できないことの空気だけが残るの」と仰っていて、まさに!
本谷さんらしさってこういう感性に詰まっているんだなって気がして納得でした。
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中編2編
1編は近未来の管理社会。体にチップを埋め込むのが普通の世の中になってネットに繋がらない人こそ依存症にと呼ばれと、現在の向かうところを暗示しているようで不気味。もう1編はまた違った味わいのホラー。台風で川が増水するという時にマンションの最上階と1階の家族による悲喜劇。どちらも自分勝手で付き合いたくない人達ではあるが、その気持ちも多少は理解できて、どんどん悪化していく事態に背筋が寒くなった。
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ラジオ出演で著者が言っていた。 XXママと呼ばれ、チャイルドシートを自転車につけている女性が、私はママである前に一人の人間なんだ、と主張する人物ではなく、自分は母親という性能そのものなのだ、という人物を描きたかったと。そこがこの小説の特色だと思い、興味深いなと関心を持った。SFといってもいいと思う。リアルさゆえに、これまで読んだディストピア小説のどれよりも気持ち悪く怖い
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2つの物語から成る本。
【推子のデフォルト】
これからなりそうな世界ではあるが、個人的にはすこし世界観がぶれている気がした。
こぴくんママのように、デジタル社会に抵抗を示している人が語り手ならまだ自然だったかもしれないが、すっかり馴染んでいて、デジタル機器がなくてはならないような最先端の人が主人公であり、その人が語り手のため、違和感。
自分が幸せを感じるものに対し、「死んだような」とか「正気のない」のようなものだと感想を抱くのだろうか?
みんなが同じがいい世の中で、流行を求めるのだろうか?
個性が大事と言われる世界になっている自分には分かりえないのかもしれないが、ところどころ違和感を感じた。
ただ、このような世界に片足を突っ込んでいるような感覚はあるので、今の世界がとことん進んだ結果、似たようなことになるかもしれない恐怖感も覚える。
今も、本の中の世界も、きっと移行期なのだろう。
何がきっかけで移行したのか、気になるところだ。
【マイイベント】
こちらは現代に起こりそうな物語なので、想像しやすかった。
どの登場人物も苦手という、気分が悪くなる話。笑
でも、どこかにいそうな人物像。
うーん、なんだか後味悪いし本だったかなぁ。
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2話収録の本作。
まずは「推子のデフォルト」から。
遠くない未来のSF話。スマートフォン、インターネット、SNS依存ともいわれる現代への痛烈な批判とも取れるないようで、ものすごく考えさせられた。怖かったけど笑。
等質化がよしとされる世界では、人間らしさなどはいらない機能で、結婚や出産、子育てもコンテンツとしてありがたがられている。
人と会話をしながらも、3倍速再生の動画を見ながら、4倍速の音楽を聞くことも当たり前。
すでに情報量が500年前に生きた人の数千倍ともいわれる現代、続けばこうなるかも…と妙な説得力があった。
埋め込みチップや富裕層の楽しみ方なんかを見てると、ジャスティン・ティンバレークのタイムを思い出した。
この社会が続けば、本当にこうなってしまうのかなぁ。
ネットに触れさせるのが早ければ早いほどいい、なんていう世の中が、本当に訪れてしまうのかなぁ。
こぴくんママのように、自分だけが正常な感覚を持っていたとしたら…
考えただけでも恐ろしい。
人間らしさ。個性。改めて大事にしていかないといけないと感じた。
そして「マイイベント」
とにかく登場人物全員が胸糞悪い!みんな強烈で嫌なやつばかり笑。ただ全員、こういう人いるよね…と納得させられてしまった。
災害で自分の優位性を感じたり、頭のおかしい行動をしているんだけど、嫌な思考回路しているんだけど、
それは少なからず自分も持っている嫌らしさなのかもしれない…と思うと怖くなった。
最後のオチは、もっとやられてもいいんじゃないか?と思うほどだったけど、
自分のプライドを持っていたものすべてズタズタにされたから、それはそれでいいのかな。
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こういうタイプの本って初めて読んだかも、、
推子のデフォルト
マイイベント
2作ともゾワゾワが止まらない。
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本谷さんの物語にはいつもゾワゾワさせられる。
ちょっとした刺激が欲しいときにはおすすめです。
「推子のデフォルト」
「マイイベント」
の中編2作品からなる一冊。
「推子のデフォルト」
推子ってなんだろう…とタイトルから立ち止まってしまう。
近未来のお話ですが、ありえなくないよなぁ、ありえなくないから怖いんです。
「人間は考える葦である」という言葉があるけれど、
これからもっともっと情報が増えて、それをひたすら貪るようになった時、
私たちはまともに考えることを放棄せずにいられるのか?
