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まどろっこしいし長いしで、読むのに時間がかかってしまったがやはり面白い!後半は壮大な世界観に没入してハラハラした。
数百年ごとに繰り返される〈季節〉という天変地異をどう生き延びるのか?
強大な力を持つオロジェンである母と、オロジェンを憎むあまり弟を殴り殺した父の間で板挟みになるナッスンが、悲しみを背負いながら成長する姿に胸を打たれる。
これまでは地殻変動やプレートの動きなど地中深くのエネルギーを利用してきたけど、今作からは空の話も加わり俄然SF要素が増して神秘的。
三部作がどんな結末を迎えるのか楽しみ!
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地球のようで地球ではない所。能力が異なる人の住む所。
大き過ぎる能力が差別を生み排斥を行う。それぞれの生きる場所を求めて身体も心も彷徨う。戦いの終わりは来るのだろうか、この星は安全に安心して暮らせるところになるのだろうか
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地下都市カストリマでかつての師・アラバスターと思わぬ再会を果たしたエッスンは、月とオベリスク、そしてオロジェニーにまつわる秘密を明かされる。一方、娘のナッスンは父に連れられ、発現したオロジェニーを"治してくれる"という施設〈見出された月〉に辿り着く。そこで出会ったのは、エッスンがサイアナイトと呼ばれた時代の彼女の守護者・シャファだった。エッスンとナッスンの母娘は異なる場所で、それぞれ新たな生き方に適合していく。オロジェンと非オロジェンが共存するカストリマという共同体に受け入れられたエッスンは、アラバスターの望みどおりオベリスクを操って〈季節〉を終わらせることができるのか。〈破壊された地球〉三部作の第二作。
今すぐ続きが読みたい……!一応ひと段落ついてはいるけど、やはり三部作の二作目なので途中感がすごい……!読み終わった瞬間から来年の最終巻が楽しみだ。
前作『第五の季節』の引きから、エッスンとナッスンは合流するのだろうと予想していたが裏切られた。しかもナッスンに手を差し伸べるのがよりによってシャファって。
ナッスン視点で見る母としてのエッスンはなかなか衝撃的で、かつて自分がシャファから受けた虐待行為と同じ暴力を、「強いオロジェニーを持つ者への教育として」ナッスンに奮っていたことが明らかになる。ナッスンはそれがシャファからエッスンに引き継がれたものと知らず、母には反発心を持ち、人が変わったシャファに懐いている。更には、同じく〈愛〉を名目にしてナッスンもシャファに暴力を奮いそうになるという、DV被害と加害の連鎖がストーリーに組み込まれていてエゲツない。正直、ナッスンのパートは読んでて気が沈むのだが、大人の都合に翻弄され続けた子どもがヴィラン/ダークヒーロー(どっちに転ぶかまだわからない)として覚醒するのはカタルシスがあった。
対するエッスンパート。今作中にカストリマを離れなかったのは意外だったが、読み終わってみると「コミュニティの一員になること」がエッスンにとって重要だったのだとわかる。
私は今回カストリマの長・イッカのことが大好きになった。エッスンから見ればたいした理想主義者なのだが、生まれも育ちもカストリマのイッカにとってスティル(非オロジェン)とオロジェンの共存は当たり前。非常時にも揺らがないその信念によって共同体が持ちこたえてきたという事実を目の当たりにし、だんだんとエッスンも感化されていくのがよかった。その上で投票箱を塵にするエッスン。最高。
世界観の謎も掘り下げられてきた。前作を読んで考えていた以上に『宝石の国』や『天空の城ラピュタ』に近しい鉱物ファンタジーの世界だったのでとても嬉しい。カストリマという地下要塞が抱える秘密は、『アンダーランド』(2021/7/1読了)で紹介されていた、放射性廃棄物の在り処を未来まで語り継ぐ神話が求められているという話を思い起こさせる。スティルネス世界の伝承学者もこれから活躍があるかな。それか、ホアがこの話の語り手である意味として回収されるのかも。
