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宇佐美氏は短編も上手いし面白い。これだけあると好みもあるが、表題作の「夢伝い」や「エアープランツ」「愛と見分けがつかない」「卵胎生」「果てなき世界の果て」あたりが面白い。怖さや怪しさがそこはかとなく漂流するような雰囲気があり、読後もフワフワした気にさせる。どんな内容の文章でも宇佐美作品は文句無しに面白い。
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ちょっと現実から逸脱してしまった人々を描いた11篇を収録した短篇集。帯にあるとおりホラー寄りではあるが、そんなに怖くはない。
宇佐美さんは長篇の作家という認識で、短篇集を読むのはこれが初めて(他にもあるのか?)。この作家らしいバラエティーに富んだ作品ばかりでとても楽しめた。
男女の、あるいはもっと大きな人の“業”とでも呼ぶべきものが主題と読んだ。悲しく、不気味で、そして愛おしい。
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11編の短編集。
どれも日常に越境してくる異界を描いたものである。
ゾクゾクするような怪談とは、ちょっと違う感じがした。
不気味さといったほうが近いかもしれない。
表題の「夢伝い」は、眠れない怖さがひしひしと伝わってきた。
恐怖や戦慄もあるのだが、短編でちょうど良いと思えるくらいだった。
あまり、長くなると記憶の底に残りそうで、怖い。
「エアープランツ」は、不気味さが半端ない。
「果てなき世界の果て」は、コロナ禍ならではのバーチャルで、予測不能な怖さを感じた。
「母の自画像」は、選ばなかったもうひとつの道。
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好きな作家なので。
短編集。
なにげない日常生活からするりと異世界に入っていく展開は、
相変わらず見事。
短編の場合、
異世界までのアプローチも短いので、
恐怖感や緊張感が積みあがることなくさらりと読める。
全くもってだまされた「水族」、
でも「湖族」は途中で気がついた。
「満月の街」は、
満月の夜だけにビルの隙間に過去の街が現れる、というのが心を打たれた。
作家が主人公な作品を読んだばかりのせいか、
冒頭の「夢伝い」も印象的だったし、
独白の続く「愛と見分けがつかない」は
何だか腑に落ちる感じだった。
本当に怖いのは、幽霊でもなく異形の者でもなく、
人の心だということがじんわりと心に染みてくる。
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表題作他、全11編の。ホラー・奇譚集。怖い話、不思議な話というだけでなく、どんでん返し的な話もあり、宇佐美さんのストーリーテラー振りが遺憾なく発揮されている。このところ、ホラーではない小説が続き、宇佐美さんは、もうホラーは書かないのかと思っていたところだったので、長編ではないが、久し振りのホラーテイストに、懐かしさをも感じる。表題作は、夢を伝って、何かがやって来るというのが、じわじわと怖い。そして、選ばなかった別の世界が、パラレルワールドではなく、同じ世界に理想郷として存在するという「母の自画像」が秀逸。
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現実とさまざまな形の非現実を行き来するような、不思議で不気味な話が11篇収められた怪奇短編集。
事実が明かされていくほどに、奇妙なまでに辻褄が合っていく過程と、静かに迫ってくる不気味さと恐怖が秀逸な表題作「夢伝い」をはじめ、話はどれも恐ろしいながらも美しくまとまっており、余韻も良く、そのうえ読みやすいため一気読み必至。
どの話にも異界や幻想的な展開が共通してあるのだが、決して一本調子ではなく、素晴らしいまでのどんでん返しがあったり、意表を突く結末もあったり、恐怖だけでなく切なさがあったり…
怪奇短編集ではあるのですが、ほんと怖いだけじゃないんですよ。話の流れが流麗で…
表題作の夢伝いは、展開的にもまさしくホラーと言えますが、どちらかというと怪奇というより幻想譚めいた話も収録されているので、怪奇短編集とあまり思い込まずに読む方が楽しめる気がする。
