投稿元:
レビューを見る
著者である山口氏と著名人7人の対談形式の本です。分野は多岐に渡っていますが、第4章に出てきた、インフォーマルな状態にも秩序が構成され、それを制度化すると途端に無機質なものになるというくだりはとても含蓄があると感じました。
投稿元:
レビューを見る
p21 複雑で曖昧な状況において、その人らしい決断ができることを教養があると言う
p39 法灯明 教えを灯火のようにして生きなさい ブッダ
自灯明 他を頼らず、自分の足元を照らす、その灯明に基づいて生きていなさい
p41 キリスト教プロテスタント、ユダヤ教、イスラム教 やっちゃいけないことの一つに偶像を作って拝むがある
グルは偶像化する段階で、その本質が変化してしまう
自然は必ず変化するけど、教えという情報は変化しない
個人を偶像化つまり物質化すると絶対に失敗する
p43 世界は贈与でできている 呪いとは自分の思考に制約をかけてしまうものの総称 だから僕らはしばしば自分で自分に呪いをかけてしまう
p66 贈与というのは良くも悪くもやはり共同体を作る力、人をつなぐ力がある
マルクス 商品交換が始まるところで、共同体が終わる
p72 リーダーであればあるほど、適切なときに助けてくださいといえる
p81 モーセの十戒では偶像崇拝を禁止している。モノにするな、具体にするなというわけです。時間が経っても場所が変わっても、聖書の言葉は不変です。ところがモノにすると現地化してしまう
言葉にすることで普遍化する そこに当てはまらないものは現地の状況にあわせてなんとかする
p83 動物と人との違いは、意識の中に同じという機能があるかどうかです
p92 抽象的な情報を扱う職業で、報酬の高いものほどAIに切り替えやすい
p113 タンザニアの人たちは、困ったときに依存できる先をたくさん持っているからこそ自立しているともいえます
p144 外界の環境が変化した時、たまたま生存に有利な個体が生き残ったことを事後的に進化と呼んでいます
p147 やりたいことがわからない人は、想像できない環境に身をおけばいい
p151 池谷裕二 人間は、行動を起こすからやる気がでてくる生き物、面倒な時ほどあれこれ考えずに、さっさと始めてしまえばいい
p152 やりたいことが見つからない人は、移動距離が短い
物理的な移動距離と精神的な移動距離がある
投稿元:
レビューを見る
<目次>
はじめに アフターコロナの世界を生きるためのコンパス
第1章 夢中になれる仕事を見つけられない日本の社会システムとは?~北野唯我
第2章 「資本主義はもうダメだ」では社会は変わらない。「隙間」を埋める言葉を~近内悠太
第3章 五感から情報化するために人間は「ノイズ」を求める~養老孟司
第4章 タンザニア商人に学ぶ制度や組織に頼らない生き方~小川さやか
第5章 生物的な仕組みの理解なしに資本主義は成り立たない~高橋祥子
第6章 毎月7万円のベーシックインカムが日本の閉塞感を打ち破る~井上智洋
第7章 ゆるやかに今を楽しむライフスタイルが徐々に広がっていく~広井良典
<内容>
「Business Insider Japan」の連載の書籍化。著者の山口周が、ビジネス界を中心とした人々とインタビューをしたもの。これからの社会を考える際のひとつの「コンパス」になるように、コロナで変わるであろう社会を見通すヒントが多くあり、インタビューに登場した人たちの本を読んでみたいと思った。
投稿元:
レビューを見る
今後の不安定な世界を生きるための方向性、ヒントを、各方面の有識者との対談形式でまとめたもの。全部の内容を理解出来たわけでは無いが、都会が人間が作った仮想空間である、都会は田舎よりも情報量が少ないとのコメントはなるほどと妙に納得してしまった。自分が都会嫌いで自然好きなのは、そういる事が理由かも知れない。
投稿元:
レビューを見る
VUCAの時代を自分らしく持って生きていくためにヒントとなる指針を、7名の有識者との対談から示してくれている。
この数十年で、「考えずに答えを求める」「問いを立てられない」「周囲に合わせる」といった思考停止状態の若者が量産されているのかも知れない。私もちょっと前までそのうちの1人だった。対談に登場する7名の方々は、自分と同世代の方が多い。同世代の方々が時代の先端を切り開いていることに驚くとともに、自分自身の思考停止状態を痛感した。
