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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
読了して、不可思議な気持ちになりました。
本書の感想としては、『独特』に尽きました。幼少期から異様な程濃密に本と接してきたというのが独特で、中高生の時期からアンダーグラウンドなエリアや夜の街でディープに浸かりつつも大学には進学していたというのも独特で、総じてハチャメチャというか、メーターの針がMAXまで振り切ってしまっているような印象を受けました。但し振り切ったメーターは何かのタイミングで『表の世界』に戻ってくる事があり、そのタイミングというのが『本』であるという感じでした。
本書の最初から巻末付近までは、一貫して独特の言い回しと、学識ある人が使うような熟語による文体と内容に終始していました。それは数多の本を読んできた者に言える風体と思います。かなり哲学的な内容とも言えます。よってスラスラとは読み流す事が出来ず、一読しただけでは頭に残らないような感じです。
とは言え内容が陳腐かと言うとそうではなく、こういった環境に身を置いた人間だからこそ語れる感覚については新鮮な刺激を受けました。嘗て無い内容の本に出逢えたと思います。
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AV嬢、新聞記者を経て作家に。異色の経歴を持つ著者が、自らを「夜の闇に落ちきらない女」に育て、生き抜く力を与えた本を紹介する
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※まだ読み途中
圧倒的に強いジャケットに惹かれて読んでみる。
中央公論.jpで約1年間連載された内容の総集編。改題前は『夜を生き抜く言葉たち』、書籍化にあたりタイトルが攻めたものに変わっていることがわかる。これはおそらく正解だと感じる。
元AV女優という生き方が色濃く反映された内容ではあるが、慶應大学や東京大学大学院、その後に日経新聞に勤めるという素養の良さと文章に長けた能力の持ち主であることもわかる。
タイトルの通り、幼き頃から読書を通して育った著者の、その時々で思い入れのある本を紹介する内容である。前述したかなり変わった経歴、嗜好により、かなりの珍しい(?)作品が多く取り扱われていた。夜に関することや、身体のこと、時にはエロに近い内容で、著者の持ち味がかなり発揮されていて面白い。
ちなみに、本書は『アドレッセンスというものの中を突き進む若いオンナノコたちに向けて書いた』とされているのでわたしは対象読者ではないのかもしれないが、それでも手にとって良かったと感じる。
その理由としては、文章能力かと思う。面白く魅力的な読書感想文はこういうものか、という観点で読んでました。内容も相まって、かなり惹き込まれることは間違い無いです。
読書感想に自己の体験をこのように埋めるのかと感嘆していました。しかも、紹介されている本について読んだことがなくタイトルも聞いたことがない物が多数だったが、なるほどそういう話なのかと少しながらでもわかった気になっていた。一冊あたりの本の紹介が長すぎず短すぎないのもよく、この人が何に興味を持ち何に関心があったのか、どういう成長過程だったのかわかるのも良かった。また、紹介される本も、自己啓発本やビジネス本の類ではなく、物語やエッセイ集など肩肘張らないもので構成されていたのも良かった。
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読了。WEBで読めるから買わんでいいかと思ったが、本屋で見かけると買ってしまった。「はじめに 」を読んでショックを受けた。仕事も上の空で半日ぼんやりしていた。映画「娼婦ベロニカ」を見てみようと思った。
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感想文風エッセイのようなもの。あ~、わかるわかる、とそれなりの年代の女性なら思う所が多いのではないかと思う。この方の書き方なのか、一文が長い。その点は、読みやすいにくいが出るかもしれない。巷の文は短いんだな、と思えた。
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慶應義塾大学在学中にAV女優したり、その後東大院にいったりホステスしたりマスコミで働いたり。そんなインテリと性的サービス業を往来してきた元文学少女で現在アラフォーという、プロフィール濃すぎる著者の文学談。
文章表現が面白いとオススメされて読んだ本ですが確かに絶妙な表現が多くて楽しめました。取り上げられてる本(山田詠美とかサガンとか)も4冊くらいは既読のものでした。
以下一部引用
「人はお金を払うことで矛盾を補えるという錯覚を持つため、幾らか迂闊になりやすい」
「本当は、無意味の自由こそ最も大切にするべきことだったはずなのに、大人はそれを自ら手放してしまうのです」
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キャバクラ嬢、AV女優、新聞記者など興味深い経歴を持つ作家 鈴木涼美によるブックガイド。本の紹介というよりは、著者の半生が綴られています。様々なポイントで著者のそばにはいつも「本」や「言葉」があり、なにかしらの道しるべになっていたことが分かります。「娼婦の本棚」という刺激的なタイトルを冠していますが、いたって真面目です。個人的には連載時の「夜を生き抜く言葉たち」の方が本作の内容に合っていると感じました。ちょうど本書を読んでいるときに芥川賞の候補として名前が出ていました。
