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意識とは何か、に言及した後半が特に面白く、脳の奥深さを味わえた。
常に脳は自発的に活動していて、たくさんの情報の中からわずかな情報を取捨選択して意識を作り出している。それは、全ての情報を処理しきれないからであったり、脳のメカニズムが化学反応による情報伝播•並列処理というところから最適化された仕組みである…というのがなるほどと思った。意識を科学なんかできるのかと思っていたが、言われてみればというところで、意識を作り出すのにも脳内で処理が行われるため処理時間が必要、というところから掘り下げられるものなのだなと。
その他、ラットが意識をもっているのを試す実験など興味深いトピックが満載で、かつ素人でも読みやすい文章になっていて良い本だと思った。
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人と人工知能の共存について脳科学の観点から考えたい人におすすめ。
【概要】
●脳の動作原理
●知能とは何か
●知能を支える意識
●脳の使い方・育て方のヒント
【感想】
●書かれていることの主体は脳であり、人工知能の話はあまり出てこない。
●生命知能と人工知能の違いが「意識」にあるという。知能と意識を分けて捉えるという考え方に気づかされた。人工知能の次に人工意識の研究の研究がブームになるかもしれないというのは面白い。
●人間と人工知能の共存についてよく言われるが、本書では生命知能と人工知能という言い方をしている。他書と同様に共存を考えていくのがよいと理解できる。
●本書の内容は、終章に要約されている。
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エンジニアが書いたものだが、脳科学の観点が比較的わかりやすく書いてあってなかなか面白かった(それでも理解できない部分はあるが)。
AIと脳の構造や機能を対比させることでイメージしやすくなる部分もあるだろうし、特に、生物/生体として化学反応で機能する脳が、実はデジタル的な処理をしているかのようなところが興味深い。
また、音楽と言語に関して脳の特性との関連が述べられるあたりも、斬新かつ鋭い。
全体的に、随所に「なるほどねえ」という記述があり、大変ためになりました。
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日本経済新聞の読書欄でサイエンスライターの竹内薫氏が紹介していたので手に取ってみました。
「生命知能」「人工知能」「意識システム」等の基礎知識を整理しつつ、意識を高め育てる高等教育のあり方等についても論じた本です。
私にはちょっと専門的過ぎて理解がついていかないところもかなりありましたが、「生命知能」と「人工知能」との関係性等興味深い指摘も数多く、なかなかに刺激的な本でした。
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人工知能の飛躍的な進化に伴って今後の人間の在り方が問われる時代。人工知能は自動化を行い、生命知能は自律化を行うというのが著者の考え。人工知能に恐れる人が多いのは現代人の多くが人工知能化しているからと示唆される。意識的に生命知能を育てることがこれからは大切になりそう。新しい評価軸を持ち、行動と経験を増やしたい。
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☆R05-10-28Sat円安・他国での物価上昇・GDPがドイツに抜かれ4位…無料で出来ること増えたからGDPの比較無意味か?日本社会の効率性向上策は?
本書は3部構成 1脳の動作原理の理解 2知能とは?知能はどう育つか? 3知能を支える意識(芸術科学宗教を生み出した脳の仕組み)
現在のスマホ検索、チャットロボ→検索アルゴリズム
現在の人工知能は自動化の技術(あらかじめ決められたルール) 生命知能は自律化(自分自身でルールを決める・それに従って物事を進める) autonomy 自分で自分に自分の法を与える者 自律化≒作り出す
人工知能と生命知能は共存可能・ますます豊かな社会へ 生命知能が衰えるわけではない
