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紙の本
環境の変化のなかでの子供の「力」
2008/05/25 20:14
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
平田オリザは、劇団青年団を主宰する演出家・劇作家だが、演劇のワークショップばかりでなく、学校の国語教材で「対話」を考える項目を執筆し、自らモデルティーチングもする、教育者でもある(付言すれば、阪大の先生でもある)。平田オリザが編んだ本書は、そうした教育者としての考えたよく示され、同時に、価値観の多様性という口で言うのはやさしくも実現したりそうした状況を受け入れることはたいへん難しい理念を、執筆者のバリエーションによってクリアした、「古き貧しき学校教育の規範」を乗り越えていく力強いメッセージとなっている。
たとえば平田は、「はじめに」で次のような現状認識を示す。
《 子どもの数が少なくなっていることも、大きな社会の変化です。この点も、私を含めて、まだいまの大人たちは、きちんと事態を認識してはいないように思います。/表現やコミュニケーションについての教育に関わっていると、いまの若い世代は、表現力が低下しているのではなく、他者に向かって表現する機会が少ないのではないかと感じます。私はよくこれを「単語でしゃべる子どもたち」という言葉で説明します。〔略〕本来、コミュニケーション能力=伝える技術というものは、伝えたいという気持ちがなければ身につくものではありません。そして、その伝えたいという気持ちは、伝わらないという経験からしか生まれてこないはずです。/しかし、いまの子どもたちには、この伝わらないという経験が、絶対的に不足している。自分のことを知らない、価値観も人生観もまったく違う他者との出会いが、決定的に不足しているのだと思います。/この点、厳しい競争社会の中で育った私たちの世代と、いまの少子化世代とでは、育つ環境事態が大きく違うのだということを、大人のほうがきちんと認識していかなければならないでしょう。》
これもまた、いわれてみればしごく当然のことではある。パソコンや携帯電話をはじめとして、目に見えるかたちでも日常生活に大きな変化がある上に、不可視あるいは見えにくいところでは、社会の構造的変化や技術革新に陰に陽に影響されながら、実のドラスティックな変化が起きているのだといってすらいいのだと思う。その中で、親と子が関係を築いていくこともまた、「従来通り」ではうまくいかないというのは道理だろう。
本書は、こうした、頭では分かるものの、直面する現実にあって、なかなかうまく対応ができない親子関係について、上のメッセージを、具体的かつ実に多様な(しかも移植の!)経験談を並べることで、実感しやすいものとすることで、すぐれて実用的な書物となっているといえる。
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