投稿元:
レビューを見る
高校の漫画研究会で文化祭に向けた同人誌を作成することになった鷹代航。「2人の中身が入れ替わるやつ」という等々力のアイデアを聞いたその日、自転車置き場で倒れた男を助けようとしたところ頭を殴られ、意識を失った。目を覚ますと、体が63歳の祖父の章吾のものだった。逆に章吾は17歳の航となり、学校に通い始める。そんな中、祖父を襲ったと思われる疑わしい人物が浮かび上がってくるのだが…。
入れ替わり物であるが、SFやファンタジーと言うほど仕組みを説明するでもなく、入れ替わり以外の部分は普通に日常である。
メインは航になった章吾が高校生活を謳歌し、漫研で活躍し、というストーリーである。逆に章吾になった航は、コンビニでアルバイトをするくらいで、これと行った変化も無し。家においてもさっさとややこしいところをすっ飛ばして、航と章吾が部屋で話すという、ロールプレイングゲーム並みにこまりそうなところを省略するという話だ。
そう、どうやら作者はゲーム会社のシナリオライターのようで、完全に高校生の話しか書かない、いや、書けないのだろうと思われる。
一方で、オリジナルから改題したタイトルでわかるとおり(?)、「俺」と「オレ」で書き分けるというルールで書かれている。そう、書かれているのだが、1割位までそのルールが明らかにされないし、章分けで「航」「章吾」と分けられている、はずなのだが、「航vs章吾」と混ざる部分も有る。
困ったことに、17歳と63歳の書き分け、特に情景の違いや言葉遣いという部分が満足になされていないため、早い話が最初っからどっちの視点?というのを意識しないと読めず、常に意識がストーリー外でふわふわと俯瞰し続けるという、なかなかに不愉快な読み心地であった。困ったらLINEに逃げるというのもどうしたものか。
また、せっかく17歳が老人(63歳だけど)の社会に入り、老人の良さ、老人界で活躍するなどという部分も全く無く、おそらく作者の想像の範囲内に、63歳の生活が入ってこないのだろうと思われた。
描きたいことはわかるが、全体に取材不足、練り不足にくわえ、意図的にか無意識にか、主語や目的語をすっ飛ばしたり文章が文章の体をなしていないため、「連いていった」という文章に「誰が?」「誰に?」となる部分も多々有る。
ゲームのプロットなら、周りの人が「多分こうだよね」とフォローしてくれるのだろう。でも、小説家には向いてないんじゃないですか?