また、前作で完全に謎の存在だった石喰いの素性も少しずつ明らかに。アラバスターはエッスンのモチベになると同時に石喰い周りの設定開���の犠牲になっており、作者に愛されているな…としみじみした。新たな謎は、地球の裏側には機械文明が残っているみたいだけど、その動力は電気じゃなくアラバスターの言う〈魔法〉だったのかな?とすると、〈季節〉以前の世界は魔法使いとそれ以外、というハリー・ポッター的世界観で、今の我々が暮らすのともまた違う地球の話ってこと?という辺り。〈魔法〉のひと言でジャンルのはざまを強引にダッシュしていく感じは気持ちよく、個人的には好き。
差別の構造や暴力の連鎖を引き起こす心理などを、異能力者の設定を使ってファンタジーの世界に落とし込むのは上手いシリーズだと思う。特に話を単純化せず、主人公エッスンすらたやすく共感・同情できるようなキャラクターではないにもかかわらず、ぐいぐい物語に引き込むのはやはり凄い。感情が大きく揺れ動く場面の描き方に独特のパワーがあり、それが感情の起伏が大地や大気に作用を及ぼしてしまうオロジェンのリアリティに強い説得力を与えている。作者は自分の強みをはっきりとわかっている人なのだなと思う。
一方で、本当にこれ最終巻でちゃんと回収されるのかな、と不安な要素もちらほら。月と地球の関係、そして地球の悪意(?)を前提に進んでいく話は今のところかなりスピリチュアルな印象だけど、すっきりと説明されるのかな。ワクワクしてもいるし、ガッカリしたくないという思いもある(笑)。
あ、最後に訳文について。今回、イッカを含め大人の女性キャラが多く登場するのだけど、女ことば一辺倒でもなく、(長や武人だからといって)"男勝り"一辺倒でもなく、自然な会話口調で訳されていたのがとてもよかった。訳者の小野田和子さんのセンスに感謝です。とにかく次巻も待ち遠しい。
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店頭に並んでいる時は気づかず、新刊案内を読んで第五の季節の続きだったか!と慌てて本屋に行きました。久々に早く読み終えたいけど、読み終えてしまうのが勿体ない…と言う贅沢な感覚を味わいました。続巻も楽しみ~
それにしても娘は母親に対するあたりが厳しいもんだなぁと思いました。父親に対しては…なんだろう、諦め?みたいなものがあるのかな。同じことをしても父親なら責めないのに母親がしたら一生恨む、みたいな強い感情を母娘には感じます。これは父息子でも同じなんだろうか?それでも作中でナッスンが「彼等を受け入れてくれる人を父親にして生んでくれたら良かった」と言うような心境を語るので、やはり母とのつながりの方が(良し悪しは置いておいて)強いんだなぁと思いました。
そして彼女の好きな人を喜ばせたいが高じた行動の恐ろしさと言ったら。昔、アフリカだか中東だかの本を読んだときに、少年兵が一番恐ろしい、何故なら彼等は無垢で一途で、敵とみなしたものに対する慈悲の心など持たない、みたいな事がかかれていたのですがそれを思い出しました。教育は洗脳とイコールだよな、と改めて思いました…
皮肉屋で人付き合いのヘタなアラバスターが好きだったので色々寂しいですが最終巻楽しみです。石食いの正体とかも分かるのかな~
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『第五の季節』の続編ということで。
続編というか、上・中・下の中巻といった感じ。
三部作にしてすべてヒューゴー賞というのがすごいけど、ヒューゴー賞ってファン投票なので、まあ客観性が欠如する時もあるのかもしれない。
★3にしたのは、『第五の季節』ほどの衝撃はなかったから。
この作品では物語はエッスンとナッスンの二人を主軸として語られる。前作では3つの物語が交差していったが、今作は2つだ。
前作ではその3つの物語が終盤で収束していき最後驚きの伏線の回収があったが、今回はそういったことはない。前回ほどでは、と思わせる理由はそのあたりが要因かな。
一つは、ホアがなぜ語り手として居続けるのかがわからない。少なくとも今作では解明されなかった。三作目で判明するのか、一作目でのラストの驚きがすべてなのか。
もし前者ならやっぱり一作品の上・中・下にすべきだったのではと思うし、後者なら、うーん、別作品なんだから変えた方が良かったような。あまり意味を感じない上、途中のホア失踪時には破綻しているし。
また一つは、前作では大きく感じた物語が、今作では少し必要以上に大仰な印象。SFというよりファンタジーになってしまった。
結局オベリスクが何なのか今ひとつわからない。ネットワークって何だろう。具体的な説明より抽象的な表現で物語が語られるので、なんだかもやもやが残る。初めからファンタジーを求めていれば問題ないのかもしれないけれど、私が求めているのはSFなのだ。
