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江戸の物語だけれどジェンダーの問題など、現代でもそうだよなと頷けるものがたくさんあった
鈴乃助は自分を何の取り柄もないと言うけれどとてもとても良い旦那さん、家族を何より大切にできる素敵な人だと思う(第九章の最後、千勢の言葉に共感!)
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最後、鵜三郎に持っていかれた感がなきにしもあらずだけど、鈴之助の活躍はもっと見られるのかな。シリーズ化を望む。
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人情味溢れるお話に心が洗われました。その時代に生きた人々の台詞が粋で、じんわり染みてきます。柔軟性のある鈴之助としっかり者のお千瀬、素敵な夫婦です。
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文句なしの作品。
さすが、西條奈加の作品はどれを読んでも間違いない。
楊枝屋の四男が、「仕出し屋の跡とり娘」の婿にと望まれる。
たまたま、出先で千瀬のうばの「おすが」が足を挫いた場面に出くわす。
鈴之助は、力もないのにおぶって医師のところまで送る。
それが縁で付き合いが始まった。
千瀬の両親は仲が冷えている。
そんな両親を見て育ったので、心から愛する夫を迎えたかったのだった。
ところが家に入ってみると、婿とは名ばかり。
店を牛耳じるのは女3代。
婿は子種のみが必要で、店のことに口を出すなと言われる。
千瀬が鈴之助を好いたのには理由が。
優しく嫌味なく一気に懐に入り込める人柄である。
嘘がなく誠実なところが大好きである。
おしゃまな二人の小姑もいるなか、次第に奉公人や客の信頼を勝ち取る鈴之助。
姉妹には大女将も、力をみとめるように。
西條奈加さんの作品は、笑いも涙も盛り込んだ
実に気持ちの良い読後感!
大好きな作家で、必ず読むようにしている。
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世間の「あたりまえ」にあえて立ち向かい、「女系」を貫こうとする相見屋の女主人たちの厳しい覚悟を見る。そこの歪みも初めだからこそであり、この時代の「あたりまえ」の反動ゆえの呪縛ともいえる。鈴之助の柔軟な対応力と妻への思いやりが好もしい。
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殺伐としたミステリーが続いた後だけに、人情噺にホンワカ癒された。同じ問題抱えていても、心がささくれ立った現代では、成立しがたいのだろうか?「夫婦でも親子でも、気持ちの掛け違いは実に容易く起こり得る。誰よりも近くにいて、共に暮らすからこそ、諍いの種は、無尽蔵にそこら中に落ちて尽きることがない。それを毎日、丹念に拾っていくのが、家族を続けていくための秘訣かもしれない。不精を通せば草ぼうぼうの荒れた景色となり、安寧の場所とはなり得ない。あるいは表向きばかりを取り繕って、見て見ぬふりを続けるうちにすこぶる風通しが悪くなり、床下が腐り落ちてしまうこともままあろう」鋭すぎる人間観察。感服です、西條さん。殻に閉じこもらないで気持ちをぶつけて生きていかねば。
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楊枝屋の四男坊(鈴之助)が、老舗の仕出し屋『逢見屋』に婿入りした途端、隠居を申し付けられる。『逢見屋』は、女性が采配をふるい「主人」であった。でもそこで腐ることなく、その懐の大きさで人の心の中に入っていく。「あー、この人ちょっと嫌な感じ」と思う人も、根は悪くないし、人情味にあふれている。現実の社会もそうなのかな?この時代、女が表に出ることは、ほとんど無いことで、それを貫いてきたことは、かなりの覚悟が必要だったと思う。それぞれいろいろな葛藤を抱え、その心情が機微に描かれ、「うん、いい話だった」です。
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男が跡継ぎが当たり前の江戸で、代々、女主人を戴く仕出し屋、逢見屋。
3代目女将に婿入りした鈴乃助の奮闘が始まる!
