紙の本
鏡の背面
2022/01/12 00:00
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投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
施設の聖母、と尊敬され、思慕されてきた女性が、死後、別人と判明。誰が、何故?
誰が、がわかっても、何故、がなかなかわからない。何故他人になりすますのか?施設の仕事は金銭的にも肉体的にも大変なのに、何故いつまでも留まっているのか?そもそも、なりすましなんて可能なのか?
それらが、圧倒的な筆量で迫ってきた。霊的なことをうまく否定しているし、なりすましも可能だった、と思ってしまう。そして、なんだかゾクッとしてしまう。
口は悪いが頼りになる長島の存在が、大きかった。
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驚異的な献身ぶりから<聖母>と讃えられたNPO運営の老女が焼死。検死の結果、遺体が全く別人と判明する所から始まる物語。私がついつい手に取ってしまう【なりすまし】が題材のサスペンスで犯罪ルポタージュさながらの緻密さと読み応えがある。徐々に明らかとなる女の本性は聖母の実像と乖離し怖気を誘うが、中盤のオカルト路線がある意味で一番恐ろしい。終盤でもう一捻りあるかと期待したが、長丁場(本編630頁超)の割に平坦な着地点に収束してしまった。最後まで充分楽しめたので決して悪くはないけれど、流石にちょっと物足りないです。
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これはホラーか福音か?
640ページの厚い一冊で手に取るのを若干躊躇しましたが、読み始めればスルスルと進みます。
稀代の悪女と聖女の物語ですが、評判と実像は全然違う、という展開を想像していたので、何、そのまんまだったの?と、ちょっぴり肩透かしな感じで終わってしまった。
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202106/骨太長編。オカルト的なとこで途中読むのやめようかなと思ったり、動機がいまいち理解しきれない(そこまですることに納得がいかない)とこもあるけど、読み応えあり、結局一気読みしてしまう面白さ。それにしても自分が認識していると思っていることなんて、ほんと不確かなのだなあと恐ろしくなった…。
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ぐふぁ〜‼︎ 凄いなぁ、篠田さん。641ページ、かなり長いです。壮絶な、息苦しくなる話でしたが、早く早く先を教えて!って思いながら読みました。読み応えたっぷりです。
この作品、沢山の要素がある。
アルコールや薬物依存、性依存、自傷行為といった問題を抱える女性たち。その救済のための施設や関わる人々の現実。悪女、毒婦と言われる女たちの犯罪。苦しむ人につけ込む霊感商法。フィリピンの貧困、麻薬の実態。などなど…全て緻密に描かれている。
しかし、なんといっても、私が興味深かったのは『人が人を認識する』ということの、あやふやさ!
私の好きなマンガ「秘密」(清水玲子)にもあったけど、
『人の見ているものは、その人の感情によって明らかに違う』ということなのです。顔さえも違って見える。
また、見かけだけでなく、その人がどんな性格で、どんな心持ちだったか、周りに対して、どんな人物だったかという感覚や評価というのも、受け取る人によって、まるで違う、ということ。
今作の中でも、ルポライターの長島が取材して書いた長い文章、それを読んだ知佳と優紀の受け止め方がまるで違ったところも印象的でした。
その人がどう生きてるか、何を考えているか、それを他人が推し量ることって、難しいし、永遠にわからないのかもしれないなぁ…なんて考えながら読みました。
ネタバレしたくないので結論には触れませんが、長島の男らしい言い方だと、あまりに身も蓋もない。ある意味、優紀の直感は冴えていたとも言えるが、それが全てではなかった。
何十年にもわたる、長い長い旅をしたような気分で読み終えたのでした‼︎
心に残ったフレーズを、少し。
ーーーーーー
生まれ直すことはできないけど、生き直すことはできる。
悲痛な口調に背筋が強ばった。複雑な家庭も、貧困も、家庭内暴力も、知らずに育った自分に見えていないものが、優紀には見えている。
憎しみを抱いていても、利害関係が鋭く対立していても、好意を示し表面的な友好関係を維持しなければ、食っていくこともままならない過酷な大人の世界に放り込まれる前に、苗床のような環境で、同世代の女同士、ぶつかり合い、励まし合い、傷つけ合い、生身で触れ合い、自分の感情や関係性を処理するための一通りのトレーニングを積むことができた。