明治維新以降の人工知能的な戦略(既存製品の改良、コスパ、安くて良いモノを作る)GDP500兆円→日本の停滞期 IT革命、AI革命では思うように稼げなくなった日本
今後の多様化した社会では生命知能、人工知能の両輪のバランスの取れた戦略が必要
第1部
頭蓋骨の中に1.5キロの脳組織
大脳皮質(大脳を覆うシート状・新聞紙1ページ2,000平方センチ・厚さ2ミリ・頭蓋骨に折りたたまれて収納・脳にシワ)
大脳皮質にニューロン100億個 1ミリ角に直径10μmの細胞が9万個・互いに電気信号(脳は20Wのエネルギーを消費)
神経細胞は軸索という直径1μmの配線を介して他の細胞へ情報を伝える 1ミリ角の脳組織の軸索の長さは4キロmになる
軸索が他の神経細胞に接している部分…シナプス シナプスは1つの神経細胞に1000個から1万個・1つの神経細胞は1万の神経細胞からの入力、1万の神経細胞への出力を行っている
デジタル回路の場合は多くても10個のファンイン・ファンアウト
神経回路は信号の流れが電子回路とは根本的に異なる
ある神経細胞は1万個(10^4)の別の神経細胞とシナプス結合→結合を介すると1億個(10^8)→さらに介すると1兆個(10^12)
大脳皮質の細胞数100億(10^10)を超える数なので、元の神経細胞も接続先の1つとなるハズ
再帰的な結合を有する神経回路の数理モデル リカレント・ニューラルネットワーク
現在の人工知能の中核技術はフィードフォワード・ニューラルネットワーク(情報は入力層から出力層へ一方向)
入力層、複数の中間層、出力層→深い層になる 深層学習(ディープラーニング)の語源
脳の神経細胞は入力から出力まで数ミリ秒を要する(1ステップ) 物体認識全体は数百ミリ秒かかるので100ステップ要していると推定
神経細胞は1秒に500回位の演算 化学反応を利用するから遅い→問題解決のために入力情報が多くの細胞で共有され並列(パラレル)処理させるようになった
1980年代のCPUはクロック数10MHz 1秒間に1,000万回
現在のパソコンのCPUのクロック数4.6GHz 46億回 スパコンの京 富岳は40京回
ダーウィン種の起源 人口環境下では多様性が大きくなる(ダーウィン時代の人口環境は動植物を死滅させない程度の人工環境のこと・その場合は、環境が変化する=多様性に繋がる)
DNA アデノシン三リン酸(エネルギーを生み出す仕組みとして生物共通)ヒトとバナナでさえ共通
脊椎動物の眼の進化 DNAの突然変異で光に反応するタンパク質→数カ所に集まる・眼点→眼点を支持する細胞→光の方向が分かる細胞→ピントを合わせる細胞→レンズに当たる水晶体 進化収斂
仮に1年で世代交代する魚類 40万世代・40万年で目が完成した
細胞の外側はNa+とCl-の濃度が高い 人間の祖先は海から進化したから
細胞の内部はK+の濃度が高い
イオンの通り道(イオンチャンネル)が開くと各イオンは濃度勾配に従って移動する
陽イオンNa+が細胞内へ入ると細胞内が正へ(興奮)
陽イオンK+が細胞外へor 陰イオンCl-が細胞内へ入ると細胞内が負へ(抑制)
イオンの通しやすさの関係から、興奮は抑制よりも反応が早い
ネズミに麻酔・意識を奪う・刺激が無くても脳の電位が観測される→自発活動 脳が化学反応を利用しているので温度が絶対零度でなければ分子は静止せず揺れ動いている
生物共通のエネルギーATP イオンチャンネルが開くATPの量
☆脳の構造の仕組みの解説・エネルギー的にも理にかなっている
第2部
シャーレ上に培養液・細胞を蒔く(播種はしゅ) 観察の状況の記述
賢さ→観察者が感じ取るプロパティ(性質) AI効果→人工知能が解決できた瞬間に、それは知能ではないと感じる OCR技術→文字を読んでいるイメージなし
死んだ魚、泳ぐ 渦中での姿勢維持は、魚の脳ではなく骨格のおかげ・動作において身体性がいかに支配的かを示す例
脳のリザバー効果 調整せずとも最適化
神経回路やリザバーは自らの能力以上のことを解決できない 普通の小学生には知識がないので大学入試解けない
多様性を生かす生命知能は、自律化のための手段 多様性を排除する人工知能は、自動化のための手段
第二外国語、古典、数学→日常生活で一見役に立たない教養 メタ学習が脳の成長
脳は機能マップを作る☆刺激に対して反応する脳の場所のことか?
