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はたから見ると、仕事もプライベートも充実しているように見える主人公。心の中はいつもクールで冷めている。いつもクールに自分自身を見つめる主人公の思考回路に共感を覚えた。
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金原さんが学生の頃、受賞した頃から作品を読んでいて。
今風の言い方をすれば、かなりクセの強い作家さんだなーという印象を持って、その後に出される作品も、かなり人を選ぶ作品だよなーと思っていたけれど、「マザーズ」あたりから、彼女特有の世界観を大切にしながらも、より多くの人に受け入れられる作品が増えてきたんじゃないかと思う。読者である自分の変化もあるかもしれないけれど、金原さん自身が、結婚して子どもを持ったことが大きいんじゃないかな。
この作品は、文体もまどろっこしくなくて、読みやすくなったように感じたし、そのためか、生きるということに対する彼女なりの価値観が、理解できたかどうかは別として、ひしひしと伝わってきました。
作品の背景には、高校時代の同棲相手がずーっといて、解説ではそれを「毒」と表現してます。わたしは、解説の「毒」とはもう少し異なるものを「毒」と捉えていて。それを説明すると、以下のような感じになります。
この本のタイトルになっている軽薄さ、それが彼女の人間性であって、けれどそれがストーカーによって形成されたものなのか、生まれつきのものなのか、そこまで深くは言及されていません。
おそらく、ストーカー事件以前に、ストーカー気質の男性を愛してしまうという、彼女の中にある根深さが、本当の「毒」なのではないかと思います。
きっと誰もが持っているその毒を、どう処理していくのか。彼女はいったん、結婚という方法で解毒しようとしたけれど、結局それは封印にしかなっていなくて、封印はきっと、大切に取って置いてるのと変わらないのだろう。これからは、弘斗がきっと、解毒してくれるだろう。いや、中和かな?個人的には、心の穴を埋める(=この作品で言うと解毒)なんてことは不可能だと思っているので、彼女に巣食っていたその毒を少しでもなくしてあげること(=中和)が、現在の彼女の救いになる気がしました。
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当たり前になった人生から道をそれたくなる。それを望んでいたのかといえばそうとも言えない。「軽薄」という言葉が表現しようのない渇望の力学を表現していて、ずっしりと重く響く。
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感性豊かだからこそ感じてしまう不幸せと、狭い視野や了見の中で鈍感な幸せのどちらが人生豊かと言えるか。
題名通り軽薄なのは主人公なのかそれとも平凡な我々なのか?読者に対するアンチテーゼを投げかけているようにさえ思えた。
官能小説のような表現が強すぎ。そんな必要があったのかちょっと違和感を覚えるが…
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主人公の恋愛模様がだらだらと続いていく。あまり変化がなく先に進まない感じ。
後半は少し動く感じがあり楽しい。軽薄ってタイトルがじわじわとくる。
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29歳のカナと19歳の甥との不倫の物語。
カナは過去に恋人にストーカーされ刺されている。一方甥は、過去に想いを寄せていた人に暴力事件を起こしていた。(甥の出来事については終盤で明かされる)
被害者と加害者という立場で表すなら、被害者凹、加害者凸という感じであろう。 「何か、心にぽっかり穴が開いている感じがするの。だからそれを埋められるような何かが欲しいかな」
こう、カナは甥に対して話していた。
甥は暴力事件に関して、なぜ殺そうと思ったのかと問われれば、「そうしなきゃいけなかったんだ」「カナさんも、刺されなきゃいけなかったんでしょ」とお互いに過去の出来事に必然性を感じているのだと思った。(ここの引用は甥の発言のみであるが)
カナはある時期から自発的な感情を持たずに生きていた。
友達からは「あらゆるものに支配的に関わっているように見えるよ。」と言われている。
支配するということは、少し高みにいるのではないだろうか。高みにいれば、自分の感情を揺さぶられることはないだろう。
あらゆるものに支配的というのは、あらゆるものに対等に向き合っていないとも捉えられると思う。
向き合わない軽薄さの上に築きあげた日常や人間関係で上手くやりすごしていたが、甥の登場で軽薄という根底と向き合うこととなった。
終盤で小学校低学年の頃の夏祭りの回想が入る。
甥が風鈴をプレゼントしてくれたときに、夏祭りで心惹かれた風鈴を何故か両親に欲しいと言い出せなかったという過去を思い出したのだ。
「あの風鈴を手に入れられなかったあの夜からずっと、何かを喪失し続けてきたのかもしれない。」と語る。
風鈴に関してはあの夏祭り以来欲しいと思うことがなく、プレゼントされたことにより急に思い出されたため、甥が時を超えてプレゼントをしてくれたと考えるのはすこし薄っぺらい気もするが。
欲しいという欲求は自発的な感情であり、その感情を時を超えて満たしてくれる人が現れたと考えるとおもしろいなと思った。
