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「母語の言語体系(文構造、文法、語彙)が、話者の知覚・認知・思考を規定している」という命題について。
その言語によって「何を伝えることができるかではなく、何を伝えることをを強いられるか」という観点に拠ってみると、↑の命題は正しいようだ。
そして特に色の見え方について、碩学の方々が導いた結論はかなり驚くべきもので、ぜひ読んでみてほしい。
言語の「強制」の興味深い事例をひとつ。。
「前後左右」の語彙がないオーストラリアの先住言語では(!?)「東西南北」を代わりに用い(!?!?)、例えば絵の中の位置関係も「東西南北」で表す。
だから絵について記憶を辿って説明するとき、「自分がどの方角に立っていたか/イラストがどの向きにあったか」も合わせて把握しないと、そもそも他者とコミュニケーションできない、という。
ただ「前後左右」の概念を理解できないわけではなく、ここを見誤ると一気にトンデモ論化らしい。
日本語も含め、名詞のジェンダーなどいろいろな言語の事例がユーモアたっぷりに紹介されており、とても楽しい。
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「青色」と言われて、思い浮かべるのは何の色だろうか。
海の青、空の青、信号機の青。
これらの「青」が同じ表現でありながらも、違っていることはわかる。空の青は、どちらかといえば「水色」に近いし、信号機の青は、「緑色」に近い。
自分の母語とする日本語の世界では、青は、このようにした広がりを見せているが、英語では信号機は「green light」といったように、異なる表現が使われる。
では、色を表現する言語が違えば、実際に見ている色に「補正」がかかるのだろうか。それに関して書かれているのがこの本であり、数多くの思考実験がなかなかに面白い。
第1章では、文学の世界から物語が始まる。ホメロスの描いたオデュッセイアの世界で、海の色が「葡萄酒の色」と表現されているところから、端を発する。
色彩感覚は、時代と共に、知覚能力として向上したのだろうか、という謎に立ち向かうべく、多くの実験が行われた。
そこで導かれたのは、色を特定する単語がないからといって、知覚できない、というわけではない。それは、時制も同じで、過去形を細かく分類する言語でないからといって、それを表現できなかったり、感覚がないわけではない。
ただ、伝えるための制約に従っているだけだ。
ということだった。
次に取り上げられたのは、「サピアウォーフ仮説」について。以前、別の本で読んだ「サピアウォーフ仮説」は、それを知ったとき、驚嘆した。
「言語の違いは、思考の違いに影響する」という、シンプルな結論は、トップダウン式に全てのことに当てはまると結論づけた。しかし、それは後になって、誇張されすぎたこじつけにすぎないことがわかり、この仮説は色褪せていった。
では、どこから誇張され、間違ってしまったのだろうか、果たして、この仮説は、全て間違っているのだろうか、と考察していくのが、この本の後半部にあたる。
こちらに関して、ネタバレとなるので結論は控えるが、もっと語彙力を増やした方がいい、ということが改めて示されたように思える。
英語の勉強をする際に、圧倒的な単語を前にして、もっと簡単であればいいのに、と思ったり、母語である日本語でも、こんな単語使わないから、覚える必要はない、と切り捨てていた過去を、改めて見返す必要がでてきた。
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名詞に性別がある言語の存在は幾つか知っていたが、同じ色名でも実際に指し示す色が言語によって異なっていたり、位置や方向を表す時に相対時に表す言葉と絶対的に表す言葉があるのを初めて知った。
このような言語の違いは話者の世界の見方が異なるからなのかそれとも別の要素が絡むのかを様々な事例から論じている。
これを読むと言語は多様性を映す格好の鏡なのだなと思った。
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<目次>
プロローグ 言語・文化・思考
第1部 言語は鏡
第1章 虹の名前
第2章 真っ赤なニシンを追いかけて
第3章 異郷に住む未開の人々
第4章 われらの事どもをわれらよりまえに語った者
第5章 プラトンとマケドニアの豚飼い
第2部 言語はレンズ
第6章 ウォーフからヤーコブソンヘ
第7章 日が東から昇らないところ
第8章 女性名詞の「スプーン」は女らしい?