信仰など持っていなくても、人は正しく生きていけますよ。自分の意思と判断力で誘惑になど負けずに生きていけます。
自我など普通に思っている以上に脆いものかもしれない。
光は天からなど刺してこない。光は深い深い穴の底のあらゆる不幸の詰まった、泥の底から刺してきて、神の存在を教えてくれる。救いは低いところにこそある。…行動したとき必ず、神様は後押ししてくれる。黙ってお祈りしていてもだめ。なぜなら神様は一番下の、下の、穴の底のあらゆる不幸の詰まった、泥の下にいて、こんな私たちの闘いを見守ってくれているから。
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軽井沢に建つ新アグネス寮。さまざまな事情を抱えた女性たちの社会復帰を目指すその施設で「先生」と慕われ崇められた小野尚子は、火災の中で入居者を助けて亡くなった。
しかし、悲嘆に暮れるスタッフたちに告げられたのは、遺体で見つかった女性は小野尚子ではないという信じがたい一報だった‥。
初めは登場人物を把握したり、出来事を時系列に理解したりするのに苦労したが、気づいたら先へ先へと気が急いて一気に読んだ。
人間の精神の危うさがときに信じられない現象を引き起こす。そしてそこに次々と取り込まれる人々。
終始ミステリアスな空気を醸し出しながらも、大どんでん返しなどはない。ひたすら人間の内面に迫った作品だ。
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読み応えあった。社会派小説家。一度、心を病むと人はなかなかその病から解放されることはない。また、心の動きが人を差配する。難しいテーマをとても丁寧な書き振りで読み手を引っ張っていく。また読んでみたい小説家。
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日本のマザーテレサと言われた女性が入居者を守るために焼死。調べると別人で連続殺人の容疑者だった。タイトル通り他人を真似て生きるうちに、その人の人格以上になっていた。生き直しと言ったらいいのかわからないけど最後の日記には迫力があった。
面白い。
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やっぱり篠田節子さんは凄いわ。作品のスケールがとにかくデカい。それでいながら、細部は蟻の子一匹侵入を許さないような細やかさで、緻密に物語を構成、進行させる。一気読み必至のホームラン的快作。
女性たちが抱える数々の傷や問題、宗教、救済、時にカルトなど、尋常ではまとめ切れないほどのエピソードをひとつの鍋で煮込み、最後は素晴らしい料理に仕立て上げる。今作でも存分に発揮された、その力量と胆力、見識の広さに瞠目するばかり。
ぜひ多くの読者に、篠田節子の作品を読んでほしい。その宇宙の坩堝を覗いて、ともにシノダー(篠田節子さんのファン)になりましょう(笑)……というのは冗談にしても、読んだら高確率でハマる作家さんだと思います。
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途中まではすごく良かった。
ぐんぐん引き込まれて寝不足に。
電車内で夢中になり、2つも駅を降り過ごして遅刻。
こりゃあ面白い!と思っていたけど。
後半、心霊現象のあたりから謎解き部分まで
どんどん無理矢理感が増して行き
ラストはどうにも尻すぼみ…
でもまたこの作家さんの本読んでみようかな。
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心的外傷を負った女性たちが暮らす施設が火事に。
「先生」と慕われるマザーテレサのような小野尚子が死亡した。しかし、遺体は別人だった。
果たして死者は誰なのか。ミステリアスな冒頭から引き込まれ、文庫本641頁もアッという間。
施設代表の優紀とフリーライターの知佳が、「先生」は誰だったのか、本当の小野尚子はどこにと、真相を明かすべく行動を開始する。
そして、小野尚子とは全く異なる生き方をしてきた人物が浮上する。
「人の視覚はカメラと違う。像の中に思いを重ね合わせ、寮の人々は愛情と喪失と悲哀のフィルターを通して」人物を見るというが、果たして異なる顔が同一人物に見えるのだろうか。
さらに、別人格の人間が他人にどこまで同化できるのか。
しかし、そんな疑問も緻密な物語構成によって、違和感なく納得できてしまう。
別人物になり得ることを、著者は題名ともなっている鏡で説明する。
