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うう…。この薄ら寒い、ざわざわする、いや〜な感じ。過剰に甘い添加物でコーティングされた気色の悪いものを口に入れちゃったみたいな。でもこのざわざわの正体、リアルにもあること、分かってるでしょ?見ないふりしてるだけでしょ?って、冷ややかに本谷さんが口の片端で笑ってる…気がする。
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『推子のデフォルト』
いわゆる〝シンギュラリティ”が起こった後の人々の暮らし、次世代の教育に焦点を当てた物語。
AI(ええ愛)が主な働き手となり、働く必要のなくなった人々は人工的なコンテンツを体内に流し込むことで仮想空間へ身を置くことが「普通」に。そんな世の中を担う次世代の子どもたちは、生まれた瞬間から(早くは胎児のうちから!)デジタル機器を与えられ、思考を奪われます。そして、均質化することが親・社会の務めとされています。5歳にもなれば大人の言うことに何の疑問を持たなくなる…恐ろしいことにそれが子育ての正解。
この物語の視点人物は、タイトルにもある「推子」。彼女はこの世の中の在り方をそのまま受け入れ、デジタル機器を体に埋め込みまくり、「模範的な」親として子育てをしています。一方彼女には密かな楽しみがあります。それは、この世の中に疑問を抱き葛藤するママ友をおちょくること。彼女の悩みを弄び、心の中で「やっぱ生のコンテンツって最高のエンタメだわー」とか言っちゃう。悪趣味です。
こんなろくでもない世の中になったとき、自分なら推子とこぴくんママ、どちらのスタンスを取るのかなと想像しながら読みました。推子の生き方はきっと生きやすいけど、悪趣味な娯楽を求めなければならないほどに退屈すること必至。こぴくんママの「子どもの幸せ」を追求する思いには共感できるけど、その生き方はあまりにも多難すぎる。藁にも縋る思いで行ったお麩来ン(オフライン)学園の説明会で、子どもが幸せになる道なんてどこにもないと絶望する姿には胸が痛みます。
こぴくんママの決断はやむを得ないのかなと思うけど結末がつら過ぎる…こんなろくでもない世ではそもそも子どもを持つという判断をしたくないかな。
デジタルデバイスが当たり前に子どもの目の前にある今は、このディストピアへ向かう途中なのだろうか、なんて考えると鬱々するお話でした。でも細かな設定が面白くて、笑える部分もあり割と好きな作品でした。
『マイイベント』
50年に一度の台風を前にウキウキで防災グッズを揃える渇幸は、安全な自分の家から下界を眺めて、自分が「上」にいる確認に余念がありません。そんな彼(夫妻)とマンション住民の間のトラブル、否、泥仕合を描いた物語。
この渇幸がほんっとにいやーーーーな奴、選民思想丸出しの小市民なんですわ。こねくり回す理屈、弱者に対する行動に心底ムカムカしますが、後半にマンション1階住民が最上階にある渇幸の自宅に避難してくるあたりから、少し自分の気持ちに変化が生じていることに気付きます。なぜなら、その1階住民(バンバ一家)にもまじでイライラするから。バンバの行動・住まいに嫌悪感を持っている私って、もしかしたら渇幸と同類…?と居心地が悪くなってきます。
ウサギを盗む・捨てるといった感情に支配された人間のわけのわからない行動、そして追い詰められた人間が吐くわけのわからない言葉に本谷有希子らしさが詰まっていました。後味は最悪。
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何という胸糞小説でしょう!
ここまで徹底しているとむしろ気持ちいい。
読後感も最悪。
でも、それが狙いなのですね。
こういう胸糞人種がいる、
近い将来そういう人たちが増えるかもしれない、
という警告のための小説なのだろうか?
