紙の本
一言で言えば、「家政婦は見た!」
2002/07/11 23:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まゆげ - この投稿者のレビュー一覧を見る
梨花は、芸者置屋の女中になった。
その当時の一介の主婦が、職業を持って一人で生きていこうとすることは、並大抵のことではないと思うのだが、ひょっこりと置屋の玄関に現われるところから始まる。
いったいどんな事情があって置屋に身を寄せたのだろうか。
雇われた置屋の内情は火の車で、置屋の主人や芸者衆に小さな事件が日常茶飯事のように起こるが、梨花の目はそれらを注意深く観察している。
戦後のものの無い貧しい時代、外側だけ派手で内側は散らかり放題の浅ましさ、哀れさを見せられながらも、梨花も1人で生きていく力をつけていく。昭和らしい湿り気と暗いトーンが背景にあるが、ラストは道が開かれて晴れやかだ。
投稿元:
レビューを見る
あけすけな所まで行かない正直さを持つというのは、損でもあり得でもある、ということ。それと、必ず感じるのは事物事象を的確に捉えようと凝らされた視線の強さです。それが正直さを支えているのだと思います。言葉の選び方が厳しいところも、それでも何処かものごとにたいする愛着や愛情を感じさせるところも、やはり大好きです。
投稿元:
レビューを見る
時代設定や小説の舞台を把握するのに苦労はしたが、思っていたよりも、ずっと読みやすかった。というのも、文章が、丁寧なで優しくて温かで、日本語って本当はこういうものじゃないのかな、と考えさせられました。そして、何より「流れる」というタイトルがぴったり合うような、主人公・梨花の要領の良さと言うか、処世術は羨ましいばかりです。
投稿元:
レビューを見る
幸田露伴も読んだことないのですが、とっても読みやすいというなんかのレビューみたら読みたくなっちゃって図書館で借りてきました。
文庫版でないやつは、誰も借りた形跡がなかったのだけど、渋い桜色の装丁でとっても可愛かった。
とある芸者小屋のお手伝いをしてしまうことになった日々のお話。
今でいうと、「きょうの猫村さん」
知らない世界の常識とかってこんなんなのねーあらまー。
みたいな。
とっても読みやすい本です。
投稿元:
レビューを見る
小説は好まない。中でも私小説は嫌いだ。この作品を書くために作者の幸田文は実際に住み込みの女中を経験したそうだ。そう言う意味では嫌いな作品の候補であった。しかし、面白かった。暗い作品ではあったが、確実に滅びに向かっていることを意識しながらも何もすることができない、することをしない人々の逃げ場のない閉塞感が二〇〇八年現在の時代の閉塞感と符合して息苦しく、時にめまいを感じながらもワクワクした気分を維持しながら読了した。
投稿元:
レビューを見る
地に足の着いたかんじ。鄙びたかんじ。観察眼の鋭さ。率直な描写。
日本人だけどいまだに芸者の世界は未知だらけ。
「SAYURI」「さくらん」「舞妓HAAAAN!!!」など映画にもけっこうあるけど
どうもいまいち私自身が誤解しているような気がいつもしている。
まあ祇園で遊んだことなどないからわからなくて当然といえば当然?
投稿元:
レビューを見る
ばあちゃんから進められて読んだ、幸田文
初めて読んだのは「闘」だった。
意外と一生懸命読んだけど何せ中学くらいだったから
全然、そのよさとかじゃなく、ストーリーを目で追うばかりだった。
でも、久々に手に取ったこの「流れる」で
こんなに薄い本なのに、こんなにお腹一杯になるんかっていうくらい
すごい本なのにビックリした。
女の人の強さ、そしてボロボロの芸者長屋の雰囲気?
