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いやぁ~、上手いなぁ~!
思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう
冒頭のお米が炊ける描写の威力に
一気に引き込まれた。
(コレが官能的なのですよ笑)
本作は東京のとある商店街にある
『ここ家』という惣菜屋で働く
60歳の女性3人の
切なくもあたたかい日々を
季節の料理とともに描いた連作短編集です。
お喋りで豪快な性格の
『ここ家』のオーナー、江子(こうこ)。
真っ黒な短髪に地味な服装、
少し気難しい性格の麻津子(まつこ)。
三人の中では一番年上だが
内省的で内に秘める性格の郁子(いくこ)。
転んでもタダでは起きないしたたかさと
少女のような瑞々しさ、
歳をとる怖さなど豪快に笑い飛ばしてしまうほどの
芯の強さとタフなハート。
なんと人間的魅力に溢れた三人なのか。
それぞれがそれぞれの傷や
大人の事情を抱えながらも
季節の食べ物に力を貰い逞しく生きる彼女たちを見ていると、
年を重ねていくことも
そう悪くはないのかもと
素直に思えてくる。
(様々な料理を絡ませながら女性三人の生き様や辿ってきた道のりを浮かび上がらせる構成と人間の描き方は
本当にお見事!)
それにしても米屋の若いイケメン店員、進をめぐる
三人三様の争いにはホンマ笑ってしまった。
そして彼女たちの作る料理の
チョイスがまた
心に沁みる。
シメジと椎茸とエリンギに牛コマが入った
バター風味の茸の混ぜごはん。
烏賊とさつまいもと葱の炒め煮。
鶏と豚の合挽きを白菜で巻いて中華風クリームスープで煮込んだロール白菜。
江子の届かぬ想いが詰まった
京風おでんのひろうす(がんもどき)と
揚げたてのあさりフライ。
亡き母に思いを馳せる
麻津子のオリジナル料理の桃素麺と
麻津子が幼なじみにふられる原因となった
茹でたてのとうもろこし。
息子が死んだのは夫のせいだという思いから逃れられない郁子が作る
ほろ苦いふきのとう味噌。
何を好んで食べるか、
何を好んで作ってきたかは
毎日の積み重ねが如実に現れるし、
その人の経験や人生観が左右する。
簡単に言えば
料理にはその人の人となりや、
哲学や思想や人間力までもが
形として現れるものなんですよね。
主人公が若い女性ではなく
辛い過去を背負って60歳まで生きてきた
彼女たちだからこその手の込んだ料理の数々には
彼女たちが選びとってきた人生が浮かび上がるし、
生き様がオーバーラップしてくるのです。
人生はままならない。
だからこそ人は料理で未来に立ち向かう。
料理を作るという行為は
明日も生きていこうという生きる意志であり、
まだ見ぬ未来への祈りでもあるのかな。
人は自らが生きるため
愛するが人のために
料理を作る。
料理を作る行為は無意識��うちに五感を刺激するけど、
この小説もまた
匂いが、食感が、作る時の音が、
出来上がりの様が、
読むだけで目の前に浮かび上がり、
その味わいさえもが
文章の隙間から疑似体験できてしまう
お腹が空くと同時に
希望をくれる良作です。
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60代の女性達、いわゆるアラ還が主人公という内容が私にとって新鮮だった。
ただ楽しいだけではなく、色んな苦しみや哀しみも経て今を生きている。
総菜屋が舞台なので、美味しそうな料理がたくさん出てくる。「生きる事は食べる事」とよく言うが、まさにその言葉通り。ちきんと生活しているんだな、と感じる。
3人の仲は良くても近すぎない関係、良いな。こんな60代なら楽しそう。
2015.2.26
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暮らしの手帖系の手作り、丁寧な暮らしってすばらしいわね・・的な小説ではなく(タイトルからしてそんな感じかと)、主人公は下町のお惣菜屋を営む50代~60代のおばちゃん3人。
キャベツをいためながら、煮物をつくりながら、しゃべるしゃべる、かしましい3人組。
読んでいて思い出したのが、「ガール」(奥田英朗)という小説。“私っていつまでガールなのかしら?まだガールでいいのかしら?”と、揺れ動く20代末~30代の女性の気持ちを上手に書いていた。
その小説の中の女性たちの30年後の姿?