鏡の部屋で見たのは、「正面の鏡に映った自分の姿が背後の鏡にさらに映り込み、無限の像を結ぶ。混乱の中に見えるのは増殖する自意識か、自己と他者の境界の消滅か」と。
「心霊現象とは関わりなく、人は自分でない他人になってしまうことがある」
我々の自我など、思っているよりも脆いものだと、この小説は明かしてくれる。
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前半は面白い
新アグネス寮といわれる社会的弱者の女性たちが住む場所が火事が起き、そこで先生と慕われていた小野尚子が死亡する
しかし、のちの調べで遺体は全くの別人で過去に連続殺人を犯した半田明美であると判明する。調べを進めるうちに、20年以上前から小野先生は半田明美であったことが分かり、施設の職員は混乱する。
何の目的で?いつ入れ替わった?紛れもなく小野先生であり疑わなかった周りの人達
本物の小野尚子はフィリピンで殺害されていた
半田明美がマンションに残したデータから、幼い頃からの家庭環境の悪さから犯罪に至ったことが記されており、小野尚子をそのまま真似ることで自分が洗脳され本来の自分を見失っていったと推測された
2021/08/31 12:03
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『聖母』と『毒婦』の評価を行き来する長い長い検証作業を読み進める中で、そうであってほしい、いやそんなわけない、と自分の中でも二転三転する人物像。疲れるのに読み進めざるを得ない筆力に圧倒される。
読了後、ふと、ここまで長い必要があったのか?という疑問が湧き、でもどこをどう割愛出来るのか?と考えても答えは浮かばない。
内面であるはずの『良心』とは、外面である言動を真似ることで獲得できるものなのか?
不思議な物語に出会った。
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古本屋が好きです。
こう言うと、「著者に還元されないので本屋で買うべき」と、お叱りを受けそうですが、好きなんです。
この本はなんだろう?
ああ、この作者のものを一度読んでみたかったんだ。
なんだこのタイトルは?
などなど、玉石混合の宝箱を開けているような気分になって楽しいです。
売れ筋を押している書店とは違うラインナップが楽しめて、しかも、実際に手に取って見ることができます。
とはいえ、最近は某チェーン店の古本屋ばかりで個性が無くて寂しいですが……。
本書もなんとなく入った古本屋で、なんとなく手に取った一冊。
篠田節子さん。
恥ずかしながら、知らない作家さんでした。
聞いたことある過去の作品は「女たちのジハード」で直木賞受賞。
知っているような、知らないような……。
「鏡の背面」という意味深なタイトル。
600ページを超える長編サスペンス。
なにより裏表紙のあらすじに惹かれました。
薬物やDV などで社会的弱者となり居場所を失くしてしまった女性たちの最後の受け皿であるシェルター。
そこで「先生」と慕われていた日本のマザーテレサというべき女性が、事故によって焼死。
しかし、その女性は検視の結果まったくの別人と判明する。
いったい誰が? 何故? いつから?
怖かったです。
むかし読んだ宮部みゆきさんの「火車」を彷彿させるようなサスペンス。
主要登場人物は女性ばかりですが、ただ一人の主要男性キャラの長嶋が良い味出してます。
やはり男性と女性は違う生き物なんだなぁと、妙に感心しました。
600ページを超える長さですが、あまり長さを感じずに読了。
ただひとつ残念なのは、あとになれば必ず出てくるだろうと思われた、意味深な言葉を残して共に焼死した盲目の看護婦スタッフの話が、ほとんど出なかったこと。
そのスタッフ目線の話が欲しかったな。
とはいえ、掘り出し物でした。
吉川英治文学賞受賞作。
こういう意外な出会いがあるから古本屋の散策は楽しい。
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長かった。すごく深いテーマだし、聖女なのか悪女なのかという謎には引き込まれたけど、展開が冗長に感じて疲れてしまった。途中ホラー的なポイントは、さすが篠田さんでゾクゾクと怖かった。オカルト的な人たちが出てきたところは、こういうのって本当に女性は弱い。私もめちゃくちゃ信じちゃった。長嶋さんみたいな超現実的で論理的で修羅場を潜ってきた人がいて安心した。私も長嶋さんに危ない所を救われた感(^^;
ラストは私に全く理解できなかったので、どういう事?みたいな。ただ、強すぎる女だったんだろうなという事は分かった。