女主人を戴くというのが面白かった。
連作だが、不穏ないざこざ等を通して見えてくる逢見屋の謎も良かった。
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『涙もろい人は情が深く、顔に出さない者は薄情けだと思われがちだが、本当は違う。情をどう表に出すかはそれぞれで』 仕出し屋のご飯美味しそう。
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初出 岩手日報ほか12紙
主人公の楊枝屋の四男鈴之助は、仕出し屋逢見屋の美人の長女から望まれて婿に入ったが、そこは大女将、女将、若女将の女系が支配する家で、いきなり「凡庸だから婿にした。家業に口出しは無用。」と宣告される。
鈴之助は、同じ立場の義父だけでなく、鬱屈を抱える義妹たち、奉公人に優しく誠実に接するうちに信頼されるようになるが、問題は昨年の墨堤の花見の仕出しで妨害した同業者で、今年も魚河岸を巻き込んだ嫌がらせをしてきたのだが、その原因を探ると同業者の若旦那の逢見屋への憎悪だった。
仲睦まじく暮らすうちに若女将が懐妊したが、男の子が生まれることを恐れるようになり、逢見屋が抱える真相に気づいている鈴之助は悩むことになる。
もっと事件になるかと思った終幕は、割とすんなり収まるが、女将が20年ぶりに会った我が子に語る心情に読者は涙させられる。
直木賞の『心淋し川』より、こういうちょっと切なくて暖かな人情話のほうが好き。
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人の懐に入っていける力
こんな力をかわれて おおだなの婿に
姑しゅうとめ 小姑 女しか店の主人と認めないうちに
入って 少しずつ周りの人の懐に入っていく。
最後は 謎めいた兄弟の話しも
一気に読めました。
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小さな楊枝屋の四男坊・鈴之助は、相思相愛のお千瀬の生家、大店の仕出屋『逢見屋』にめでたく婿入り。誰もが羨む逆玉婚のつもりが……
「鈴之助、今日からはおまえも、立場上は逢見屋の若主人です。ですが、それはあくまで建前のみ。何事も、最初が肝心ですからね。婿どのにも、しかと伝えておきます」
鈴之助の物問いたげな表情に応えてくれたのは、上座にいる義母のお寿佐であった。
「この逢見屋は代々、女が家を継ぎ、女将として店を差配してきました。つまり、ここにいる大女将と、女将の私、そして若女将のお千瀬が、いわばこの家の主人です」(本文より)
与えられた境遇を受け入れ、商いの切り盛りに思い悩むお千瀬を陰で支える鈴之助。
“婿どの"の秘めた矜持と揺るぎない家族愛は、やがて『逢見屋』に奇跡を呼び起こす……。
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江戸の世に、代々娘が女将を受け継ぐ大店は異例と言えるのではないだろうか。それゆえに起こる理不尽や懊悩もまたあり、ひとりの人間の一生を変えてしまうことにもなりかねない。とは言え、そこを守り通そうとする矜持もまた大切なのである。板挟みになることも多々あり、悩ましい。そんな大店の仕出し屋「逢見屋」に婿入りした鈴之助の日々の物語である。自ら認める頼りない男でありながら、最愛の妻・千勢や家族のことを思い、僅かずつではあるが自らができることを積み重ねるうちに、新しい風となり、逢見屋にも変化が現れているように思われる。夫婦仲好く労わりあっていれば、この先も何とかなると心強くさせてくれる一冊でもある。
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西條氏得意の江戸の人情もの。家族の立ち位置、感情がきめ細かく描かれている。前作の「心淋し川」や「無暁の鈴」が身に沁みただけに少し読み応えがなかった。
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「弱く愚かな者はいる。それより他に生き抜く術がないからだ。」
上に立つ者の心得を説いたセリフにはっとする。
この作者の作品が心地よいのは、懸命なものが報われるだけでなく、弱さや愚かさも否定しないところにあるのかなあと思う。
こちらの作品は、基本的にやわらかな人情譚です。
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すっかり西條さんの作品を好きになっちゃったなぁ。
今回もするすると読めて読後感も良い。
てゆうか、これ漫画化してほしーい☺️
たまたま、2作品続いたのかもしれないけど、この作品もジェンダー的な要素を含んでる。
特に時代物の中に置かれた登場人物達だから、性差の役割はくっきりと描かれているように思う。そこを踏まえて男とは女とはという問いを、押し付けがましくなく読者に示す筆運びが好きだ。
鈴ノ助さんなんて、今の世にめっちゃ求められてる男性像だと思うな