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演技というと「テクニック」だと思っていたが、そうではなく生身の人間の「心」。映像と違い、演劇では俳優と観客が同じ空間に存在することで、さまざまなことを共有・体験する。俳優と観客の関係はインタラクティブであり、俳優の演技が観客の反応によって変わる。役を演じるとき、どんな役でも「自分の人生の可能性のひとつ」と考える。自分が面白いと思えなかったものは伝えられない。「どれだけ観客の心を動かしたか(表現)」は大事だが「どれだけ送り手の心を解き放ったか(表出)」も同じく大事。
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演劇とは何かから始まり、演劇を構成するものから技術論まで概要を語る。
それでいて演劇がコミュニケート論に繋がるのが鴻上流というところか。演劇を知ることで得るものは多いだろう。
いやそれを除いても、演劇が楽しそうというのが伝わる。
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作家であり演出家である著者による、演劇についての話。小説、テレビドラマ、映画、演劇の違いについての考え方が面白い。小説がいちばん描写が細かく、テレビドラマ、映画、演劇の順で、いいかげんになっていく。見ている人は、小説では作家の思いどおりに内容が伝わり、テレビドラマでもナレーションが入ったりして、誤解しないようになっている。映画は、そこまではないが、人の動きや表情のアップなどを細かく差し込むことで、監督の意図する内容を観客に伝える。演劇では、必ずしも観客が同じところを見ているとは限らないし、ひとつの演技を見ても観客により感じ方が変わったりする。実際の人間社会の出来事は、演劇にいちばん近いので、ここから学ぶべきことが多いと思う。「生きることは演じること」と表題にも書かれているが、人間社会と近い関係にある演劇について知ることができ、勉強になった。
「演劇的な手法を、授業やビジネスや治療に使うことも、予想を超えて楽しい」p4
「(普段立派に見えた先輩)教室で、椅子や机をどけて舞台の代わりとして空けられた空間に立つ先輩は、じつに貧弱に見えました。演技が下手ということではなく、迫力不足で、とても薄っぺらい身体に感じてしまったのです。別の先輩の場合は、全く逆でした。(話が下手で、たいしたことないと思っていた)先輩が、セリフを言いながら動き出した瞬間、ものすごく魅力的に感じたのです。そのギャップは衝撃でした」p5
「どうも、演劇には人間を一皮むく力があるんじゃないか。その人の隠れていた本質を引き出したり、拡大したり、あらわにする能力があるんじゃないか。そう考えて、僕はいきなり、演劇というメディアに夢中になりました」p6
「演劇を知っていると、生活に役立つことが多い」p7
「本やCDなどの売り上げが毎年、落ち続けている中、ライブ・パフォーマンスの観客は、世界的に伸び続けています。日本では、2019年までの20年間で、観客数も約3倍になったというデータがあります。人々は、ライブで生身の人間を見たいのだと思います」p9
「「心の中で思ってさえいれば伝わる」というのは大きな誤解です。伝えるためには日常生活でも演劇・映像でも、テクニックが必要です。演劇や映像では、それを「演技力」と言うのです」p47
「通常、プロの演劇の稽古は1か月から2か月、週1の休みをとりながら、1日6時間から8時間、稽古を続けます」p53
「役者が緊張しているとき、緊張は観客に伝わります。そこで、「俳優は緊張しているが、観客には説得力があるように伝わる」なんて奇跡は起こりません」p56
「映像は、感情の生々しさを弱めます。舞台の稽古をしているときに、自分の演技を映像で撮って、後から見返すという人がいます。間違いなく、稽古場や劇場での演技より「冷たい演技」として映像には映ります。感情の生々しさが薄れるので、弱く感じるのです。結果として、その映像を見て落ち込む人が多いので、僕はあまり信用しないようにと言います」p57
「舞台は俳優のもの、映画は監督のもの、テレビドラマはプロデューサーのものと言われる」p67
「(観客によって状況は変わる。)どんな場所でもウケる��鉄板のジョーク」というものはありません。特定の集団のその瞬間の空気を吸って、その場をともに生きた時に、ジョークの言い方が、いちばんふさわしいものに変化するのです」p72
「緊張していたり、慣れてない時に、鉄板だと思ったジョークが滑るのは、オチの言い方がその場と対話できていないからです。その場の空気を感じないで、ただ、覚えた言葉を機械的に繰り返した結果、失敗するのです。スピーチやプレゼン、授業などでぶつかる問題は、俳優が向き合う問題とまったく同じなのです」p72