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アメリカから帰国し久々に会った10歳下の甥っ子に求められ始まった関係。背徳的で魅力的。10歳下の男というだけじゃなくて、甥っ子ってところに背徳感が満ち満ちる。その背徳が蜜の味で、そんな描写のところばかりを読んでいた気がする。会話がダラダラ続くこともなく、三人称で描写がしっかり書かれているちゃんとした小説。
主人公には息子もいて、そこかしこに叔母や息子をもつ母の心情が描かれていたりして、そこがまたムードをあおる。それだけでも十分だと思うけど、甥っ子には実は影があり……。
「軽薄」とは何をいっているのだろう。どことなく何事にも一枚膜を隔てているような主人公のスタンスをいうのか、それとも社会のモラルや何となくステレオタイプに反応してしまう一般的なものに対して軽薄ということじゃないかと思った。後者だとしたら、そういう軽薄はそれでいい。そういったものへのなじまなさが二人を近づけたようにも思う。
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はじめての金原ひとみ。
様々境遇が異なり、年は30歳と近いのに主人公カナには共感し難い部分が多かった。酒、男、薬がアイデンテティの柱。10代からそういうものに触れ、19で男に刺され、その後海外に渡り、才能が花開き仕事も成熟。稼げるまともな男と結婚し家庭を築く。ここまででも情報の洪水なのに、8歳の息子を抱えながら、10歳下の甥と不倫。あまりに私にとっては非現実的で入りこめない。
しかし、この物語の本質はそういった主人公の波乱万丈なアレコレについてではない。言葉にしてしまうと、イメージやネタ性が先回って情報洪水を起こすし、実際にも読みながら戸惑い、混乱していたが。
あとがきを読んで、それまで続いたモヤモヤがスッと消化され始めた気がした。カナは他人からは理解され難い、違う世界、つまり海底を生きていたのだ。たぶん、誰かに心から愛されたい、それ以上に、誰かを心から愛したい。しかし過去の傷や、地上でのしがらみ、モラルなどから、なかなか人と本気で向き合えない、愛せない。身体的な性愛によってやっと呼吸をする。常識がないから、ビッチだから、タブーを犯した女だから、と曇ったメガネ越しに彼女を軽蔑することは簡単だが、この境遇でしか発達し得ない彼女の思考に一度寄り添ってみると面白い。
同様のテーマの他の小説と異なる部分は、カナには度胸があり、強い意思を持って、愛を貫こうとする姿勢に見られるのではないかと思った。つまり、ただもののメンヘラではないのだ。
刺す男はおかしいし、刺される女もおかしい。だけどそこには彼らなりの関係性、秩序があり、一般常識では理解し難いストーリーがある。刺されるべくして刺される。精神的異常では片付けられない。
また、男性の持つ執着性、暴力性、それらは犯罪として明るみにでることで他人の注目を集めるが、実際には多くの世のカップルにいびつな関係性をもたらしているのかもしれない。
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破滅的。
主人公が不倫をしたとか誰が好きなのかとかの筋が軸ではもちろんない。精神世界の話。共感できないのはこの際別にいいんだけど、結局どこに向かうのかわからないという点で主人公の生き方から何も得ないまま終わった。
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最初は金原ひとみらしくない進み方で進んでいくなあと思ったけど、やっぱり金原ひとみは金原ひとみだった、狂気に満ちていた
でも最後にはそんな狂気が世界で一番美しく正しいものとして存在していて、自分の信じている模範とやらものに恥ずかしさすら感じました
にしても読み疲れた…
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既婚子持ちの女性が甥と情事に落ちる物語。
以下は小説を読んだ気付き。
倫理的に駄目な人を好きになる人は本能的にそれを繰り返してしまう。
それで自己嫌悪に落ちるようでは元も子もないのだが、その事実を受け入れることが出来るのであれば、器用に生きることが出来る。
どんな人を好きにならなければならないかという悩みは、結果として被る不利益(死ぬことさえ含む)をそれと感じないことで昇華させられる。
以下は2作品を読んだ著者に対する印象。
アングラな世界を織り交ぜてくるが、アングラに違和感を感じさせない、むしろ織り交ぜることで描く世界のバランスを絶妙に保っている。そしてそれを人の心の脆く儚い部分を婉曲的かつ精緻に描く手段に使っている。
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すごくよかった。
狂気に満ちている世界がどれほどの精力を持っているかがよくわかる。
一度あんな狂った恋愛をしたら何もかもつまらなくなるだろう。
2人の中の「ただしい」を全うすると法の下で罰される。
2人の中の世界だと、刺される方が罰されるべきだから刺されたのだ。
俗に言う「正義とは」みたいなものか。そんな簡単に片付けて欲しくないけど。
人間誰しも狂ったように何かに熱中していないとおかしくなるんだろう、生き続けることが辛くなるだろう。楽しさとか幸せを重ねて退屈に暮らしているのだ。変なの。
それにしても全て成功しているのに満たされずに感じない姿は、少しわかる。私が大人になったからかな。
全てを擲ってでも捧げたいと思えるものに出会うと言うことの尊さを知った。
正しい愛ってなんだ・?
