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「軍人は一つ前の戦争に備える」と言うが、「平和運動も一つ前の戦争に備える」と言えよう。今の日本で平和教育の題材といえばもっぱら太平洋戦争だ。
しかし、第二次世界大戦-太平洋戦争はかなり特殊な戦争だったことは忘れてはいけない。この戦争を端的に表す言葉は「総力戦」と「無条件降伏」。
特に、過去に例がなかった枢軸側への無条件降伏要求は、あの戦争を過度に悲惨なものにした。本書はそこに焦点を当てて書かれている。
平和運動が目指すべきはこれから先の戦争の防止である。この場合、「総力戦」も「無条件降伏」も繰り返される可能性はかなり低いのではないか。
アメリカや欧州各国の先進国の軍事攻撃は、いまやハイテクの限りを尽くして、自軍だけでなく、敵国の非戦闘員の死者もできるだけ出さないよう努力している。このとき、かつての戦略爆撃のようなイメージで市民の犠牲がどうこうと訴えて説得力はいかほどのものか。
先の戦争から学ばなければいけないことは多いが、同時に、今後の戦争を抑止するためには、過去の戦争の何が特殊かを知るとともに、現代の戦争の特徴も正しく把握する必要があるだろう。
第二次世界大戦の特殊性を知るのに、この本は読みやすくてよく適していると思う。