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著者の谷合廣紀四段は、名人に挑戦するための順位戦では最下位のC級2組に属しており勝率はほぼ5割。
2020年に東京大学出身としては二人目のプロ棋士になった。
現在は東大の大学院でAIの研究もしている。
このような将棋とAIの両方に高いレベルで精通している人は谷合四段しか思い浮かばない。
開いた瞬間に、気楽には読めない本だとすぐに分かる。
図書館にも置いてあったが、とても貸出期間内に読める内容ではない。
一度は読むのを諦めたのだが、目にするたびに気になって仕方がない。
自身の観る将レベルを一段上げるために挑戦してみようかと思い始める。
なにしろプロ棋士の対戦で「負けました」と言った時の投了図を見ても、常に以降の詰手順が分からないのだ。
ということで、手に入れさえすれば気持ちも安心するので購入した!
13局を解説しているが、読破するまでに時間がかかりそうなので途中だがレビューする。
1つの対局で10程度の局面を選び、そこでの候補手をAIの評価値と共に3つほど提示し、実際の藤井の指し手を示す。
優勢の時はより勝利に近づく手を選んでいるし、劣勢の時はよりダメージの少ない手を選んでいることが分かる。
持ち時間がなくなると、AIが示す最良手でなかったりもするが、大抵は2番目の候補手だ。
ライブ中継では、AIが予期せぬ手を選び、解説者も意図が読めなかったりする。
実際に対戦中の棋士が別の手を指すと、AIが示した手は幻となりスルーされたりするが、本書ではそこを解説してくれるのがいい。
だが群を抜いて強い藤井六冠も常に完璧なわけではない。
終盤に何度も読み間違いし一気に負け将棋になった局面で相手も詰み筋を誤り、これに気づくか否かという一手で勝ちを得た盤面の解説なんかが面白かった。
仮にAIがどちらかの勝ちが100%と評価しても、タイトル保持者のトップ棋士でも詰められないことがある。
持ち時間がなくなる終盤では読み切れないまま指さなくてはならないので特に間違いも増える。
羽生善治さんもそうだが、藤井六段も「良くわからないまま指していた」と感想を述べたりする。
「羽生対局から50問!投了図からの詰将棋」という本も見つけたので、本書で少し勉強してから挑戦したい。