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「オトコノコ」である読者として、この本は実にスマートに書かれているのでツルツルと読めるが内容は手ごわい。女性が男に(引いては男社会に)よって否応なく選別され社会的に位置づけられるを得ないこと。その選別に聖女と娼婦の顔を使い分けるという意味で二重のアイデンティティを背負う必要があること。そうした「オンナノコ」の現実を明瞭に言葉にしており、その分析と解説の手腕に唸る。条件反射的に反論する前に、まずここまでスマートな著者のセンスが選んだ本に唸り解説を読むのも一興と思われる。「90年代の女子高生」のリアルを感じる
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著者の鈴木涼美は、慶応大学在学中にAV女優としてデビュー。その後、東大大学院に進み、日本経済新聞社に入社して新聞記者となるという異色の経歴を持つ。2016年に亡くなった母は児童文学研究家で翻訳家の灰島かり、父の鈴木晶は翻訳家で法政大学教授、エーリッヒ・フロムの『愛するということ』の訳者でもある。
「アドレッセンスというものの中を突き進んでいく若いオンナノコたちに向けて書いた」と著者が書くように、若いオンナノコが向き合うことになる性の問題について、身体の商品化の眼差しと意識化という観点を軸として、著者ならではの言葉を重ねている。
【概要】
『娼婦の本棚』では、以下の20冊の本が紹介されている。自らの経験と意見を絡めたその文章は書評として、とても整っている。そして、著者の経験がその言葉を特異で説得力のあるものにしている。
ひとまず、それぞれの名著をネタに語られる内容を一行にして、20冊を紹介してみる。
■ 『不思議の国のアリス』 ルイス・キャロル
・女の子だからこそ得られる意味からの自由の素晴らしさと脆さについて
■ 『”少女神” 第9号』 フランチェスカ・リア・ブロック
・青春の不安定さと見えなかったオトナの弱さについて
■ 『悲しみよこんにちは』 サガン
・聖母と娼婦の両極性と相補性。相反しながらも両立する価値と魅力について
■ 『いつだってティータイム』 鈴木いづみ
・「制服」が持っていた魔法のレッテルと束縛について
■ 『pink』 岡崎京子
・お金をもらって誰かと寝るという経験から見えることについて
■ 『性的唯幻論序説 改訂版』 岸田秀
・男女のワカラナサを壊れた本能を補うわれわれの幻想で説明することについて
■ 『蝶々の纏足』 山田詠美
・身体の商品化と眼差しが自らの中に生む卑屈さや軽蔑について
■ 『わが悲しき娼婦たちの思い出』 ガルシア=マルケス
・身体と引き換えにお金を払うことによる罪悪感の消去と関係の非対称性について
■ 『大胯びらき』 ジャン・コクトー
・少年期と青年期の乖離と一方での女性の身体性の言語化について
■ 『遊女の対話』 ルーキアーノス
・夜の街のお金の論理と倫理について
■ 『ぼくんち』 西原理恵子
・ドストエフスキーの『白痴』とおねえさんの崇高性について
■ 『大貧帳』 内田百閒
・幸福と不幸と心の許容度について
■ 『シズコさん』 佐野洋子
・母と娘の支配関係と赦しについて
■ 『夜になっても遊びつづけろ』 金井美恵子
・早逝するセックスシンボルたちの運命とオトナとなって生き延びることについて
■ 『私家版 日本語文法』 井上ひさし
・言葉について自覚的になることと、そして言葉を整えることについて
■ 『モダンガール論』 斎藤美奈子
・「女性」の歴史、性差別の根深さと階級差別との区別について
■ 『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』 鷲田清一
・制服という制度による属性付与と、制度からの逸脱と縛りについて
■ 『桃尻娘』 橋本治
・意味のない言葉の渇望と必然性について
■ 『モ��』 ミヒャエル・エンデ
・「時間」というもの「経験」というものについて
■ 『風の谷のナウシカ』
・腐海と風俗街との相似性、善悪二元論の否定について
【所感】
紹介された20冊の本は、かなり有名な本が多く、著者や本の名前は知っているというものが多かったが、なぜか読んでいない本ばかりだった。例えば、『不思議の国のアリス』や『悲しみよこんにちは』、『モモ』といった本読みの中ではほぼ必読本クラスなのになぜか読んでない。また、山田詠美や金井恵美子は、著作は手に取ったものの、あまり他に食指が動かず、ここで挙げられた本は読んでいない。その著作はほとんど読んでいる岸田秀の『性的唯幻論序説』は、内田春菊さんが表紙の装丁を担当された改訂版の方は読んでなかったりした。
「アドレッセンスというものの中を突き進んでいく若いオンナノコたちに向けて書いた」という著者の選書の意図が当たって、オジサンである自分には刺さっていなかったということはあるだろう。つまりは、読む本を選ぶときに図らずも性差のバイアスがかかっていることの証拠なのかもしれない。自己の一部が読んだ本によって形成されるのであれば、今の自分がバイアスがかかったものであることを自覚する必要があると改めて感じ入った。