第9章 ロシア語の青
エピローグ われらが無知を許したまえ
<内容>
言語学の本である。言語学の実験の難しいところは、本当にそれが見えないのか(生物的に)文化的に表現できる言葉がないのか、わからないところである。第1章のホメロスら古代ギリシヤ人は、「青」色を知らなかった?第9章にある、日本人とアメリカ人では「青」色と呼ぶ範囲が違うこと。それは認知的なものではない。オーストラリアのある部族は、上下左右、前後ろではなく、東西南北を使って表現するなど、いずれも文化的な違いであることをしつこく解いていく。やや根負けしたが、筋はわかった。
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素晴らしく面白かった。世界には様々な特徴を持つ言語がある(あった)こと、そのような特徴が我々の思考や認識に何をもたらすのか(あるいはもたらさないのか)、言語によって我々の世界の見え方は異なるのか、などなど。
今までは気にも留めていなかったような知的好奇心を刺激する数々の疑問がこの本では紹介されている。
文章が少しスノッブ気取りで読み進めにくく感じた部分もあるけれど、決して専門的にはなりすぎず、あくまで一般向けに書かれていたと思う。
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言語が世界の認識を完全に規定するわけはないけど影響は与えるし、世界の限界を決めるわけはないけどその速度や難易度には影響を与える。
言葉が何を伝えるか制約するのではなく、何を伝えなければならないかを強制する。それにより形作られた習慣が、世界の見え方を少し変える。
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2022-02-22
SF者としては読まざるを得ない本。第Ⅰ部はイーガン「七色覚」に、第Ⅱ部はチャン「あなたの人生の物語」に通じる。もちろんどちらもSFならではの飛躍があり、それがキモとなっているわけだが。
特にチャンの飛躍「言語の獲得によって認識に変容が起こる」かどうかは、本書では触れられていない。先行研究もあるのかどうか分からない。けれど、経験的には、頭が英語モードの時は「主体」を意識しているように思う。ゆる言語学ラジオで言っていた、「荒野行動とCODの切り替え」をしている気がする。
さらに、近年の「ノンバーバルコミュニケーションの言語化」にも思いは広がる。ネットの普及によるテキスト表象の変化と、ネットの進化によるその変化の逆流入。例えば、BBS/SNSでの絵文字や略語(草とか)が、アバター表記や「クサ」という新語として認識される状況。言語は、猛スピードで消えると共に猛スピードで生まれているのかもしれない。
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こちらも途中で断念。「言語が好き」な私には合わなかった。この本は「言語学」に興味がないと、途中から飽きてくる気がする。
また行間も大変狭く、フォーマット自体すごく読みづらかった…。紙の新聞を読んでいる気分でした。
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とても興味深く面白い本だけど、読物レベルでも言語学的なものを読んだことのない人には、難しいかもしれない。理解が、というより、興味を持って読み続けるのが。
青緑問題や名詞の性問題は、よく話題になる分野ながら、科学的アプローチの結果を踏まえて書かれた一般向けの本は少ないと思う。
この本は、印象や文化論に寄りすぎず、言語自体の問題として、きちんと認識したい人にはとても良いと思う。
文化人類学的な解釈を期待する人は、オカルト現象の科学的検証のような、ある種の落胆を感じるかもしれない。
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言葉ってすごいんだなー。絶対方位感覚が必要な言語を習得することは到底無理だと思うし、そういう人と接したら、多分、超能力者か?と思うだろうな。赤は赤、緑は緑、と世界中の誰もが同じように捉えていると思ったけど、そうではない。そして、言語の影響があると知ってとても勉強になり、ものの見方が広がったように思います。
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言語からそれを母国語とする人達を分析することで、ものの考え方や感性が、言語に影響されたり、言語のルーツを感じました。
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生得主義が言語学の主流であるとは聞くのだが、面白そうだと思って手に取る本は、この本も含めて「非主流派」の本になりがちだ。本書の立場は生得主義に真っ向から反対するものでもないみたいで、自然により与えられた「制約のなかの自由」により、文化もある程度まで言語に影響を及ぼす、さらにその逆として、言語が文化に影響を及ぼすこともあるといったところ。
言語の「氏か育ちか」論争が、ある極端から一方の極端へと行き来する歴史も丁寧に解説しており、一種の科学史としても読める。
色の認知については、どこか他所で日本人の少し上の世代にミズイロの認識がないことを読んだ。ベーシックな知覚だけに驚いたせいで覚えているのだが、それにとどまらぬ様々な色の表現パターンが世界の言語にはある。面白い。グーグ・イミディル語の方向認識にも驚かされる。言語についての工夫をこらした実験デザインも興味深い。
そろそろピンカーあたりの本を読んでおいたほうが良い気もするのだが、あまり面白そうでないのだよなあ。
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AIによる機械翻訳が十分に進化したら外国語を学ぶ必要は無くなるのか?当然そんな事は無いわけだが、その理由が本書で述べられている。言語はコミュニケーションのツールというだけではなく、もしかしたらそれ以上にその人の概念や思考を司る。なかなか難しい内容だが奥が深く、膨大な調査量が知的好奇心を刺激してくれる。そして何より日本語ネイティブの読者にとっては本書もまた翻訳本であるという外側の構造も面白い。
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言語がどこまで思考を決定するか、概念を構成するのかという問いを言語学者たちの歩みと共に皮肉な文章を使い暴いていく。
とにかく文章が面白くて読みやすいのでスラスラいける。
言語学の歴史的な歩みを一緒に進めることができるので、言語学「史」としての読み方ができる
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男女言葉やニュアンスなど言語は多岐にわたります。
それが文化をつくって世界も違うのは当然だと思います。