人生100年時代、30半ばを過ぎた年齢であっても、ロールモデル(答え)を求めるのではなく、エクスプローラー(探索者)であることが許されると思う。自分から一歩を踏み出して人生をコントロールしていきたい。
長時間残業が減って生じた余暇の時間を、短絡的な消費やゲームではなく、知的活動を中心に有意義に使いたい。本を読んで、ブクログに感想という形でアウトプットする習慣、是非とも継続していこう。
投稿元:
レビューを見る
養老孟司の「アナログの方がデジタルよりも情報量が多い」という話は印象に残った。たしかに、自然の中で耳に入ってくる音、目に入ってくる風景、どれもどんなパラメータを用意しても完全なる再現はできないだろうなと思う。なので、子供の頃にデジタルに浸かりきらず自然を五感で味わうのは大事だし、大人もアナログのノイズをたまに求めてしまうのだろうと思った。
あとはタンザニア人が貸し借りで関係性を作っているのは興味深かった。人と人との繋がりも文化があり、さまざまな形がある。
投稿元:
レビューを見る
山口周さんはこれまで何冊か読んできて、新刊として案内が来たのでポチリとして調達をしたのですが、これまたなかなか考えさせられるというか、僕にとっては難しい本でした。 幾人かの著名人と対談形式でのやり取りをまとめ上げられた本なのですが、多様な方々との対談となっていて、「で、結局この章では何を読者に伝えたいんだろう?」となること多数。 いや、まさにそのために書いた本なんですよ、と、山口さんに言われそうで、まさに『ノーマルなき世界を生きるヒント』という書籍なんだろうなぁ。考えさせられる本でした。
本自体は、PHPビジネス新書ということで、ボリュームも多くないし文庫本サイズで持ち運びしやすいので、久々の電車移動時などにも読んだし、本日改めて二回目読んだのだけれど、二回目読んでも、いまいち、いつものように付箋が進まない。。自分という軸は、やや強めな自分だと思うのだが、そうした自分軸から、複数人の多様な方々との対話を見ていて、「そういう考え方もあるよね」という感じで、なんとなくやや距離をもって見てしまい、「あぁそうそうそれそれ、それめっちゃ共感できる!」とか、「これめっちゃ勉強になる!」といった付箋作業が、あんまり進まなかった印象。
とはいえ、これはあくまで一個人での感想であり、正解はない中なので自分で考えなさい、とアドバイスしている本なので、それはそれで正解なのかな、とも思います。 コンパスとしてヒントを提示いただける本ではありますが、よくよく自分で咀嚼しないと腹落ちまではもっていけないかもしれないな、とは思います。
以下、今回は引用少な目です。
===========
P19 私たち日本人は「普通」が大好きですが、仮想空間シフトによる反都市化が進む社会では、「普通の働き方」というイメージは概念として霧消してしまうことになります。
日本では「普通であること」が過度に重視され、「普通でない」ことが批判の対象となりますが、なぜそういうことが起きるのかというと、「普通であれ」という脅迫に屈してワガママであることをあきらめてしまった人は、自分の個性を圧殺したという罪悪感から、脅迫に屈せずワガママであることを貫いて楽しく生きている人が許せないのです。同じようにできなかった自分の情けなさ、不甲斐なさを見るたびに思い起こさせる存在だからこそ、「ワガママ」を押し通す人に愛憎の入り混じった複雑な感情・・・まさにコンプレックスを抱くわけです。
P96 (山口)いま普通の生き方というものが溶けてきていますよね。毎日職場に行くことも100年間ずっと続いた当たり前のことでしたが、家にいながら仕事ができるようになって、もはや年に会社を置く必然性もなければ、その近くに住む必要もない。「どこに住んでもいいですよ」と言われた時、放り出された感じがすると思うんです。
(養老)非常に生きにくい状況。
(山口)いきなり放り出されて「どういう風に生きたいのか考えなさい」って。考える力のあるなしで人生のクオリティが変わってしまうわけですよね。
P116
��「あいつ、ただのメッキ男なのに、なんで結婚したの?」とその女の子に聞いたら、「彼が本当は貧乏なことはデートしたその日にわかったわ」と。でも、この人は困った時に助けてくれる人がたくさんいる。これだけのものが瞬時に集まる関係性を持っている。それは実質的にお金やものを持っているのと同じだと。