貧乏だけど、外面やお付き合いとかがしっかりしてる暮らしていうか
とにかくカッコイイ文体なのだ。
古い本だけど、すごいおすすめです
投稿元:
レビューを見る
図書館。
置屋の住み込み女中になったアラフォー寡婦・梨花の物語。
どちらかというと、ヒロインは傍観者的な存在。
口語体が心地よかった。
投稿元:
レビューを見る
四十過ぎの未亡人梨花は、没落しかけの芸者置屋に女中として住み込みます。
しろうとから見る花柳界は、芸者達のふとした仕草や姿の美しさに目を奪われたり、芸者を取り巻く風習の合理的な部分と曖昧な部分が入り混じった様子や、出入りする女の表裏が見えたりして、美しく華やかであると同時に、脆く哀しくもあります。
裕福な旦那の後妻に納まる女もあれば、貢いだ挙句に捨てられる女もあり、
美しく芸達者な主人の娘は醜く売れなかったり、そうかと思うと病気の姪は素行がおかしいが美しかったり。
どこか不揃いな人間同士が寄り合ったり交差したりしながら生きている、人間模様・人生模様がおもしろかったです。
投稿元:
レビューを見る
時代の流れで落ち目になっている芸者家の主人、年を取っても芸者としての実力の持ち主染香姉さんのすばらしさ、弱み、その両方を梨花が見ながら、また、くろうとの世界にしろうとが入って、下に見られながらも、しろうとの怖さを垣間見させる場面、梨花のすぐれたところが次第に認められながら、次第にこの世界を好ましく、離れられなくなってしまう梨花の気持ちが、最後の場面では強く感じられ、気持ちの良い読書になった。
投稿元:
レビューを見る
幸田文は、露伴を父とし、厳格に育てられ、結婚し一女をもうけるも離婚、離婚後に作家として成功自立しており、「家守る女」と「経済的に自立する女」との両方を体験した人。ちなみに、幸田露伴の妹たちは洋楽の先駆者であり、自立する女の先がけでもありました。その著者が、実際に花柳界に住み込んだ経験をもとに書きあげた昭和30年の作品。
そこから半世紀、「男女雇用機会均等法」からもう30年以上たつというのに、幸田文が抱え、彼女の小説にでてくる「女の葛藤」は今に通じる。「女が仕事で成功するためには女を捨てるか、女を武器にするかどちらか」とは今でもよくいわれる話でしょう?
この「流れる」では、女を武器にしているほうの女の葛藤を描いているわけですが、特にウーマンリブ的な女人に読んでもらいたい。「女らしさ」について、あるいは「女らしい女」について勉強になると思います。女同士だからこそ、わかっているつもりで、何もわかっていないことはよくあるでしょ? 社会の変化は緩やかだし、こと「女の経済的自立」という問題は、人間の根源(産む育てるという女の性)にからむ問題で、あと50年、いや100年後も「思うに任せない」状態が続くに違いないもの。
この本から女の自立についての答えは見つからないけれど、時間や時代の趨勢の流れ(=つまり社会)と自分との距離感、「流れに乗りたい」「落ちこぼれてもそれも良しとする」「流れに乗れない人(あるいは自分の側にいない人)にどういう態度をとるのか」等、隅田川の流れのようにゆるやかに肩ひじ張らず考える時間を持てる一冊だと思います。
How toの書かれたビジネス本や男女の性を精神的医学的な本で、ロジカルなアプローチをするのも良いけれど、同様に、もっと皮膚感覚で「女」というものを感じることって、遠回りのようで「女の社会適応」にとって必要なことだなと思われてなりません。
成瀬巳喜男監督、山田五鈴、杉村春子、高峰三枝子、岡田茉莉子等オールスターキャストで 映画化もされています。この映画のほうもオススメ。変わりゆく日本の街の風景、花柳界、建築、服装などが見事に映像化されていて、素晴らしい。
投稿元:
レビューを見る
すっげ!
と思った。
しなやかにして強靭。
流れるような文体。
登場人物の、誰をも憎めない。
人間臭いのに、愛しい人がいっぱいです。
投稿元:
レビューを見る
大分前ですがきものを読み面白いな~と思って購入。そのまま忘れていたのですが本棚を発掘したときに出てきたので読みました。
読み出したら面白くて!
でも読み終わって考えてみると結構切ない、寂しい話だなあと思いました。その辺りも橋のたもとで行こか行くまいか考えてるような心持なのでしょうか。
女性はたくましい!と言うかたくましくありたいなと思いました。
面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
初めて読んだのは中学の時です。難しい話ではないけれど、古い言い回しや物の名前等、分からない部分も結構ありました。
でも時にたゆたい、時に蕩々と流れる文章のリズムが心地よくて。
何度も読み返し、少しずつ腑に落ちて、そのたび味わいが増すように思います。
投稿元:
レビューを見る
今時人の所作にどきりとしたり、見惚れたりってないもんなあとしみじみ。
全てが素敵で憧れるわけではないけれど、全てが眉を顰めることばかりではない。
主人公が妙にその世界に惹かれてしまう気持ちがわかるかも。