一年後、一応三作目も買って読むとは思うが、この分だとがっかりしそうな気がしなくもない。
せっかく出会ったと思ったんだけどなー。
作者が女性と知って、すごい! と最初は思ったが(多くの優れたSFは男性によって生み出されている。残念なことに)、ファンタジー要素をより感じる今は納得。
そうだ、これは女性的な作品だ。
ヒューゴー賞に疑問を抱くことになった初めての例。
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石や土に力をもらう、そのパワーを利用する異能の話といえば、往年のマキャフリー『クリスタルシンガー』から少年ジャンプ+連載中の『アラガネの子』までいろいろありますが…ロマンですよねえ! しかしこの物語の壮大さよ。
地球の気候が荒れ狂い、異能者たちの力を借りて必死で生きてる人類が描かれる3部作で、前作ラストではこの災厄の理由が明らかになり(子ども、大人、中年の3人の女性のバラバラなストーリーがよりあわされていく見事さよ)、「中」にあたる今作は母と娘それぞれが自分の能力を確立して行くさまが主題。
母エッスンに、その元師匠兼恋人で最高の能力を持つ性格破綻者アラバスターに、能力者たちを管理する役割でありながら荒ぶってしまうジャファに、惹かれずにはいられない、堂々たるキャラ造形。娘のナッスンもいじらしい。
そして勝山海百合さんの解説を読んで、遅まきながらこの作品が、黒人女性である作者が「搾取者と非搾取者」を投影したものであると知る…意識低くてごめんなさい…。『地下鉄道』も読んだのに。
しかしまあ、それわからなくてもおはなしとして本当に面白いのだ。ヒューゴー賞3年連続受賞という前人未到の記録に輝く最終作の刊行が楽しみ!
あ、訳も秀逸で、「地覚」とかfxxkの意味で使われる「錆び〜」といった創作語も良き
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この世界のメンバーの姿がより詳しく掘り下げられているけど、それぞれの勢力の中でも目的が異なる人(?)々が居て、全貌が把握しきれない。各勢力の相関図とか誰か作ってくれてないかな。
今年出る予定の3巻は何月なのかな
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思わせぶりーふすぎ。
難解風な会話を楽しめるならいいかもだけもど、無駄に長いだけと感じてしまう。かいつまんで読んでもストーリー追えるから、きっとそう。
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『第五の季節』は旅の物語だったが、一転してコムに定住していくことになる。エッスンが地下都市カストリマで出会う女長イッカとの対比がおもしろい。エッスンは夫・娘に逃げられ、旅のお供は石喰いホア一人だけ、生きる目的は娘に再会すること。一方イッカはオロジェンであるのに関わらずコムを存続させるために仲間とともに力強く生きて行っている。その違いはエッスンの強力すぎるオロジェニー能力と虐げ続けた人生に起因すると思います。本当は普通の家庭を築きたかっただけなのに、オロジェニー能力が高すぎるためとフルクラムでの洗脳に近い教育を受けてきたため地球の存続の鍵を握る人物なってしまう悲しい人生がひしひしと読み取れます。
地球が滅亡するか復活するか、地球上のあらゆる生き物にはどちらを選ぶかという意志は無いように思います。地球自身も決めかねている、滅亡したほうが良いのか存続したほうが良いのかを。だから石喰いのメッセージも受け取るオロジェンによって受け取り方に違いがでてきているのだろう。地球の存亡を決めることができるのはエッスンとナッスンのみ、ここにも二人が究極の孤独感を感じなければならない理由があります。
最後の戦闘シーンは前作『第五の季節』をはるかに越えるスケールがものすごい。想像力を最大に発揮して、その美しく残酷な物語に浸ることができるのは大変幸せだ。
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第五の季節の第二部である。
前作を読んでから、読むのが良い。
解説を読んで納得したが、
SFだが、SFでは無い人類の歴史の一部を知るキッカケになるお話だった。
次が気になる展開で、あっさりとまさかの事象も起きて、早く最後の第三部が読みたくて仕方ない。