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城山三郎のそうか、もう君はいないのかを読みました。城山三郎が自分の妻との出会い、新婚時代、子育ての時代、そして別れまでを書いたエッセイでした。城山三郎の奥さんに対する愛情がにじみ出してくる文章を読んで、こういう夫婦だったらいいなあ、と思ってしまいました。ふと、亡くなった奥さんに話しかけようとしてしまい、それに気づいてもなお、奥さんに「そうか、もう君はいないのか」と話しかけてしまう、というくだりが心を打つのでした。
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2007年に亡くなった城山三郎の遺稿をまとめた本。
2000年に最愛の奥様を亡くしてからの城山は、自宅に戻れず、ワインを飲みながら職場で暮らす、抜け殻のような生活だったという。そんな生活の中で、綴った亡き奥様への愛の叫び。出会いから亡くなるまでが薄い本の中に描かれていて、その中に一貫して流れる奥様への愛情。その奥様はすでにいないという現実との葛藤。
こんなにも愛せること自体が幸福だ。こんなにも愛されることが幸福だ。
徹底的に取材をして、真実をえぐり出すような城山の小説は、奥様への愛情から発したものだった。奥様に愛されているという安全地帯からの挑戦だった。
どんなに愛し合った夫婦も同時に死ぬことはできない。最後はどちらかが、一人になる。
しかし、最後の7年間、城山の心には間違いなく、奥様が生きていた。
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城山さんの作品はまったく読んだことがないのだけれど、タイトルと帯に惹かれて購入。晩年についてのエッセイと思ったら予想外に出会いや新婚の頃からの思い出も綴られており、奥様への穏やかで深い愛情が感じられて読んでいてたいへん心地が良い。その分だけ、残された悲哀がしみじみ静かに迫ってきます。お嬢さんによる補足の文章と、児玉清さんの解説もしみじみ。近しい人を見送ったことのある人には、読む薬になる一冊。悲しいけれど読後感は至極爽やかです。
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「五十億の中で ただ一人『おい』と呼べるおまえ」
天真爛漫。末尾の解説で児玉清がその言葉で表現しているが、まさにぴったりの言葉だ。
城山三郎の妻はとても愛らしい。その妻を心から愛する城山。一遍の夫婦愛物語である。
情景描写も上手く、自分に同化できるので、妻を亡くしたことを想像すると涙が止まらない。
死後に発見された原稿を編集者がまとめたというが、かなりの腕前であると思う。
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経済小説家としての城山三郎には、戦争を経験した反骨の昭和の男、頑なまでに体制におもねることなく、民衆の視線を貫き通した頑固さを感じていた。本書には奥様への出会いから晩年にいたるまで、城山三郎の不器用さとやさしい眼差しが溢れていました。
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天から舞い降りた妖精のような妻との出会い。結婚し、大学で教鞭をとりながら作家を目指す日々。文筆に専念するようになってからの取材旅行。妻の病気と入院、かけがえのない人との最後の日々。
妻と共に歩んできた日々が描かれた作品は、清々しい、静かな何かを心に残した。
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城山さんの作品はこれが初めて。
黒木亮さんの『リスクは金なり』を読んで城山さんのことが
紹介されていたので、本屋で物色。
あえて小説から読まなかったのにはそれなりに理由がある。
くしくも解説で児玉清さんが書いているような理由で。
今朝、早朝MTGの開始まで少し間があったので、読んでいて、
最期のシーンにさしかかったところで思わず涙が出そうになりました。
結婚して8年目。30超えたあたりから(いや高校生の頃からか)、
徐々に現実味を帯びてくる死。
小説とかほとんど読まないので、こんな作品がほかにあるのかは
知らないですが、一読お勧めします。
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城山三郎さんが亡くなった妻との出会いから別れを書いた一冊。淡々とした文章だが、城山三郎さんの妻に対する愛が伝わってくる。当事者でもないのに、妻を亡くなったときの喪失感を感じてしまうぐらいな文章。こんなに人を愛せたら、愛されたら、いいなーとつくづく思える本だった。
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泣きました。若い夫婦が読めばお互いへの接し方が変わり、老夫婦が読めば共感の涙を流し、高校生が読めば未来の伴侶への希望を抱く、そんな作品でした。
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城山三郎氏の没後に発見された、亡き妻との絆の記録。泣きながら笑うしかない夫婦の歴史、エピソードの数々。
…地球や日本の未来を考えることが、ますます重視されていく世の中だけれど、隣にいるたった一人のちっぽけな存在を愛すること、愛されることは、人が人という存在であることの根底にあるもの。そんな当たり前に気づかされる。
世界中のたった一人を愛し、笑わせられなくて、どうして世の中を幸せにできる?
彼の記した二篇の詩、「妻」、「愛」。
ある意味で理想の夫婦像がそこに。
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亡き妻との思い出の手記。
ふとした会話の中から夫妻の絆の強さが感じられます。
この夫婦に育てられた娘さんたちも、きっと幸せな家庭を築いているんだろうなと思ってしまいます。
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あの『官僚たちの夏』を描かれた城山先生が、こんなにも温かいエッセイを書かれるのか、と。
先生の学生時代の話から始まり、奥さんとの馴れ染めから最期の時まで、今流行りの安っぽい小説と比べ物にならないくらい重厚で人間味の溢れた「物語」が、それこそ“赤裸々”に綴られている。
「その瞬間」を気丈に振る舞うご夫婦の描写が、何かこれまでお二人が歩んでこられた人生が全て肯定されたような、そんな感慨を覚えずにはいられなかった。
しかし、その優しさは非常に寂寥感に包まれたものでもある(本書の「解説」にて、児玉さんがおっしゃられていた通りだと思う)。本編を読み終わった後に、次女の紀子さんが書かれた文書を読めば、その想いが痛切に感じられるだろう。
書くなら、生きるなら、こんな物語で……と、ぜひ皆さんにお薦めしたい一冊であるが、まず僕に求められるのは最良のパートナーと出会うことのようである。
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なんといってもこのタイトルが心に染みる。
最初から最後まで、奥様を包み込む愛にあふれた素晴らしい本でした。
数あるレビューのどれにも共感してしまう。
いつか結婚をしてどちらかの最期を迎えるそのときまで、
手元に置いておきたい一冊です。
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様々な愛の形はあるだろうが、究極の形を見たような気がした。愛情、幸せの面においても自分の選択に誤りがなかった、という確認も含めて。
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もっと読みたかった。でも、もう容子も三郎もこの世にはいないのね。
ピンク色のクレヨンで描いたモコモコのハートをもらった気がした。