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初めての阿刀田高さんの短篇集。
本書は完全に大人向けの作品集だと思いました。
どれだけこの人の作品を楽しめるのか、試されているような。
「赤道奇談」ではサマセット・モームの名前が幾度となく、それでいて非常にさりげなく出てくるのですが、その「雨」を知っているのといないのとでは解釈がかなり違ってくると感じたし、他の作品ではラストにはっとするものや、なんとなくもやもやするもの、あとからじわじわくるものなど、どれも非常に読みやすく入り込みやすいのに、果てしない奥深さがありました。
原田マハさんのあとがきによると、読者に気づかれないほどさりげなく、研ぎ澄まされた文学的見識とセンスが散りばめられているらしいのです。
自分でも読み込めているのか怪しいけれど、それでもこの、日常に潜むちょっと不可思議な世界を楽しめました。
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この読後感はなんとも形容しがたく、なんだかそわそわして落ち着かない。
物語に置いていかれるような感覚と謎めいた雰囲気がクセになる。
これがブラックユーモアか。
決して愉快な内容ではない。
だけど笑えてしまう不思議。
特に「選抜テスト」と「母は愛す」なんてもう、笑うしかない。
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じわっとした嫌な気持ちも、なんとなくの爽快感もあった。良く書けた本だ、と思う。
文体も少し古いというか、丁寧な感じが、この本の面白さをまた、創り出している気がしました。