日常の些細な困難であれば、自分が働いて二人で工夫して乗り越えられるけれども、大事なのは緊急時だから、いざという時に助けてくれる人が現れる生き方をしていることが旦那選びのポイントなのだそうです。
P130 人生とは不確実なもので、努力が必ず報われるとは限らないし、予測できないこともたくさんある。だからこそ面白いし、他人を受け入れ、自分が受け入れられる余地もある。そんな価値観に身を投じることができたら生きやすい世界になるのではないでしょうか。
P149 もともと医者家系で、自分も医者になるのかなと思っていました。中学生の頃、病院に見学に行くと、当然ながら病気の人しかいない。強烈な違和感を覚えました。
病気の人を治すのも大事ですが、そもそも人間はなぜ病気になるのか、病気になる前になんとかできないのかと。もう少し幅広い視点で生命の仕組みを研究して、予防につながることをやりたいと思って、分子生物学の領域に入りました。
P152 何かの本を読んで、いきなり情熱が芽生えたということはあり得ない。情熱が湧くとは、生物学的にはドーパミンが放出されている状態だと思いますが、体を動かすことでドーパミンは放出されます。情熱があって動くのではなく、まず体を動かして、行動してみて、初めて情熱が芽生えるのだと思います。
===========
以上
投稿元:
レビューを見る
山口周氏の本。世の中に対するスコープを深めるべく読書。世の中の重要論点に対して議論がなされておりめちゃおもろい。
メモ
・来るべき世界に対する考察
仮想空間へのシフト
反都市化への反転
ライフスタイルの多様化・複層化
・自然派圧倒的に情報量が多く、人間が想像し作ったものはそれらを超えない。
そもそもアートはどこまで自然に近づけるかというもの
・交換ではなく、贈与であることの意味。関係性の違い。
・身体性。インプットに対する感受性の高さをどう担保するか
機能性、意味の追求からの脱却。
意味のないことの意味
・インフォーマル社会の存在
依存と自立の表裏一体性
貸し借りから始まる、継続する関係性
・aiが苦手なこと
抽象理解とコミュニケーション
マニピュレーション
クリエイティビティ
マネジメント
ホスピタリティ
・
投稿元:
レビューを見る
さすがの山口さん。
対談相手の方もさまざまで、非常に読み応えがあった。知的な対話が展開されていて、最後まで一気読みでした!
投稿元:
レビューを見る
個人的にビジョナリストと思っている著者の対談本。
コロナ禍で、今までずーっと通勤するからどこそこに住む、という当たり前になっていたことが変わり、毎日会社に行かなくて良く、どこに住んでも構わないという、働き手の制約条件が大きく緩んで、自分の意思で選択しなければならない時代になりました。これは、個人として、どう生きたいかを自分で決めないといけない、という社会になってくるとのことで、自分にとって大切なものは何か、どのような人生を送りたいのかを考えるツール、これをコンパスと表現し、読者に提供したいとのことです。
対談者との掛け合いがある分、いつもよりは頷けるところが個人的には少ない印象でした。
気になった点
・養老孟司:人間社会というのは全部じゃありません。たかだか半分(昆虫が趣味で、それが自分の中でバランスを保っているという意図)。
・小川さやか:ルールを適度に無視して、自分たちで考え何かをしている状態は、交通だけでなく、社会の隅々にあり、本来その上に秩序ができているはずです。そのことを忘れて、細かいルールをつくって制度化しようとすると、一つの制度をつくるとまた別の制度を作らなければならなくなるのが現実ではないでしょうか。
・広井良典:時代が人をつくり価値観をつくる。いまや完全に人口減少に転じましたから、再び行動パターンも変わってくると思います。昭和のやり方では、もはや成り立たない。まさにターニングポイントに置かれています。(略)70~80代の人々は昭和的な価値観の中で生き、若い世代はまったく別の価値観の中で生きている。その変化のスピードの速さが難点ですが、ここを乗り切ればポジティブな未来が開けてくるのではないでしょうか。
明るい未来に対応できる自分にならなあかんな、と思いつつ閉じました。
投稿元:
レビューを見る
7名の教養人とのインタビュー形式の対談。その中でそれぞれの主張に対して、山口周が独自の視点をぶつけながら切り込んでいく。対談で思考が補強されていくプロセスが面白い。
