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「松の花」
古今のほまれ高き女性たちを録した伝記の編纂をしている佐藤藤右衛門。彼は息をひきとったばかりの妻の慎ましやかな生き方を知り、世にでないがほむべき女性について、序章で記していくべきだと考え直していく。
「風鈴」
結婚をし豊かな家に移った妹二人。姉・弥生は質素な暮らしをし、夫も出世をせず、淡々と暮らしていた。そんな姉に妹たちは、生活を変え、夫に対しても彼女らの夫から出世を勧められる。弥生は思いが揺らぐ。そんな時に夫とその上役との会話を聞く。夫は「たいせつなのは身分の高下や貧富の差ではない、人間と生まれてきて、生きたことが、自分にとってむだでなかった、世の中のためにも少しは役立ち、意義があった、そう自覚して死ぬことができるかどうかが問題だと思います…そして死ぬときには、少なくとも惜しまれる人間になるだけの仕事をしてゆきたいと思います。」と話す。
「あだこ」
好いていた許嫁が男と逃げ、父が築いた二百石の家も虚しさから、持ち崩してしまった半三郎。荒れ放題の庭や家、金もなくなり食べることもできなくなった頃、その家に顔の黒い娘が住み着き、半三郎の世話を始める。
最後、幸せになりそうな二人が微笑ましい。