「マイイベント」
こちらはより身近な現代のお話。
しかし何とも人間の嫌なところをこれでもかと描いてくる。
こういう人たち、きっとどこかで知っているから居心地が悪い。
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2作からなる作品。
「推子のデフォルト」
身体に超小型の電子機器をいくつも埋め込み、目で動画を見ながら、耳に埋め込んだイヤホンで音楽を聴いて、電子タバコを舌に埋め込んで好きな時に嗜んだりと、デジタル依存が良しとされている世界を描くディストピア小説。
その中でデジタル依存を良しとしない人が、どう見られ、どんな思いを持って、どうなっていくか。
どの子供も等質に育てる教育を進める世界で、人間らしさって…個性って…と考えさせられる。
そんなに遠くない未来のような気がして、ちょっと怖い。
「マイイベント」
大規模な災害に備え、マンションの最上階に住む渇幸は防災用品の点検をしては、ワクワクが止まらない。安全な自分の家から下界を眺めて、自分がいかに上級かを噛み締めて楽しんでいる。
ところが台風が近づくある日、一階に住む超厚かましい一家が「うちの家危ないし、公民館とかもおばあちゃんが腰悪いので嫌がるし、動物も飼ってて行けないので、お邪魔してもいいですか?」みたいに家に来たところから、夫婦の万全だった日常が狂っていく。
旦那さんのヤバさ、奥さんのヤバさ。居そうなんです、こんな人。
どちらの話も、ジリジリ怖くてでも面白い。
面白がる自分も変なのかと、ドキドキさせられるのです。
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終始小気味悪くて、ゾワゾワするけれど面白い。
「推子のデフォルト」
デジタル依存の成れの果て。
テレビだって30年40年も前は見すぎはよくないとか色々言われていただろうに、今や日常的にずっとついていることに疑問のない人も多いんじゃないかと思うと遠くない未来にこんな世の中が本当に訪れるんじゃないかと思える仮想ディストピア。
そんなギリギリのところを攻めているので肌触りが妙に悪い。(私はそんな感覚が好きだが)
オフライン学園側も根拠の無い話をしているところも違和感がありすぎで、こぴ君ママの質問に答えられなかったところが気持ち悪くて、そんな人や団体が確かにあるよなぁと思わせる。
偏った思想って、傍から見てると違和感がすごくて気味が悪いですね。
こぴ君ママは楽に生きれるように同調することを選んだけれど、どこかしらまともな心を持ったままでいて見分けがつかなくなった我が子を探すところ、こぴ君自身はそんな母親を見ながらも演奏を続けるところはメッセージ性を強く感じた。子どもの方が疑問も持たずに順応できるんだと思うと、影響力は計り知れないんだろう。怖い。
「マイイベント」
私は渇幸夫婦の持つ斜に構えたような思想はわからないが、もし他人が家に上がり込んであまり勝手なことをしてきたら同じような行動をとるかもと思った。(流石に盗みを疑って鍵をかけたりはしないが)
自分が作った家庭の雰囲気が好きだし、綺麗な部屋が心地よいので、上がり込んだ側が自分たちの主張ばかりするのを耐えられる気がしない。
スリッパ大丈夫じゃない!履いてくれ!笑
クーラー苦手だとしても、勝手に人の家の家電を操作するな!笑
バンバ家のような方はあまり好きじゃないので正直、渇幸には同情したところもある。
ただ、最後に渇幸夫婦も痛い目を見たところを見ると、私もどこか薄情な人間なのか?と不安を覚えた。でも私は、奥さんのように外向きにいい格好はしないのでその前に関係が崩れようと門前払いです。
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ここには毒しかない。毒を以て毒を制しようとしたら猛毒になったみたいな。
「肚」とか「渇幸」とかネーミングが秀逸
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初読みの作家さんでしたが、独特の味をもっていらっしゃるのだろな~と思いました。「推子のデフォルト」はIT化/AI化が進んだ近未来のディストピアなお話ですが、面白い、という類いではなく、どちらかというと、やばいやばい、という読み味。芥川賞作家に共通な”読みにくさ”もあり、ぐ~とは入っていけない感じの作品でした。(他の予約本も来てしまったので「マイイベント」はパスしてしましました)
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面白かったー。二編ともドラマ化してほしいくらい。
「推子のデフォルト」の「オフライン依存症」というフレーズは、将来的に出てくるかもしれないと思いました。今でいうところの徹底したビーガンとか、無農薬へのこだわり…みたいな感じで。推子の考えと同じように、世の中の人々が常にオンラインであるのが当たり前になれば、それと共存するほうがラクという考え方もされるようになるのかもしれない。人間のように簡単に順応できる生き物に「らしさ」なんてあるのか、という問題提起になる物語でした。
「マイイベント」に出てくる、こういうダンナ居そう!笑えるけど、ホラー。本谷有希子さんはきっとよくわからない手作りの焼き肉のタレとか嫌いなんだろうなぁと思いました(笑)。
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2作共にとち狂ってる。「推子のデフォルト」は初っ端からぶっ飛んだストーリー。「マイイベント」は読んでいくほど夫婦のやばさが見えてくる。こんなに登場人物誰も救われないお話があるのかと言うくらいすごい世界に惹き込まれました。
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大量の情報を四六時中浴びて、自分の声が聞こえなければ、等質化するより他がないって感じで怖い。
お麩来ン学園卒業生がどうなってるのか気になる。
っ」で言葉終わる人トラウマになりそうで怖い。
早い段階で気付いてたんだろうなバンバ家側は。
もしかして、バンバ家父は生コン工場に勤めてたりするのかな?
ところどころ、ママとしての機能になるママチャリとか、何が入ってるか分からないタレとかインパクトがあって好きです。