以下、著書に書いてある事ではなく、そこにインスピレーションを受けた自分自身の考え。昔でいう書き込み、みたいなものだが、自ら対談に加わりたくなるような興味あるインタビュー。
都市とは所詮、自然と対比すればバーチャルな存在でしかない。ならば、テレワークは、そもそもバーチャルな空間であった都市からの変化とも言える。オンライン対談での通訳機能や自動要約機能も出てくれば、やはり世の動きは不可逆的だろうと共感した。一方で、山口周の考えは、人間そのものがバーチャルではなく、自然物であるという考えが欠落させているように感じた。完全合理的には動かず、テレワークのみで仕事はやはり成立しない。その過不足が、自然である人間の要素か。
贈与による貸し借りが人生の保険になるというタンザニアの話。貨幣経済を介さぬ所に、贈与の必然性があるのだから、脱資本主義のヒント足り得るのは必然。物々交換の効率化を求めて生まれた貨幣について、インターネットにより、機能代替が起こるだろうか。物々交換が自動処理されれば、貨幣は要らない。
投稿元:
レビューを見る
各領域のスペシャリストと山口周との対談集。彼らの専門性や価値観・世界観はまったく違っているが、根底にあるこだわりには同じものがある。
そのこだわりこそが表題にもある「思考のコンパス」たりえるのだろう。VUCAの時代を生き抜いていくためにはある種の指針を貫くものが必要になる。
興味深いトピックも複数あった。特に「自然は人工のものより圧倒的にビット数が多い」(北野唯我)「贈与間の時制のズレがエモーショナルを生む」(近内悠太)「カオスな環境に身を置くことで自分の課題と指針が見つかる」(高橋祥子)という話は面白かった。
なによりこれらの専門家と話を合わせて内容を深掘りできる山口周の知見の広さがすごいと再認識させられた。
投稿元:
レビューを見る
対談を通して、色々な分野の人たちの価値観に触れることの出来る本だった。本の中で出てくる人たちは、今の日本という国の中にいながら、一歩外に出てこの国あるいは人間社会を見ているようなそんな気がした。近すぎず離れ過ぎずに、「今」を見ている人たちの話には多くの気づきがあった。
投稿元:
レビューを見る
・個人を偶像化すると、どうしても変容してしまう
・人言中心主義vs生命中心主義
・仕事はバーチャル、私生活をフィジカルにする生き方
・知識だけでは伝わらないことも、すきまをうめることで途端に伝わることがある
・与えられていることに気付くこと
・人生とは不確実なもので、努力が必ず報われるとは限らないし、予測できないこともたくさんある。だからこそ面白いし、他人を受け入れ、自分が受け入れられる余地もある。そんな価値観に身を投じることができたら、生きやすい世界になるのではないか。
投稿元:
レビューを見る
山口周氏の著作の中で初めて読んだ。
7人の各専門家との対談をまとめたもので、機能不全または暴走とも呼べる現代の資本主義社会をどのように捉えていくかというテーマが通底している。
本書の目的・方向性は要約すると「時代の先を読めない現代における指針、ヒントを得る」となるが、これはそれぞれ専門の異なる人らとの対談を集めて説明するためにやむなく取ってつけたように感じる。
本書にチラホラ登場する「教養」というキーワードもやや流行りに乗っているような雰囲気がある。
とはいえ、本書の内容自体は重厚だ。
各人の研究・実践のテーマそれぞれはまさに現代社会の課題を解決するための糸口であるし、非常に期待できる。
本来であれば各人の主となる著作を読むべきだが、核心のみを素早く掴み取りたいのであれば本書は有益だと思う。
経済成長一辺倒の資本主義・新自由主義経済が続いてきて行き詰っている現代において、例えば脱成長、例えばアナーキズム、例えば非合理的な偶然性、例えば都市から離れ自然に立ち返ること、例えばBI、のように一歩引いた視点で働き方・生き方を見つめ直せば、解決、とまではいわずとも改善のヒントは見つかる。
社会制度も、大衆の意識も、染み付いた習慣も一昼夜で変わることはない。
しかし個人単位で思考を変え、行き詰った常識を刷新して行動のベクトルを変えれば、まずは心持が変わり、次いで習慣が変わり、人づきあいが変わり、所属が変わり、生活が変わっていく。
これが静かながら広範囲な潮流となれば、社会は新しい形へと変わっていくはずだ。
希望はゼロではない。