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沖縄の返還前夜の様子が当時の風俗、文化、歴史背景と共に描かれていて勉強になった。若い作家さん。これからが楽しみ。
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戦後、返還など沖縄の大変な歴史を改めて知りつつ、話はテンポよく進んでいく。
結構なハードボイルドであった。
ジャンルはミステリーだが、戦争に翻弄された悲しい悲劇、やはり文字の力で残していける小説は必要だ。
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1972年5月15日の沖縄の日本本土復帰を目前に控えた4月、円ドル通貨交換のための100万ドルが突如強奪される強盗事件が勃発する。
この事案が明るみにでればせっかくの施政権返還にアメリカ側が難色を示す可能性があるため、琉球警察が極秘チームの本土復帰当別対策室を発足させ復帰までに解決させる至上命題が下される。
その担当となったのが警視庁出向から戻って来たばかりの真栄田太一、上司の室長が皆に慕われている老刑事の玉城泰栄、事務補佐が刑事希望の新里愛子、そして応援としてかり出されたのが謹慎中で真栄田の高校時代の同級生で天敵の捜査一課班長の与那覇清徳、強盗事件の初動に関わった石川署の比嘉雄二の5名。そして米国側からCIDの憲兵で日系二世のジャック・シンシケ・イケザワ大尉が加わる。
強盗事件と戦後すぐに起こった女娼殺人事件が絡み合い、かつ日本復帰を巡る国防総省を含めた米国の縄張り争いなども加わり、事件はスケールが大きくなっていく。
作者は県外の方だが、東大で近代史を専攻していただけあって、資料を丹念に読み込み、今の沖縄の若者が分からないぐらい当時の状況を正確に描写している。
ハリウッド映画が描くなんちゃって日本や、日本のドラマや小説で描かれるなんちゃって沖縄を一線を画している。
特に歴史的描写、地理的描写には舌を巻いた。
ただ校閲もれが一箇所だけ。強盗に誘拐された琉球銀行の西銘勉次長の自宅が「豊見城村小禄」という描写があった(単行本90ページ)が、豊見城村と小禄は隣接しているが別の行政区域なのでここだけは地元の人が読んだらひっかかると思った。
また、主人公の真栄田が父親が台湾出身で戦後は石垣島に暮らし、本人も学生時代は沖縄本島で暮らし東京へ派遣ということで、琉球警察の中でアイデンティティの相克に悩む描写があるが、自分も父親が元々は宮崎出身で台湾で生まれ育ち、終戦時に祖母の出身地である石垣島に引き上げ、その後沖縄本島に移住したことから、その気持ちが痛いほど分かった。
映画化されたらなかなか見応えがあると思った。
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1972年の本土復帰直前、復帰後に沖縄県警となる予定の琉球警察。大卒が珍しかった当時の沖縄で、東京の大学を卒業し、故郷の琉球警察に奉職、警視庁への出向から帰ってきたばかりの真栄田太一警部補は、輸送中に強奪された100万ドルの捜査を命じられる。当時のレートで、3億円事件を超える額、これが公になると、沖縄の本土復帰に支障が出かねない不祥事に、少人数で極秘捜査を行う真栄田だったが・・・。本土復帰直前の沖縄の社会を背景に、沖縄人(うちなんちゅ)のアメリカー、やまとんちゅへの複雑な思いが交錯する。読み応えある1冊。
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五十年前まで、沖縄はアメリカの領土であった。
太平洋戦争の敗戦からすでに半世紀が経過し、アメリカに占領された沖縄は日本とは違う外国であった。
その沖縄が正式に返還されてから半世紀が経過する中で、アメリカ統治時代が如何なるものであったのか、返還に向けて起きた大事件に立ち向かう琉球警察の警察官たちを描いたのが今作になる。
作者はデビュー当時は西南戦争という、幕末から明治に至る中での転換期を描き、第二作目では敗戦後の大阪にあった大阪市警視庁を舞台の作品を描いた。
そして、今回は返還迫る沖縄の琉球警察という歴史の転換期を描いており、読み終えて作者の型が完成したことに大きな衝撃を受けた。
では作品についての解説だが、東京への出向経験を持つ主人公である真栄田太一は返還迫る沖縄にて起きた百万ドル強奪事件に携わる。
彼は沖縄本島の出身ではなく、八重山諸島の石垣島出身であった。
