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投稿者:タタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
確かに何で問題のある遺伝子なのでも関わらず淘汰されなかったのかが気になっていたので、今までのなぞが解けました。
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これはおそらく非常に重要な本で、分厚いので翻訳早めでありがたい。この手の話に興味ある人はみんな読みなさい。ネシー先生ページをおしまずにいろいろ臨床的知見を書いてて示唆に富む。感情障害患者の「社会システムレビュー」(ROSS)とか出てきてうっとなる。
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題名の通り、進化心理学の観点から不安やうつをもたらす人間の脆弱性を探っていく本。解き明かすのではなく、考えていくような感じ。
心の病そのものが進化的起源を持つわけではなく、「繁殖を最大限行うための」進化の過程で何らかの必要があって心の病に対する脆弱性が人間に残ったのだという立場を著者は取っている。
人間が生きていくには楽しい気分だけではなく必要な時に落ち込むことが必要であり、悲嘆それ自体は正常な反応であるというのは言われてみればそうだなと思うのだが、楽しく過ごすことが至上命題みたいになっている今の社会では意識しずらいことかも。叶わないことを辛いと思うこと、やる気のないしんどい時期があるのは正常なのだ。
それで実際鬱と診断される状態になる人とそうならない人との違い、精神病を引き起こす要因はなんなのか?というあたりの話がボリュームある部分なのだが、遺伝、ライフイベント、現代の環境等々いろいろな説が登場し、どれもそれなりの影響力を感じさせつつもそれだけで全てを説明しきれるようなものはない。希望を持たれていた遺伝説も肝心の原因となる遺伝子がいまだ特定できないと言う。まるでどんどん深い森の中へ迷い込んでいくようで、分かっていくのか?分からなくなっていくのか?つかめなくなってくる。依存症関連は、まだすっきりしている感じだったが。
著者自身が書いているように、進化的観点から鬱などを説明できたところで、実際に苦しんでいる人の治療にそのまま役に立つわけではない。それでも、私たちはそういう風にできている、と分かることがなぐさめになることもあるだろう。
連綿と続いてきた人間の群れの中でたまたま自分が脆弱性が強く現れている一族であり、個体だったのだ、と思えばすんなり受け止められる気がする。しんどくても、ただそういうものだと客観的に距離を置けるかもしれない。
私が好きな本の一つに、「おまえたちをこんなふうに創ってしまって私が悪かったねえ」って神様が一言くれたらな……みたいなことを書いているものがある。この本のアプローチはそれに近いというか、からだや感情の正の効用も負の側面も全てをひっくるめて「そういうふうに創られた」ように考えていこう、というような意識があるように思う。実際の臨床エピソードもたくさんあり、精神的ケアや薬だけではどうにもならない患者たちの現実を抱えているのに……というかだからこそなのだが、居心地の良い本だった。
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# 人の心は面倒で、一生付き合っていかねばならない
## 面白かったところ
- 行動経済学や進化心理学を始めとした、非医療分野の学問を絡めながら人間の心の病気について論じている点
- 心の病の原因の複雑さが人間というインタフェースのものではなく、個々人という千差万別の具象事例であるということを知れる点
## 微妙だったところ
- 結局、この本では人の心が脆い理由が微妙に分からない点
## 感想
血が出るのであれば止血すればいい。問題には必ず原因があり、対処法がある。しかしその考え方に釘を指し続けているものの1つが心の病であることがわかった。
原因は個々人それぞれであり、解決方法も複雑怪奇である。そんなことはわかっているが、患者は治療を求めてやってくる。治療が患者の目的かどうかもわかりかねる。
そんな難しすぎる世界で、最前線の医学は猛進しておりカネが注ぎ込まれていると知った。
個人的には進化生物学的視点からみて、心の病が淘汰されなかった理由が「遺伝を最大化するため」ということが最も印象に残った。
こんな難しい書籍なためかなり読破に時間がかかったが、また1回りしたら読み直したい。
答えのない問いに挑んでいる、とても勇猛果敢な一冊だと思う。
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[出典]
・紀伊国屋書店@新宿
・精神障害者が『なぜ心はこんなに脆いのか 不安や抑うつの進化心理学』を読む: 関内関外日記