まだガールでいいのかしら?なんてことはないのだなと思った。悩ましいものは悩ましい。
年を経た分の余裕というか割り切り、潔さが加わる。
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食べ物と記憶ってリンクするからいい想い出も忘れたいこともいろいろ考えちゃうんだろうな。今はあんまり想い出の食べ物ってないけど、これから増えてくんだよね、きっと。忘れたい想い出でも味わって食べれる大人になりたいな。
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3人の熟年女性が個性的で、それでいて今でも女らしい部分もチラホラ。こんなふうに晩年を過ごせたら楽しいだろうな。何より出てくる料理がおいしそう!
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15/1/9
惣菜屋で働く60代独居女性たちの日常。
60代ってとても大人のような気がするけれど、諦めと慣れで落ち着いてゆくだけなのかな。
とても美味しそうなお惣菜がたくさん出てきて、切なくも笑いながら毎日を過ごす江子さんたちが作ってくれたらとても元気が出そうだなーと。
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色んな感情に翻弄されてそれでも毎日ご飯の時間はやって来る。
楽しみながら悲しみながらいつも傍にはご飯が。
食べたいよりも自分で拵えたいという気持ちでいっぱいになれます。
江子の笑い声だけが受け付けなかった。
あとは良かった。
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東京の私鉄沿線の商店街の中にある、お惣菜屋さんを切り盛りする、アラ還の女性3人の物語。
食べ物に関するエッセイだと思って買ったら、そういうお話だった。
3人はそれぞれ事情を抱えながら、今はシングル。
でも、アラ還でも、女は元気だ。
庶民的で、それでいてなかなかに凝った、美味しそうなお惣菜を作りながらの彼女たちの会話は、まさに女子会。
もちろん、コイバナもある。
う~ん、逞しいなあ~
みんな、90歳近くまで生きるのだもの、60歳で老け込んじゃいられないですよね。
サウイフモノニワタシハナリタイ
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お互いの嫌なところも認め合っている三人の関係は心地いい。見え隠れする孤独も三者三様の味わい。
明るく陽気に振る舞うほど内面の傷の深さが身にしみて、江子さんのページに胸がキュウッと締め付けられる。それぞれの心にしまい込んだ前に進めない想いは時にせつないが、少しずつ思考と時間、交流を重ねて人生を謳歌する姿は瑞々しく爽やかだった。
時間がかかっても過去から卒業していく人生でありたい。
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総菜屋のここやで働く60代の女性3人。
お店を舞台に、三人の日常やこれまでの人生が季節の味のたべものとともに語られている。
どの場面も、温かみがあり、おいしい匂いをまとっている。
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還暦を過ぎても、女子高生みたいな彼女たちが微笑ましく可愛らしい。
出てくるお惣菜も美味しそうだし、生きてく上で辛いことがたくさんあっても、彼女たちみたいに楽しく瑞々しく生きれたらいいだろうなぁ。
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商店街にあるお惣菜屋さんに勤める性格の全く異なった3人のおばさんたち。
幸福なときも、辛いときも、料理が側にある。
どの話にも美味しい料理があって、それが特別な料理じゃなくて家庭に出てくるような普通の料理。
読み進めていくたびに、台所に立ちたくなる本だった。
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恋と食い気の物語、少しお年を召した女性が主人公。
主人公は3人。一人一人の内面が、至極現実的な料理とともに描かれてゆく。
ドロドロしたものもあまりなく、読んでいて嫌なものがない。
諸々の事情で数ヶ月ぶりの読書、復帰一冊目には合っていたと思う。
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10年強前、自分が40歳になったとき、
『初老とは40歳の異称 』であると辞書で知り、
すごくショックだったことを覚えてる。(苦笑)
さすがに現代の40歳が初老だなんてことはなく、
イメージ的にはアラ還世代が初老なのではないだろうか?
この物語はまさに、そんなアラ還女性3人が主人公。
お総菜屋さんで働く3人の人間模様の連作短編集。
11編の美味しそうなタイトルをひっくるめて表題となっている。
50代の今の年齢で読んだからこそ、
あんな還暦なら楽しいかも、と思えてきた。
この作者の小説は、静かにドロドロしてる不倫ものとか、
曖昧な日常的恋愛なんかが多いと思っていたが、
こういうのも書くんだー?!という驚きがあった。
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その気分を飴のように味わう。悪くはない、と思った。飴の味はともかく、味わうものがあるのは悪くはない。(本文より)
歳を重ねるということは記憶を重ねることだと教えられた。そしてその記憶がいつもいいものとは限らない。
切ない、悲しい、持て余してしまうような記憶も、飴のように味わうことができるようになる強さを、この本に教えてもらった。