機能的に重要な部位や複雑に動く部分には、脳の中での広い面積が割り当てられている。
2005年DSで脳トレブーム 1990年代後半にMRI、近赤外線分光法による脳機能イメージング→活動している部位を可視化
西洋音楽 1オクターブに12個の音 ピタゴラス音律・互いに響き合う音は音の周波数が整数比になる・440Hzなら880Hzが最も響き合う・3/2倍の660Hz・4/3倍の587Hz 完全5度と完全4度
→響き合いだけで音を決めると、互いに響き合わない組み合わせ(うなり)が生じる☆音楽の知識をまとめること
平均律 十二平均律・隣り合う音(半音)との比率は全て等しく12√の2
言語のスペクトル 言語でよく使われる周波数比
音を使って情報を伝える要求機能→脳にとって処理しやすい音・どのような音を使うのが効率的か
f分の1ゆらぎ 小川、木漏れ日、心拍 スペクトルは周波数fに反比例→心地よい
第3部
視覚情報→脳で意識の世界を作っている
リアリティを感じるためには、脳の情報処理のキャパを超える程度の情報が必要
視神経は片目につき100万本 4K(3840×2160 800万画素)から8K(7680×4320 3200万画素)にアップグレードしたところで、技術的なコストの割に、私たちが感じ取る画質は変わらないだろうと思っていた。実際の8Kのリアルな画像に衝撃・2次元なのに3次元に見えた・視覚情報が多すぎて脳はリアルタイムで処理できず3次元を作り出した。☆大型電気店で体験してみること
ハグビー 携帯電話を入れるポケット付きの抱き枕・相手を抱きしめている感覚
多義図形(ネッカーキューブ、ルビンの壺) 知覚交替現象で重要な事は意識に上るのが1つであること・2つ同時に意識に上ることはない
意識の有無を調べるミラーテスト(鏡に映った自分を認識できるか?) 犬、猫はじゃれ合おうとする→意識がないと判断される例
ヒトの模倣能力は圧倒的→文化を生み進化へ繋がった・社会性発達
ラットがかくれんぼする hide-and- seek rat この動画を見ればラットに意識がある事を確信する
意識は、外部の多くの情報を取り入れて、脳が作り出すもの
統合失調症患者の意識を考慮すると、意識にはリアルな情報の生成と自分自身による監視が必要
人工知能による芸術への違和感の原因は?
ピカソ キュビズム(立体派) 物事の本質を抽出する
目の前にあるオブジェクトは、どのように脳の中で表象されているかを考え、どのように表現すれば、他者の脳に対しても高い訴求力をはっきできるか?→物事の本質
鑑賞者が芸術を楽しむ時は、必ず意識の世界を介する・意識とは経験・芸術とは意識の世界を介して他者と共有出来る経験であり、芸術作品とは、そのような経験を作り出す情報(コンテンツ)
写実的な画風の画家 リアルな絵画 物理現象の再現と意識の世界での経験は同義ではない。
清流水面の光沢感を見た時、脳はどう処理しているのか?→画家が光沢感を描く時、脳にうまく訴える形とする
現代音楽 4分33秒・無音 273秒の絶対零度 新たな思考経験を提供したことに対して高い価値・二番煎じは作品として認められない。
タイムスタンプ方式 金融決済方式・決済順序で損得が変わるのを防ぐため、受付時刻と具体的な処理内容を別々に記録・後から受付時刻を確認しながら処理
脳の視覚、反応時間のズレ補正に同じ方式
私達には自由意志がない 脳が動き出し、動かそうと思い、指が動く、その後、動かしたい!という意識的な意志が生じる
痴漢(無意識のうちに行動プログラムが起動しただけかもしれない)→なぜその行動プログラムを緊急停止しなかったのかを問い詰めるべき
モーセの十戒 姦淫してはならない(自由意志はないという立場から、生理学的に克服できない無理な教え)
Thou shalt not commit adultery. ☆聖書の誤植・姦淫聖書が有名
意識に上る情報は1万分の1 バスケで「白チームのパス回数を数えてください!」・途中ゴリラの着ぐるみが入って来ても気づかず
後付け推論 2枚の写真・好みのタイプは?→選択後、その写真を渡して選択の理由を尋ねる 5回に1回却下した写真を渡しても入れ替えに気付くのは1割以下 ���っともらしい理由を語る人多数
脳は物事の因果関係を理解したつもりになり、安心して楽しく生きるために、神を作った。
便利な生活 ドーパミンを補わなければならない→スマホのゲームに時間を浪費→幸せな社会か?
ダイバーシティ、新しい評価軸 45歳定年制
終章 意識があるとは経験すること ネットで検索→分かったつもりだが、意識は使ったか?
昔の機械 壊れても分解すれば、故障が分かった気がする スマホの故障→対応ムリ
博士号 足の裏の米粒・取らないと気持ち悪いが、取っても食えない。
仮説・検証を繰り返す作業は、膨大なエネルギーを要するが、強い生命知能を育てる