https://goldhead.hatenablog.com/entry/2022/01/29/211715, 20220214
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素晴らしい名著だった。そして、著者の最終章における持論を私は強く支持する。また、常々「精神医学はニュートン力学発見以前の状況」(著者も同様の表現をしている。私には四則演算にあたるものが成立していないように感じる)と嘆いてきた事の私の行いの一部を侘びたい気持ちになった。これはその分野の人々の怠慢や見当違いの固執に起因するものではなく、人間が人間であるが故の最高難易度の医学分野であるが故なのかもしれないと、本書から深く感じ入ったからである。また、著者が多分野の「橋渡し」に全編を通して尽力しており、決して異論・異端について侮蔑・軽視の目を向けていない姿勢に敬意を表する。大変に素晴らしい一冊でした。
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とりあえず読み終えた。
「なぜ葛藤や苦悩が存在するのか?」「なぜ遺伝的である精神疾患は淘汰されずに残ったのか?」という問いに対して、「それら病や症状が何かの役に立っているはず」という安易な思い込みをせずに書かれているので、そこに救いはないが感動はある。
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いわゆる精神疾患とされる、躁うつ病やパニック障害などが、進化における適応度(子孫をどれくらい残せるかという指標)によって説明できるという見方が新鮮だった。我々の遺伝子は個体の生存よりも適応度を優先するため、時には個人の幸福を損ねることもある。
また、一見無駄に思われるネガティブな反応も、低コストで命を守るために備わっているものである。
教授に薦められて借りたが、初心者でもとっつきやすい内容だった。
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進化心理学的見地から人間の持つ心の脆さ=その発現である精神病やメンタルの弱さの原因、逆に言えば適応度を高めてきたはずの人間に、何故、日常生活に支障をきたすような”心の弱さ”が淘汰されずに残っているのかを探る。
様々な立場からの意見を詳細に検証し、多角的な視点からその答えを探ってあるので、読んでいて本当に面白い。
一方で、当然ながら”これ!”という答えや定説があるわけではないので、明快な答えを期待するとやや肩透かしをくらう(筆者の意見は述べられている)。
筆者の膨大な知見にはただ敬服するのみで、これだけ多岐にわたるテーマを1冊にまとめてあるのは本当にありがたい。
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人間の心理メカニズムは、種の繁殖成功に最適化されているのであって、必ずしも当人の幸せに最適化されているわけではない、というのが印象に残った。(といいつつ、不安状態は辛いのだが、、)
本書をはじめ、進化心理学の知見は、自身や他人の言動を冷静に受け止めることに役立つ気がする。(裏側に〇〇のメカニズムがあるために◻︎◻︎という言動に至るのだな、という解釈に繋がる)
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感想
遺伝子は自らの生存を優先する。ひとつの乗り物に固執しない。それが不利益を生んでいるかのように見える。だが、淘汰されずに残っている。
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人間は生物。生物は種の存続のために生き、不要な能力は退化し、必要な能力は進化する。
ということは、悲しみや不安、ひいては精神疾患も生物としてメリットがあるから存在するのでは?
という新しい観点が書かれている。
特に悲嘆についての研究結果が面白い。喪失体験の直後に大きな悲嘆を感じなかった人が、後で強い悲嘆を体験することはほとんど皆無だそうだ。また、死別した人との関係が、愛憎入り混じるアンビバレントなものだった場合、悲嘆の感情は比較的弱いとのこと。予想外だった。
「自分」の不安でなく「生物」の不安を考えるという極端に俯瞰した観点は、逆に不安を落ち着かせてくれる気がする。人間の進化が追いつかないほど早く変わるこの社会にギリギリしがみついている自分は、生物として頑張ってる方かもしれない。新しい考えを知りたい方におすすめ。
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心のことは未だに謎な部分も多く、これが正解と確定では無いのだろうが、なるほどなと納得することは多い
この本を読んで楽になる人はいると思う
本を読んでて確かにとハッとしたとこを書き写す。不安すぎても危険だが、不安すぎないのも危険。詳細は本に記載されてるので気になる人は読むべし