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救いがないと思った。
頭を鈍器で殴られたようなショックを受けた。
たとえ、自らの軽薄さが招いた事態だとしても、カナがなぜここまで弘斗に寄り添うのか?
ここまで全てを失わなければならないのか?
ひどく気分が落ち込んだ。
が、しかし…
愛があるなら、この結末はありなのか。
金原さん、すごいな。
圧倒的に心を揺さぶってくる。
キレキレで「ぼーっと生きてんじゃねぇよ。お前生温いよ」って、説教されている気分です。
・叔姪婚(しゅくてつこん)って言葉を初めて知った。日本では叔母と甥は結婚できない…って知らなかった。従兄弟同士は結婚できるのに。
ー 人生とはただの暇つぶしでしかなく、人が生まれてから死ぬまでにする全ての事が暇つぶしであるという事実から目を逸らすための現実逃避の手段が、人生に意味や目標を見いだすという行為なのではないかと思ってしまう。
ー 小説などで目にした事のある行為、母親が乳幼児の性器を口に含むといった行為
←この小説って、コインロッカー・ベイビーズ(村上龍)の出だしだ!高校生の時読んで衝撃的だったから覚えている。
やっぱり金原さんは龍さんの影響受けているよね。
ー 結局、不倫なんてヤレる状況でヤリたいと思ったら最後、ヤルしかないのだ。そしてヤッたが最後、よっぽど状況が大きく変わったり、周囲にばれたりしない限り、だらだらとヤリ続けるしかないのだ。
←すごいリアル。そんなものなんだろうね。
若いひとは受け入れたくないかもしれないけど。
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面白かった~~~~
いきなり19歳の甥に押し倒されるところから始まってびっくりした(笑)
結構事件性があるストーリーなので、ハラハラしながら読んだ。
ストーリーもイイけど、やっぱり私は金原さんの世の中の見方が結構好き。
たまに、本当に些細なところで「あっそれわかる」ってなるのが楽しい。
今回だと「私は我が子がゴールを決めると狂喜乱舞する教に入信していないだけで、それと愛情は全く関係ないものだ」って一節に爆笑しながら「わかるよ!」ってなった。
人生の教訓とか教養を求めて読むというよりも、心地よくASMR動画を見ているような感覚というか……
そんな感じ。
好き。
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読むのは2冊目の金原ひとみ作品。1冊目だった「アミービック」は1人の女性の極端な愛情からくる不安定さのようなものを描いていたけれど、この作品もまたそのような要素があったように思う。不安定さというよりは、無感動と身勝手さのような要素が強めだったけれど。
スタイリストのカナは29歳。10代の頃にした恋愛の果てに、カナに執着する相手から包丁で刺された経験を持つ。
その後その記憶から逃れるようにして留学からの海外生活を経て、15歳上の夫と結婚して一男を得、日本に居を移してからも安定した暮らしをしていた。
そんなある日、海外で暮らしていた姉家族が帰国する。19歳になった甥っ子はすっかり男になっていて、カナを愛し、執着し始める。
10歳下の甥っ子との恋愛。小説としてはありそうなテーマだし、もしかしたら現実にもあるのかも知れない。
だけどこの小説は一筋縄ではいかず、美しい恋愛の世界ではなく、肉欲にまみれたドロドロとしたもので、それが愛なのかただの欲望なのかが初めは分からない。禁じられた関係だからこそ燃えるのか、それとも…。
最初はさらっとカナの身体だけを求めているように見えた甥の弘斗の、奥底に隠された強い執着と過去が明かされた瞬間に背筋がぞわっとした。
カナが元々無感動な人間で心から人を愛することも無いからこそ、かつての恋人や甥の弘斗のような男から執着されて一緒に堕ちてしまうのだろうかと考えたりした。
愛さなくてもともに生きていける相手(カナからするとカナの夫)となら平穏にうまくやっていけるのに、愛してしまうと何もかもが狂い始めてしまう。
カナの心情は過去のことも含め解るところもあるのだけど、最後に出した答えは理解はしきれなかった。例えば親しい友人がそういう結論を出したとしたら、本当に?と何回か聞いたあとに恐らく一度は止めるだろうと思う(止めても意味がないと分かりながらも)。
という部分も含め、解るけれど解らない、置いていかれたような感覚に陥る作品だった。
性描写が非常にいやらしい作品でもありました(褒め言葉です)。