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紙の本
幸福を計算してみる
2010/03/07 19:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここ数年になるだろうか、一般向けの「わかりやすい」「やさしい」を謳い文句にした数学書が目につく。たしかに、数学がわかるようになると、なんだか頭が良くなりそうだ。いや、その気になるだけかもしれない。ただ、それで何かがわかりやすくなるのであれば、よしとしておきたい。
本書の売りも、多くの著作をあらわしてきた統計学の教授が、世間のさまざまな事象の根底にある数学的な仕組みを解説した、というものである。民主主義や金融工学、格差まで、多様な事柄を扱っており、きっかけづくりにはちょうどよい。いずれも、ここ数年に限ってみても、よく話題にのぼる事柄ばかりである。著者も序文でいうように「エッセイ」のようなものなので、肩肘張らずに読める。ただ、より深く学びたい人にとっては、説明がやや物足りない面があるかもしれない。本書を入り口に他書に挑まれたい。
ところで本書を読んでいると、「難しそうなことをわかりやすく解説する」ということは重要であることを痛感する。その好例が本書2章「幸福の計算」である。世間的な建前は「幸福は測れない」ということになっている(あの有名なCMでは盛んに「プライスレス」を強調しているではないか!)。しかし実際には、しばしば幸福はカネやモノに還元される(あのCMも、結局は「プライスレス」な幸福のために、商品購入を喚起するものである)。こうした議論は、学問の世界でもさんざんにされてきている。
ただ、「効用」とか「厚生関数」などと言われても、なかなかピンとこないのが人情であろう。「平均**がこれだけ上がった」などといわれたほうが納得しやすい。しかし、「平均」のみをみることで「皆が幸福になった」と言えるのか。納得しがたい部分は残るとしても、世間的な建前も邪魔をして、それ以上に考えを進められない。たとえば、それに答える道具の一つが「パレート原理」なのである。こうした専門用語で表現すると小難しく聞こえるが、中身は意外にシンプルであることに気がつかれよう。
そんなこんながわかるだけでも、大いにプラスである。ただし、博識な著者だけに本書の叙述は意外に脱線も多く、読者は惑わされることもあるので注意されたし。
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