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鎌倉在住の薬膳研究家、もちろん美女と知り合った柚木草平。高校時代に失踪した同級生の目撃情報が鎌倉周辺で増えているので調べてほしいと、彼女に頼まれる。早速、鎌倉の〈探す会〉事務局を訪ねるが、これといった話は聞けなかった。だがその晩、事務局で応対してくれた女性が殺害されてしまう。急遽、柚木は失踪事件から殺人事件に調査を切り替えたのだが……。月刊EYESの小高直海らおなじみのキャラクターに加え、神奈川県警の女性刑事など今回の事件も美女づくし。円熟にして最後の〈柚木草平シリーズ〉。
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柚木草平シリーズ最後の作品。
10年前に失踪した女子高校生の行方を追っていた柚木は、別の殺人事件に巻き込まれる。
相変わらずちゃらちゃらしているようで、へんに硬い柚木さんなのである。
で、なぜか美女が周りにいっぱいいる。作者の願望かww
まぁ、一見無関係のようだったものが、つながって、っていうのはミステリーの定石なので、いわずもがな、なのだけど、まあちょっと無理やりすぎかな。
って、結局はオチがね、って感じなのでそこに終点をもっていくには、仕方ないのだろう。
が、そこが終点でいいのか?
なんというか、すごい理不尽さを感じるのである。
うん。
そうだ。この小説の根底にあるのは、<理不尽>なのだ。
うーん。
世の中、そんなにいつの間にか、こんなに閉塞感にみちてしまっていたんだな。
狭いところで、あがくしかないから、理不尽に耐えるしかない。それに気づいている人もいたら、気づいていない人もいる。
まあ主人公が、そもそも閉塞に生きてるシリーズだからな。
って、面白く読んで終わったら…。
そうか。
そういうことだったのか。
だからシリーズ最後の作品なのか。
…人間としていつか来る、当然のことなのだけど、切ない。
ただ、切ない。
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元刑事のフリーライター柚木草平は、山代母娘の家で鎌倉在住の薬膳研究家である藤野真彩という女性と出会う。
10年前、高校生だった真彩の同級生が失踪しており、その同級生らしき人物の目撃情報が鎌倉周辺で増えているという。
成り行きで女子高生の失踪事件を調べることになった草平だったが、関係者が殺害される事件が起きてしまう。
1990年に「彼女はたぶん魔法を使う」で始まり、本作で12弾を迎えた柚木草平シリーズ。
いつだったか、書店で手に取った縁でずっと読み続けてきました。
主人公の草平さんはいつまで経っても歳を取らずに永遠に38歳のまま。妻とは別居中で、一人娘の加奈子には頭が上がらず、そして美女にはめっぽう弱い(というより甘いw)という、なんとも不器用で愛すべきキャラクターでした。
その草平さんの周辺が、前作の「うしろから歩いてくる微笑」でちょっと様変わり。これは新章突入かな?と思っていたのですが、作者である樋口有介さんが2021年10月23日に急逝されたとのこと。
本書の帯に記された、おそらく編集担当さんの文章によれば完結編の構想もあったとのことで、それを見届けることが叶わないということがとても悲しいです。
巻末の解説を担当された杉江さんの言葉にあるように、草平さんはきっと今もどこかを軽やかな足取りで歩き続けているのでしょう。そう思うと少し心が軽くなります。
なんだか完全に追悼文になってしまいましたが、本作でも草平さんの洞察力は相変わらず。
前振りが長いと言えば長いのですが、後半で一気に真相に近付いていくくだりはやはりお見事でした。
やっぱり草平さんはいいですね。きっと草平さんにまた会いたくなると思うので、しばらくしたら最初からまた読み返すのもいいな、と思っています。