本谷さんの小説は芥川受賞作ともう一冊(タイトル忘れ)を読んだ記憶があるが、どちらも似たような、私には全く理解できない人たちの話であった。不思議な本谷ワールドに引き込まれてしまった。また気分が悪くなりたくなったら読んでみようと思う。多分もう読みたくないけど。
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2つの物語の内の1つ(推子のデフォルト):自分の中の強すぎる正義が砕け散って強烈に闇堕ちしていくという様を見せられたような物語。〝ええ愛(AI)〟あらゆる物がネットと繋がる世界(IoTやDX?)といった現代にもありそうな、また近い将来起こりえそうな題材と絡められてた。この手のSF題材は野崎まどさんの方が好み。あくまで、個人的嗜好。当て字が、この世のものと思えないぐらい読みにくさを発揮。読後感も良い印象なく。
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二作目、このコロナ禍での自分の意地の悪い部分をまざまざと見せつけられているようでよるべない気持ちになる
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身体に埋め込んだデジタル機器で、情報を大量に取り入れる近未来。AIを「ええ愛」と呼んだり、子供には生まれた瞬間からデジタル機器を与え、ネット付けにするのが親の務めとされていたり、最初はその滑稽さに笑ってしまったが、等質を良しとする教育でロボットのように育つ子どもたちや、ネット漬けの環境を拒否する人を、オフライン依存症とよび否定する圧力などがリアルで、笑い事ではないかもしれないと感じた。最後は背筋がヒヤリ。
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2作ともとても面白かった。
1作目は近未来的なSFであるが、今の生活の延長線上にあり得るようなことばかりで将来このようになるのを危惧せずにはいられなかった。
現代はスマホやWi-Fiなどネット環境のない時代からある時代へ移り変わり、それが今後どのように変化していくのか楽しみになる。
2作目はなかなかホラーだった。
どこの家庭においても他の家庭との間に抱える齟齬や胸のモヤモヤなどが巧みに表現されていて、その気持ち悪さを共感しながら読み進められた。
途中途中でハラハラする描写がいくつもあり、ラストまで緊張感がずっと続いた。
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現代社会の深い深い闇を見事に恐ろしく描いた2作が収められている。
『推子のデフォルト』
体にICチップを埋め込み、隅から隅までデジタル化、みんな一緒がいちばん、自分で考えるなんて異質、という世界にて、"オフライン依存症"と呼ばれ、公園で遊び回るなんて「子どもらしくない」と言われちゃう子ども。そこで右往左往しながら異なるタイプのママふたりがじわりじわりと本音を覗かせながら話は進む。
これ、20年くらい前に読んでいたら、こわーって思っただけだったかもしれないが、随所に、え、これ、今のコト言ってる…?と背筋がぞぞっとする会話や場面が現れる。
『マイイベント』
映画『パラサイト』を彷彿とさせるんだが、とんでもないクソ主人公のクソっぷりがこれでもかと描かれている点で、パラサイトよりも直球。読んでて気分が本気で悪くなるのだけど、おそらくこういう人が、こういう人の片鱗をうかがわせるような人が(そしてその本人自身が一番哀れな)、少しずつ世界を狂わせている気もする。
次はほっこりするのを読みたい。でも本谷有希子さん、すき。
どう生きたいかを問う本だったな。
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どちらの登場人物にも強い嫌悪感。ずーっとなんだか気持ち悪いし、嫌な感情しか湧かないけど、どても引き込まれて面白かった。
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2編の中編。
「推子のデフォルト」の世界は、全て均質に、そして人間がサイボーグ化した世界。
保育園の子供達の描く絵は全て似通っている。
それは素晴らしいこと!
しかしその中に1人、原人とあだ名される母親とその子供は、独創的。
これは病気です、と言われているが、母親はこんなのおかしい!と抵抗する。
そしてそれを見る推子は、彼女らの反抗を、新しくて面白いコンテンツとしてしか見ていない。
最終的に行き着いたのは、地獄のように思えるが、福音と読む人もいるかもしれない。
人間という種は絶滅し、新たな種に進化したの…かも。
いまは、それが気持ち悪いと感じていても。
「マイイベント」に登場する人々は誰も彼も自己中で、相手を論破することに命をかけている。
特に、父親!
こういうやつ、いるなぁ。
腹立たしいので、バチがあたればいいと思った。
そして、私の思惑通りに物語が進んだ時、ざまぁみろ、と思った。
物語の登場人物は嫌なやつだが、私も大概だ。
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2話とも、ご近所さん同士の話とみえて、もはや異文化の中で暮らしている人々のふれあいが、とても居心地悪く、引き込まれました。日常とずれてるようで、つながってそうな世界観にどっぷり浸れます。
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中編小説2作からなる本書、面白すぎて一気読みした。
初読みの著者さんだったけど、今後追っていきたい。
・推子のデフォルト
デジタル化が発達し、人々が体にあらゆる機器を埋め込み、「子供には生まれた瞬間からデジタル機器を与え、ネット漬けにするのが親としての務め」というのが常識となった世界の話。
主人公の推子は、「体は情報が注ぎ込まれていなければ不安を覚えるようになり、五分にも満たない時間でさえ、何もせずに手ぶらでぼんやりすることができなくなって」いるが、自分もそうじゃないか?とぎくりとさせられた。
最近、ゆっくり物思いに耽ったことがあっただろうか。自分もどんどん思考力や創造力を失っていっているんじゃないか。
夜23時以降とか、会社から帰宅する時間とか、デジタルデトックスしようかな、と本気で思う。
・マイイベント
登場人物全員、自分良ければ全て良し、を具現化したような人物で感じ悪いのだけど、その気持ち分かる、と思っちゃう自分もいる。
上層階の気持ちも下層階の気持ちも分かり、非常に居心地が悪い。
ラストにかけて、気味悪さに拍車がかかっていき、怖いし嫌なのにページをめくる手が止まらなかった。
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①推子のデフォルト
近未来的な世界。スマホ等、デジタル機器をあまりにも取り入れすぎた世界はどんなことが起きるのか。めちゃくちゃ面白くて一気読みでした。
②マイイベント
何十年に一度の台風が直撃するということで、かなり前々から備えている主人公のパパ。
自分たちさえ良ければという考えに嫌気がさしてくる。でも私自身もそういうところあるよな〜と思いつつ、考えさせられました。面白い!
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未来の世界はこんな世界?と思わせる本。でも、やはり笑ってしまう。ここまで、依存するなら、自分の意思はどこにあるのか、何故生きているのかとさえ、考えてしまう。
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近未来のSF作品。
これからの未来にありそうで、なさそうな設定。
最後はあんまりしっくり来なかったけど
デジタル機器との付き合い方を考えさせられた。