「観客のあくびひとつで、未熟な俳優は動揺します。それ以降の演技がメタメタになる、なんて悲劇が起こります」p80
「劇場で見る演劇体験を100%とすると、DVDで見る作品は、迫力も感動も50%以下だと僕は思っています」p96
「演劇は、小説と比べて情報量としては圧倒的ですが、伝える意味としては曖昧なのです。その時、その瞬間、登場人物の正確な内面は、演劇ではわからないのです」p103
「演劇は、情報量において膨大で、意味において曖昧なのです。そして、この演劇の特性は「人生そのもの」と似ています」p104
「(別役実)「演劇が演劇として、正しく情報伝達を行うためには、劇場は300人から500人を収容するものまでに限る、と考えている。収容能力がそれ以上の劇場になると、「等身大の人間から等身大へ」という、その基本的な構図が損なわれ、演劇とは言えなくなる、と考えている。セリフと言われる、仕草を伴う「音声言語」の到達限界を、私は300人までと考えている。劇場を500人までとしたのは、残りの200人について、濃密に体験した300人の、「増幅作用」のようなものを期待しているからにほかならない」p121
「ミュージカルが経済的に成立するためには、1200人から1500人の劇場が必要です」p123
「俳優が成長するためにはじっくり時間をかける必要があること。頭で「発声のメカニズム」がわかっていても、それを身体が理解するまでには時間がかかること。頭では「こう動いたらいい」とわかっていても、身体が納得するまでには時間がかかること。これらを教えてくれるのが演劇なのです」p128
「稽古場は安心して自分の恥ずかしい部分を差し出せる場所、失敗が許される場所でなければいけないのです(練習が終わった後、恋人役をやった俳優に「お前、いつもあんな風に恋人といちゃついているの?」とニヤニヤしながら近づいた人間がいたら、「もう来なくていい」と告げます)」p161
「近年、演劇系大学の卒業生に対する一般企業の評価が高まっています(理由①あいさつができる。理由②コミュニケーション能力が高い)」p201
「演劇と映画の違いは、「演劇は間違う」ということです。ベテランの俳優でも、30ステージあれば、セリフを飛ばしたり、かんだり、出トチリ(出るタイミングを間違えること)することがあります。まして、未熟な俳優は1回だけの公演でもセリフを間違えたり、つっかえたりします。大切なことは、間違った後、どう立ち直るか、ということです。未熟な俳優は、芝居の冒頭、セリフをトチッたりすると、もうその日はボロボロになります。けれど、ベテランの俳優はそこから立ち直ります」p211
「「どうしたら演技が上達しますか」とよく聞かれます。僕は「場数です」と答えま���。スピーチが上手くなるのも、話し上手になるのも、同じです。「何回バッターボックスに立ったか」です」p256
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演劇人 鴻上尚史さんの
「演劇」を語ることによって
今の老若男女の日本人に
届けたいお話し。
第八章の
「なぜ子供たちに演劇が必要なのか」
が 心に響いて来ました。
この「子供たち」の部分に
「今のコロナ禍」
「忙しい大人たち」
「(日本)政府の人たち」
を そのまま当てはめると
より
今こそ「この考え方」がより一層
明確になってくると思いました
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書いてあることには全面同意という感じだった
ずっとうんうん!って思いながら読めるので気持ちいい
見る人がいれば演劇って思うと人生楽しくなる
生々しい心の動きが苦手な人も居るってのに少しびっくり
そりゃそうなんだけど、自分はそういうのが大好きなのでどんだけ感情に飢えてるんだ…とか考えてしまった
日常で心を動かさなくなればなるほど急に揺さぶられると疲れてしまうと思う
でもずっと揺さぶられてもメンタルダメになりそう
何事も焦らず自然に心が着いていくタイミングで楽しもうと思った
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<感想>
コンビニの傘を題材に演劇に役者の葛藤(心の動き)について解説するくだりは素晴らしかった。日常の小さな葛藤はたしかに存在するし、自分自身の経験を振り返っても嫌になるほど覚えがある。これほど無意識の振る舞いを言語化できる鴻上氏はすごい。
<アンダーライン>