今作では沖縄の闇を描いており、本当とそれ以外の離島出身者への差別と、本島出身者の排他的な部分も描いている。
日大に進学し、東京で暮らしていた時は沖縄人として扱われ、警察の中では東京からやってきた奴として扱われ、果たして自分は一体何者なのかを問い続けていく。
彼の父親にしても、石垣島での生活を嫌っており、こんなところに来たくなかったと酒を飲んでは愚痴るという非常に女々しい態度を取っており、彼はそれを嫌悪しながら育っていった。
そうした中で自分が果たして一体何者であり、何のために事件を捜査しているのかを問い詰める。
そして、最終的に真栄田は自分が警察官であり、犯罪を取り締まることが使命であることを自覚する。
だからこそ、この本の帯にある「私は、この捜査が欺瞞にまみれているとしても沖縄の警察官として、沖縄の為に事件を解決しなければならない」という台詞を偽りない本心を吐き出した。
最終的に事件は無事に解決し、彼の奥さんが生んだ子は沖縄が本土に復帰した1972年5月15日に生まれる。
沖縄が日本という国家の一員となった時に生まれた子に、自分は一つの希望を見た。
この子は主人公である真栄田太一は無論のこと、作者である坂上泉先生自身が、そうした願いが込められているのではないかと思った。
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2022.8 真藤さんの宝島もスゴかったけれど、この小説も凄かった。へぼ侍、インビジブルに流れるハッピーエンドとは言えない渋み深みがこの小説にもある。
若い作家だけど坂上泉さんの小説は好きだな〜
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07月-09。3.5点。
沖縄返還直前、ドル回収時に強奪事件が発生し。。。
面白い。時代・沖縄・本土・八重山の人間関係など、興味深い。スピード感もあり、すぐ読めた。
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刹那いストーリーだったが、戦後沖縄の人々の苦悩を小説というタッチで描いているんだと理解した。
時代がそうさせていたのかもしれないが、元はといえば戦争に起因すると思うので、やはり誰も幸せにはならない事だから戦争だけは避けなくてはいけないと改めて強く感じた
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2023-8返還前夜の混乱と今に続く差別の連鎖。近代史とも言える沖縄の苦悩が今も感じられる作品である。戦争はするもんやないね。
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沖縄返還50周年のための書下ろしハードボイルドミステリー。
琉球警察物でいえば伊東潤の「琉球警察」、アギヤーと言えば真藤順丈の「宝島」があるが、本作は返還カウントダウンというタイムリミットもあり一気に読めました。
ミステリー的には後半でインフォーマーの伏線がいきなり出てきたのでちょっと残念です。
とはいえ、占領下から返還までの沖縄の悲惨さは大変だったと思いますが、現代でも問題の禍根は残ってますよね。
週刊ポストに連載していた柳広司の「南風に乗る」が占領下の歴史の詳細を知るのにはよいと思います。
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若い作者が沖縄をここまで描くとは。ミステリーの形をとった告発だと思った。「インビジブル」も良かったがすごい書き手だ。
双葉社さん、もっといい表紙にしろよ。
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昭和47年、沖縄の本土返還直前に現金輸送車が襲われ100万ドルが強奪される事件が起きる。日米両政府に知られぬよう穏便に事件解決を画策する琉球警察。沖縄戦や戦後の沖縄県民の置かれた立場を考えると心が苦しくなってくる。沖縄の終戦は昭和20年ではなく昭和47年なんだなと改めて感じた。
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2時間ドラマ的な粗さは、時々目につくけれど、途中からはスピードに乗って読み進められる。
当時は、休日になることぐらいしか意識していなかった沖縄返還。たしかに様々な「問題」があったのだろう。政治や経済以外にも。生活する者たちにも。