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ジョン・ポリドリ「吸血鬼」の新訳目当てで購入、読了。
吸血鬼小説の鼻祖とされる
ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』より前に
発表されていた19世紀英米の吸血鬼小説アンソロジー。
【収録作】
ジョージ・ゴードン・バイロン
「吸血鬼ダーヴェル――断章」(Fragment of a Novel,1819)
ジョン・ウィリアム・ポリドリ
「吸血鬼ラスヴァン――奇譚」(The Vampyre:A Tale,1819)
ユライア・デリック・ダーシー
「黒い吸血鬼――サント・ドミンゴの伝説」
(The Black Vampyre:A Legend of Saint Domingo,1819)
ジェイムズ・マルコム・ライマー&
トマス・プレスケット・プレスト
「吸血鬼ヴァーニー――あるいは血の晩餐」
(Varney the Vampire;or the Feast of Blood,1847)
ウィリアム・ギルバート
「ガードナル最後の領主」(The Last Lords of Gardonal,1867)
イライザ・リン・リントン
「カバネル夫人の末路」(The Fate of Madame Cabanel,1873)
フィル・ロビンソン「食人樹」
(The Man-Eating Tree,1881)
アン・クロフォード「カンパーニャの怪」
(A Mystery of the Campagna,1886)
メアリ・エリザベス・ブラッドン
「善良なるデュケイン老嬢」(Good Lady Ducayne,1896)
ジョージ・シルヴェスター・ヴィエレック
「魔王の館」(The House of the Vampire,1907)
※この作品のみ例外的に20世紀に入ってからのもの。
ジョン・ポリドリ「吸血鬼」の新訳目当てで購入、読了。
吸血鬼小説の鼻祖とされる
ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』より前に
発表されていた19世紀英米の吸血鬼小説アンソロジー。
やはりモダンホラーよりゴシックの方が自分の好みに合う……
と再認しつつ、表題作以外はあまり刺さらなかった。
概ね中途半端なボリュームで、
読んでいるうちに飽きてしまいがちだったせいかもしれない。
収穫はバイロンの未完の作「吸血鬼ダーヴェル」に
描かれなかった終盤の流れをポリドリが流用して
「吸血鬼ラスヴァン」が完成されたのを確認できた点と、
以前、原著のペーパーバックを
買って読もうかどうしようかと迷った
ライマー&プレスト「吸血鬼ヴァーニー」の抜粋を
読めたこと。
《ヴァーニー》は1845~1847年に英国の廉価週刊誌で
連載された長編“三文恐怖小説(ペニー・ドレッドフル)”
全232章(!)の抄訳。
フランシス・ヴァーニーと名乗る吸血鬼が
生き長らえるために人を襲って血を啜ったり、
財産を奪おうと画策したりするのだが、
複数の筆者によって書き継がれたらしく、
類似パターンのエピソードを繰り返すかと思えば、
主人公の来歴に都度矛盾が生じるといった
脈絡のなさを提示してもいる、歪な長編小説。
しかし、不自然なまでの長大さと、
ある種のデタラメさが、却って不老不死の吸血鬼なる
不条理な存在を活写することに貢献したと
言えるのではなかろうか。
*各編についてのコメントは後刻ブログにて。
https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/