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地上で生活する地獄の王の第108子である西島俊。彼の望みはただ1つ地獄に堕ちた彼のヒーローであり守りたい相手の桜花櫻を救うこと。力のない彼は地獄に戻り第7子のネロに協力を仰ぐ。
個人的に綾里けいしはこういった暗い舞台と暗い主人公の設定の方が合っていると思う。暗い世界の中でほとんど救いもないけれど、それでもわずかな可能性にかけて足掻く主人公は魅力的だ。
そして登場人物のメインは俊、ネロ、櫻の3人の絞ったのがよかった。今回は敵であるエンドレアスを含め、ネロ以外の王の子たちの描写は必要最低限で抑え、継承戦でもそれは同様であった。どうも作者は複数人を同じ舞台に上げることが苦手な印象を何作か読んで思う。舞台上に複数人キャラがいるものの主人公含め3人程度しかメインに立てない。それが第1章だけならいいが最初から最後まで同じメンバーでしか立ち回れない。なので今作の敵と敵の駒は消耗品という設定はよかったように思う。ただ、メインのはずなのにネロはただの気分屋なお姉さんであまり地獄の王の娘感がなかった。むしろエリザベートの方が思い入れがあるだけあり魅力的に書かれている。人物描写を丁寧に書けるだけあって残念だった。