紙の本
アトピー
2023/04/23 03:07
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
アトピー性皮膚炎を持っている人の苦しみがひしひしと伝わってきました。周りにも何人もアトピー性皮膚炎の親族や同僚がいますが、こんなに大変だとは……。もっとアトピー性皮膚炎の人が生きやすくなる社会だといいのですが
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面白いとは思えなかったが、考えさせられることはあった。
痒みの描写が上手すぎて、こう言ったら悪いのかもしれないけれど、どうしても気持ち悪かった。確かにアトピーは生命に関わる病気ではないが、人生に関わる病気であると思った。
アトピーひとつで、人の一生は、生き方は、こんなにも変わってしまうものなのか。アトピーさえ無ければ、凛さんにはどんな可能性が広がっていたのだろうと思うと、胸が痛い。
私自身、小学生の頃に軽度のアトピーだったことがあり、痒くて掻いてしまったために皮膚がただれて、それを友人に「掻くのが悪いんじゃん」と言われたことを思い出した。なかなか、自分に起きていない他人の事に思いやりを持つのは難しいことかもしれない。
人間、コンプレックスに思っていることは誰にでもあって、「ここがこうだったなら」「ここさえ良くなったらもう何も要らないのに」と思うことがあると思う。
私も容姿の悩みは尽きないし、他人からは分からなくても、私にとっては最重要事項で、病むほど気にしてしまう事もある。
ただし、自分が当たり前のように持っている健康な皮膚や、五体満足に関しては、幸せとも有難いとも、あまり感じる機会は無い。なぜ、持っているものには目を向けられないのかなぁ。
もう少し、自分の持っているものについて、目を向けてみようと思えた。
評価とは関係ないが、少し前に読んだ「推し、燃ゆ」となんだか似ている感じがした。
人生の不毛さ、それでも生きていかなければならない辛さとか。
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人にされて嫌だったことをしてしまうかもしれない。
人にされて嬉しかったことをできないかもしれない。
人の振り見て我が振り直せないかもしれない。
それでも、
めんどくさい人に負けず、
体の痒みにも負けず、
災害にも負けず、
どうにかこうにかもがいて生きてる。
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結局、最初から最後まで
あまり目立たず
迷惑をかけないよう
人と深く関わろうとしないから
いろんなエピソードがうすい。
なんだか気の毒…
で終わってしまっている。
変わっていく主人公も見たかった。
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幼い頃から重度の皮膚炎に悩まされてきた凛。つらい学生生活を経て、現在は仙台の書店で非正規社員として働いている。そんな彼女の日常をリアルに描いた作品。最低の同僚やカスハラのオンパレードで、読んでいて楽しくはない。そこに震災まで襲いかかり、この子は生きていけるのだろうかと心配したが、意外と図太いのでほっとした。人目から逃れるようにしていた彼女が、深夜の公園で思いがけない行動をするラストは意外性に満ち、一皮むけた今後を予感させてよかった。
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わかってもらえないってつらい。
しかも、家族にさえも軽くあしらわれてしまうなんて。
皮膚の病気は、性格にも影響を与えると思っている。
アトピー持ちで、明るく社交的な子を見たことがない。どちらかというと、やっぱり肌を隠したくて、人に自分を見られたくなくて、自分を隠したくなるような性格になると思う。
好きな服を着れない。好きな髪型にできない。好きなように振る舞えない。
肌のきれいな子がただただ羨ましかった。
私も子どもの頃アトピーがひどくて、この本を手にとった。(大人になった今もあるが、子どもの頃ほどひどくはない)
だけれど、期待していたものと違った。
子どもの頃のエピソードやかゆみの表現には共感したけれど
大人になってからは皮膚がどうこうではなく、書店員の仕事の大変さや、震災のときのごたごたが中心だった。登場するいろんな人にいらいらした。
限定のものに飛びつくというのは、誰もが持つ本性なのだろうか。自分はそれで大変な思いをしたのにもかかわらず、だ。
いろいろとりとめもなく書き連ねた印象。まとまりのない作品のように感じた。
最後の主人公の行動は唐突で謎だった。
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肌を見られたくない、でもこの苦しみを知って欲しい。五十嵐凜、非正規書店員6年目。アトピーの痒みにも変な客にも負けず、今日も私は心を自動販売機にして働く。そこに起こった東日本大震災。本を求める人々。彼女はそのとき、人間の本性を目撃する。現役書店員が描く、圧倒的リアリティ。
割と強めのアトピー持ちの五十嵐凛は、仙台の書店に勤める契約社員だ。出てくる客も握手会イベントにくる作家も同僚も家族も、出てくる奴らの大半が糞という設定。抑圧された人生を送ってきた凛が、真夜中の公園で自分を開放するシーンにはジンとくるものがあった。でもジーンズをコソコソと回収する姿を想像したときには笑えた。著者である佐藤厚志さんはジュンク堂の書店員だそう。だから話がリアルだ。
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淡々とした語りでリアル。圧倒的な救いではなく、ほんの少しだけ何かを解放したような終わり方がいいと思った。ものすごくいい人もものすごく悪い人もいない。でも皆んなちょっとずつ狂っている感じ。きっと現実ってこんなもん。
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重度のアトピーで学校ではいじめ、家では疎まれて生きてきた女性が女店員として仙台で生きる物語。
痒みに悩まされ夜も眠れなかったり、何の良い思い出もない学校生活を過ごしたりなど、壮絶な人生を歩みながらも何とか生きている精神力の強さに脱帽した。
しかし少し過去の話とはいえ、当たり前にいじめや教師の体罰が横行していたり、震災直後にもかかわらず書店に多種多様なクレーマーが押し寄せたりと、仙台の人々を露悪的に描きすぎな気はした。(書店員をしている作者の実体験が多少は入っているのかも?)
