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紙の本
殺人犯になるより避けたいこと
2007/04/01 01:56
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kay - この投稿者のレビュー一覧を見る
「藪の中」(芥川龍之介)を読んだことがなかったので購入しました。いろいろ考えさせられる物語です。
推理小説で犯人がわからないと、読者は本当に気になってしまいますが、この物語が書いているのは「誰が犯人か?」ではなくて、殺人犯になることよりも避けたいこと、人にとって死よりも避けたいことは何なのかということではないでしょうか?
盗人の多襄丸も、武弘も、武弘の妻(真砂)も、武弘を殺したのは自分だと言っています。
通常の推理小説なら「殺していない」と言っている人達の中からウソをついている、殺した人を捜すのに、ここでは「殺した」と言っていることがウソ、殺したことよりも隠したいことを捜すことになります。
盗人が隠したいことは、妻(女)を手に入れたあと逃げたことでしょうか。女に惚れてそして正々堂々と夫の武弘と戦ったことにしたい。
真砂が隠したいことは、夫を盗人に殺させてその間に自分は逃げてしまったこと、でしょうか。自分の名誉のために、二人で心中するつもりだったが自分は死にきれなかったという形にしたい。でもこれは無理があります。それなら、武弘に小刀を渡し、まず自分を刺して殺して欲しい、そしてあなたも死んで欲しいというべきでしょう。
武弘が隠したいのは、「自分が妻を蔑んだ」ことでしょうか。たとえ不可抗力でも妻を許せないと思ったことは知られたくない。自分が妻に裏切られて自殺したと思って欲しい。
結局人は、名、誇りのために生きているのかもしれません。
単語はそんなに難しくありませんが、文法がやや難しいのと、発言が矛盾しているので推測しながら読むというわけにはいきません。ストーリーは短いのに読むのには時間がかかりました。
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