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ハイデガーの『存在と時間』の入門的解説書です。
「本書は、『存在と時間』についてよく抱かれる疑問や、理解しがたい主張をハイデガーがしていると思われがちな点をピックアップし、その疑問に答えるという仕方で、結果的に、『存在と時間』の全体をだいたいカバーするという方法をとった」と著者は述べています。全体は10章で構成されており、各章は「なぜ存在の意味を問うのに自分自身を問わねばならないのか」「なぜ『存在と時間』の言葉遣いは普通の哲学書と違うのか」といった疑問文の形のタイトルになっており、それぞれの問いについて説明がなされています。
個人的に興味深く読んだのは、「『存在と時間』に倫理学はあるのか」というテーマをあつかった章でした。著者は「『存在と時間』は道徳哲学の前提にさかのぼり、道徳性というものが私たちに可能になるための条件を問うているのだ」と述べて、「責め」(Schuld)という概念にかんするハイデガーの議論を検討し、さらに「道徳的運」をめぐる問題に対してハイデガーの思想がどのような貢献をなしうるのかということにまで考察を進めています。
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20世紀の哲学の最高峰「存在と時間」ということらしいのdが、難しそうで、未読というか、読んでみようという気持ちもまだ湧いてこない。
が、ハンナ・アーレンとが好きで、彼女の議論を理解するためには、その師匠のハイデガーを読まないといけなさそうだし、近年、興味をもっている「全体主義」を考えるにあたっても、ナティスとの関係がしばしば議論になるハイデガーは避けては通れない存在のように思える。
といっても、やっぱまだ「存在と時間」に立ち向かう気力はでてこず、とりあえずは、入門書を何冊か読んでいるところ。
そういうながれで、読んでみた。
著者は、これだけ入門書がたくさんあるのに、「存在と時間」の入門書をさらに書く必要があるのか?というところからスタートする。
で、その視点はとても面白いもので、いくつかのある意味ナイーブで、シンプルな問いからスタートする。その問いは、たとえば、
・なぜ「存在と時間」の言葉遣いは普通の哲学書と違うのか?
・なぜ主体でも心でもなく世界内存在なのか?
・結局、「存在と時間」はなにを成し遂げたのか?
みたいな感じ。
だけど、単なるQ&Aではなくて、こうした問いに応えつつ、おおむね、本の流れにそって解説してくれるので、手応えを感じた。
基本、本の外部に依存せず、本の内側で読み解いていくというスタンスで書かれていて、最初のほうは、すごく面白かった。
が、だんだん章が進むにつれ、わからなくなってくる。とても大事なことが書いてある感じはあるけど、理解はまだまだだな。
一応、最後まで読了して、最初の方のページを読み返すと、あらためてなるほどという感じがしてくる。
もうちょっと付き合う価値がありそう。
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入門書
『在る』について、目からウロコが何枚も剥がれ落ちました
語るに足る理解、解釈は全くできていませんが、掘り下げたいテーマだと実感しました
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100分で名著の『存在と時間』の取り上げ方はひどかった。それは、存在と時間の議論を強引に人生論に結び付けるべく、皮相な解釈でつっぱしっていたからです。
それに比べて、この本の出来はすばらしい。存在と時間における議論をなぞるだけの解説書も多い中、しっかりと問いを設定し、それに対して答えていくなかで、存在と時間の議論の芯をつかんでいます。ぼく自身、存在と時間のとらえなおしができたと思います。【2022年5月25日読了】
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『存在と時間』の解説。丹念な説明で入口に立たせてくれる。ギリギリ分かるレベルで攻めきっている。
第1部は、読み解くための視点がちりばめられている。
・なぜ存在の意義を問うのに、自分自身を問うのか
・直訳=翻訳によりエポケーし、理解にいたる
・世界内存在=住まう。主体を出さない=認識論に陥らない。
第2部は、その視点の卓越性、結論を示す。
・「世界は存在しない」
・「手」
・「世人」
第3部は、実践的な論。
・「死への先駆」
・『存在と時間』に倫理学はあるのか
・存在と時間が成し遂げたことは過不足なく、また誇張せず、到達点と貢献を述べている。