一応白銀というオタク仲間の同僚がいたのが救いだが、もう少しスッキリするエピソードがあっても良かったと思う。
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生まれつきの重度のアトピー性皮膚炎で幼い頃から家族にも同級生にも教師にも疎まれ、そんな周りの人のことも疎んでいる主人公の五十嵐凛。
大人になって、書店で契約社員として働き、日々同僚や上司との人間関係や困った客を相手に過ごしている。その最中に東日本大地震が起きる。店の片付けをする中で、あるいは営業を再開する中で垣間見える人間の本性。
まだライフラインも復旧しない中で営業を再開した書店に押しよせ、「なぜ新刊が手に入らないんだ!」と怒号を浴びせる客、「なぜこんな時に営業を再開するんだ!」というクレーム、チャリティーで訪れる歌手の対応に苦しむ書店員たちの姿に悲しみや諦め、憤りを感じるけれどこれがリアルなのだろう、という気にさせられる。
非正規で働き余裕のない生活、家族からも受け入れられない孤独感、アトピーで痒い身体を掻きたい、でも掻けない、という苦しみ、震災後、薬も食料も思うように手に入らないという辛さ、という主人公の描写から、この作品は震災後小説であり、光の当たりにくい社会の一片を切り取った作品だと感じた。
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地元仙台を舞台に描かれていることは楽しめた。
一方で、凛を取り巻くストーリーの方向性が分かりにくく、どこを目指してストーリーを展開していきたいのか、著者が本著を通じて何を伝えたいのかが曖昧だった気がする。
アトピーの痒さが生々しかった。
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リアリティ溢れる筆致。自分とは全く違う境遇、性別、体質なのに、ページを捲る手を止められなかった。個人的には芥川賞受賞作よりこっちの方が好き。だから読書は止められない。
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主人公の凛は、アトピー体質な肌に対し長年家族や同級生から心無い言葉や視線を浴びせられたことがトラウマとなり、他人を信用できず自分の思いや考えを秘めてしまっているのではと感じた。彼女の過去のエピソードはとても残酷だが、誰しもが持っている人に見せられない心の内が描かれているようで親近感を覚える部分もある。
過去と対比して現在の主人公を取り巻く人物は十人十色で、凛が気にするほどアトピーを蔑視していない人も多いように感じたが、頑なに心を開ききれない彼女の言動からは、本人が抱えるトラウマは側から見るよりはるかに当事者を支配しているのかもしれないと感じ取れた。
ラストの公園のシーンでは、直接的な描写ではないがその事実に凛自身が感覚的に気づいた(というよりは気づきそうになり慌てて一度、その思考から離れようとしたのか…)のではと考えた。裸になって過ごした時間のあと、凛自身の中で何かが少し楽になっていたらと思う。
自分に置き換えて考えた時に、悶々と悩んだり、自分のことなんて誰も理解してくれないんだと孤独感を感じたりすることもあるが、実はそこまで重大なことではなく、一旦考えることを放棄して楽になることを試みてみるも大事なことなのかなと思った。
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今回受賞された佐藤厚志さんの作品を読んでみた。
アトピーを抱える主人公の話で、大変だなあと思うものの淡々と進み終わってしまった感じ。
凛さんの成長や、何か変化が見られるのかと思ったけど、感じられなかった。。うーーむ。
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共感した
いやあ、おもしろかった。むさぼるやうに読んだ。適度な長さの淡々とした筆致でユーモラスに、そしてリアリティを含めて書けてゐるのは、才能ありである。人物の顔かたちの捉へ方が井上ひさしふうで、しかし文体は洒脱。
人間関係の雰囲気がひしひしと伝はってきた。学校の空気感、家族の軋轢に生々しさを感じながらいちいち共感して、私の感じたことをそのままおもしろい小説にしたやうな感覚だった。これは震災文学といふよりも、現実の人間関係と心情の機微を書いたリアリズムとして巧みだと思った。
小谷野敦がアマゾンの「大物の予感」と題したレヴューで、《この作家は辻原登みたいな大物になる気がする。》と評してゐる。そのとほりだと思った。今月の文學界を読んだら著者がエッセーで、デビューからこの小説を書き上げるのに3年を要したと書いてゐた。このたびの佐藤厚志の芥川賞の受賞は、久方ぶりの収穫だったと思ふ。