また、通底するテーマでもある身体の商品化に関して、男性である自分は、少なくとも同じ意味では自身の身体の商品化について意識することはなかった。もちろん、女性でもこれまで自身の身体を商品として見ることはなかったという人は多いとは思う。しかし、実際に金銭と引き換えに売るということを行為を具体的に想定しなかったとしても、商品化の可能性を自覚し、比較の眼差しに暗黙的にでも晒されるということだけでも世界をどう認識するのかという影響は出てくるのだろうと思う。そういう普段考えたこともないことを考えさせる本だった。
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Twitterのフォロワーさんからのおすすめで読んでみた。
著者も言うように、「私の身を世界に繋ぎ止めてくれたものがあったとしたら、本の挟まれた付箋の横に刻まれた言葉なのだと思います」。この感覚、何となく分かる。私は著者のように夜の世界には生きていなかったし、親や先生が良しとする枠の中で生きてきたけど、それでも心と身体がチグハグになることがあって、その噛み合っていない2つを繋ぎ止めてくれたのが、本だった。
私にとって本はシェルターであり、精神安定剤だった。
「私の場合、紙に印刷された大量の文字をひたすら追って、痺れる一文に出会うことこそ本を読む醍醐味でした」私が活字を追わずにいられない理由はこれなのかもしれない。
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p30
本当は、無意味の自由こそ最も大切にするべきことだったはずなのに、大人はそれを自ら手放してしまうのです。
p41-42
伸びるよりも咲くことを選ぶある種の人々の生き様は、自分の若さがいつか必ず喪失するものであるとは信じたくない私には、潔く思えました。彼女たちを目の前にすると、昼の光の下で男と肩を並べて、無骨なまま輝こうとする女性たちはどこか愚鈍で要領が悪いような気がしたのです。
p70
そのかわり、自分がどんなに矛盾しても罪悪感に押しつぶされたり、疑問を抱いたりはしません。不条理な東京にいるのだから、個人も不条理であるに決まっているからです。
p148
昼の職にいた時に感じた、オカネについてやや不自由な気分というのは結局は比較的安全な場所にいる人というのは不運に対して許せる器量が目減りするという事実に依っているのではないかと思うのです。
p178
でも、言葉に不具合がないと思っていても、人生に感じている不具合が言葉に起因するものであれば、やはり言葉に関係しているとも考えられる。
p219
私には経験とは時間でしかないという感覚が、それこそ経験的な直感としてあるからです。
p221
空っぽな時間はそれでとても尊いものだし、空っぽな時間をふんだんに散りばめた私の若さは良質な青春だった。
官能小説を思わせるような表紙はどこか挑発的で、著者のバックグラウンドも込みで興味を惹かれ購読。楽しい読書時間でした。
著者の想定するターゲット外にいても、文章は、ある種、冷笑的、論理的と言えばいいのか、それ以上に論理主義的で清々しさすら感じます。つまりは、恐ろしいほどに客観的、俯瞰的であるし、AVや売春に対する後悔や嘲は感じられず、そこには冷徹で理知的な視点があるようにも思えました。
オトナやオンナ、オカネという単語に意味以上の意味と、視座を与え、読む人の価値観にも影響を与えるような文章。
書評、エッセイ、と一言で言えばそうなのですが、赤裸々で一般的な本の紹介文とは一線を画す。何より話の構成、導入がうまい。この人にしか書けないものを読んでいる、という感覚は心地よく、新たな気づきも多い読書時間でした。
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辛くて苦しいとき、何度も助けられた本です。
今まで知らなかった素敵な作品にも出会うことができました。
「私の身を世界に繋ぎ止めてくれたものがあったとしたら、本に挟まれた付箋の横に刻まれた言葉なのだと思います。」
「自分に見えている世界が必ずしも絶対的なものではないという予感は本が育ててくれた気がするのです。」
「紙に印刷された大量の文字をひらすら追って、痺れる一文に出会うことこそ、本を読む醍醐味でした。痺れる一文が一行でもあれば、登場人物が好きになれなくても、展開がスリリングでなくとも、結末が予想通りでも、全く難解でよくわからなくても、私はその本を読んだ甲斐があったと感じます。それはきっと私が、自分の言葉の不足を補うように本を読み出したことと関係しているように思います。」
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何とも独自の経歴。大学生からキャバクラ、AVなど。傍らには本。
書評本は数多くあれど、自分の肉体と精神の乖離をここまでうまく表現する作家はそうはいない。
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彼女の発する言葉が好きで読んでみた。
やはり、好きであることは確かだが、若干こういう内容の本は一気に読むものではないことに気づく。
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普段よりもう一歩深い読書体験ができたと思っています。
この人の言葉には艶があり、私たちがなかなか言葉にできない感覚や思いを
いとも涼しくさらりと述べています。