★★★喜劇と悲劇は同時に存在する
★★★観客や読者が感情移入するのは「主体的に参加した時」です
★★★演劇は、「より多くの人へ、より速く、より正確に」生きる人に、「あなたは何を失いましたか?」と問いかけるアートなのです。
★★★★芸術は「あなたの人生はそれでいいのか?」と挑発するものであり、芸能は「あなたの人生はそれでいいのですよ」と肯定するものである
★★★★★(カタルシス)身体を動かすことが身体と精神の健康にいいように、心を動かすことも、身体と精神に良いのです。
★★★★★傷つくことが嫌で、心がまったく動かないようにするのは、身体をまったく動かしてない状態と同じです。
★★★★★演技とは「心の旅」を経験し、それを見せるものなのです。
★★★★★演技はあなたが一番隠したいと思っている恥ずかしい部分や見せたくない部分を見せることです。
★★★★★俳優の仕事は傷つくことなのです。観客は絶対に傷つきません。傷つきたくないからこそ、観客席にいるのです。
★★★★★あなたの心がより動く設定を選ぶのです。
★★★★★自意識が心の動きを停止させます。
★★★★★周りを気にするからどんどん「自意識」にエネルギーが注がれるのです。
★★★★どんな役でも「自分の人生の可能性の一つ」
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同じ舞台でも観客によって変わる、映像より生々しく感情が伝わるなどは授業に似ていると思った。私も教師という役を演じているから。
他人を生きてみる楽しさ、他人になりきる大切さがある。
なんとなく演じるんじゃなく、「こう演じる目的」を明確にするのも大事だという。そうじゃないと演劇ではなく演劇っぽい何かにしかなり得ない。ただそれを演技中は忘れるのだそう。綿密に計画を立てておけば想定外にも対応できる。相手やその時の状況を察しないで計画通りに無理やり進めると失敗する。演劇、芸術、文学、必要ないと思われるものこそが人生を豊かにする。
「芸術は人生を問う挑発的なもので、芸能は人生を肯定するもの」
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演劇、映像、小説等さまざまな媒体を比較しながら、演劇の良さやうまくいかないところがわかりやすく書かれていて、ぼんやりと見ることが好きなだけだった演劇への解像度が上がる良い本でした。
コロナ渦で不要不急のものだと言われ続けた演劇に対して、必須のものではないけれど、人間がきちんと生きる上でとても大切で、大事なものであるという著者の愛を感じました。
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演劇の面白さの理由について知りたくて購入。
そもそも演劇とは、どこから演劇
演劇の経験を実生活に取り入れる方法も随所に書かれており、今後参考にしたいと思う。
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どうして演劇を観るの?演劇って面白いの?
今までそう問われたことが何度かあり、自分の中で時々振り返って気持ちを整理していた。この本には、自分なりに考えていたことや、考えもしなかったことが書かれており、膝を打つような気持ちになった。
また、演劇と映画、ドラマの表現の違いもとても興味深かった。
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演劇を、台本や様々なシチュエーションを用いて、他の媒体と比較しながら説明しているが、非常にわかりやすく、論理的なので納得感がある。
特に映像媒体と演劇、小説を鑑賞したときに受け取る情報量と質の違いに関する説明が腑に落ちる。
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演劇は触れて来なかったけど、もしかして自分が感じている今の閉塞感を打破するのに必要なのかも?!と思い、手に取ってみた。
演劇と映像作品の違いや、観客の重要性がよく分かり、来年は実際に見てみたいと思った。
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生きることは演じることである。
演劇とは何なのか。何がいい演劇なのかや、どうして子どもたちに演劇が必要なのかということを分かりやすく伝えている本。
演劇とはInteractiveなものであり、セリフは決められたアドリブである。つまり、観客の反応や雰囲気によって演劇そのものは変化してゆく。また、子どもたちにEmpathyを育てるためにも演劇は友好的である。