と、私は思います。
なぜこんなに素晴らしい短編をこんなにも書けるんだ!?と思うくらいどのお話も響く。
かなり好みどストライクな作品に出会ってしまった…。宇佐美さんの小説はお初なのですが、以前から気になっていた他の作品もぜひぜひ読みたくなりました。
ちなみに本書の中で一番好きなのは「沈下橋渡ろ」です。
「送り遍路」と「母の自画像」も秀逸。
あーでも「水族」も「愛と見分けがつかない」も「卵胎生」も「湖族(たしか十数ページほどと一番短い)」も「満月の街」も好き!(全部じゃん)
備忘録がてら各短編のタイトルを記載しておきます。
夢伝い
水族
エアープランツ
沈下橋渡ろ
愛と見分けがつかない
卵胎生
湖族
送り遍路
果てなき世界の果て
満月の街
母の自画像
*以下あらすじ・ネタバレ含む各話の感想*
時間がないので全部じゃないです。泣
・夢伝い
今ノっている作家・猿橋ヒデヲの担当編集をしている主人公・増元。
次回作の執筆が進まないなか、猿橋からはもう書けないとメールが送られる。
増元が猿橋の元を訪れて書けない理由を聞くと、スランプではなかった。彼は今までの作品を考えていたのは、児童養護施設時代の友人・相澤なのだと言うのだ。
さらには猿橋は相澤を殺してしまったともー。
事実を明らかにすべく興信所に調査をするもほとんど空振り状態。最終的に増元は相澤の家を突き止め訪問するのだが…
なるほど、夢伝いってそういうことね。
夢を伝って…それだけの話なら言ってしまえばありがちな展開かもしれない。けれど、それが明かされていく過程と、その発想に一滴も二滴も隠し味を入れて話に深みを増しているところが(本作に限らないが)本当にすごい。
猿橋の件を明らかにする中で、同時に増元の方の問題も同時進行で明かされていく。増元が昔付き合っていた女が孕み、父親はどう考えても貴方しかいないと認知を求められていた。しかしどう考えても彼女と付き合っていた時期が合わない…その子どもは一体誰の子だ?
結末の締めかたがうまい。
この話を読んで、もうこの短編集に心を掴まれてしまった、そんな一品。
・水族
主人公・麻里は友が浜水族館に通っていた。
その水族館にいるシロイルカ・ベガが好きなのだ。恋人とよく通った場所でもある。
彼女は卓也と婚約していたのだが、もうすぐ結婚というところで卓也が麻里の目の前で自動車事故を起こしてしまい…
水族館で働く、麻里とも交友のあった卓也の昔からの親友・亮の働きぶりを遠くから眺める麻里。
亮は件の事故現場に黄色いバラを供えていた。
黄色いバラは麻里の好きな花で、結婚式の会場を飾るはずだった。
麻里は思い返す。
お金持ちゆえの無邪気な卓也と、実家の自動車修理工場の経営が傾き、過酷な人生を送る亮。
2人の間には深い友情があった。しかし、あまりにも境遇が違う2人の間で、ゆとりある金持ちゆえの無神経さを持つ卓也と付き合い続けるのに、亮は苦しんでいたのではないかー
さらにあの自動車事故には不審な点があり…
悲しくもあり、やるせなさもあり…それでいて衝撃のラスト。
「水族って面白い言葉だろ?だって水族って独立した言葉はないんだから。」という台詞が目から鱗で印象に残っている。
・エアープランツ
会社で仕事ができないとよく上司に叱責され同僚にはそれを嘲笑われている千春を、同僚の主人公(女性)は生花店の前で見かける。
千春がエアープランツを嬉しそうに買うのを、主人公はバカじゃないのと思っていた。
しかし、ただ部署のお荷物だっただけの千春に、だんだん奇行が目立ち始める。盗癖ができてしまったのだ。会社にある他人の私物を何でもかんでも盗んでしまう。
そのうち無断欠勤するようになった千春の様子を上司に見に行けと命令される主人公。
行ったものの、部屋は空っぽ。
部屋の中にあの時千春が買っていたエアープランツを見つけた主人公は、なんとなくそれを持ち帰ってしまう。
その後、主人公の身にも異変が…
この話も面白かった。これは夢伝いと同じく、まさしく怪奇譚だと楽しんだ。主人公のことは好きではないが…
・沈下橋渡ろ
上に書いたように一番好きな話。
主人公・祐司は、今はもう寂れた、かつて過ごした祖母宅があった、高知の山奥にある棚枝集落を訪れていた。
沈下橋渡ろ
沈下橋渡ろ
こっちの岸からあっちの岸へ…
祐司が小学校の時学校で習った歌(not全文)。
なんだか惹きつけられる歌だが、祐司の学校の音楽の教師が作った歌、という設定とのこと。ロンドン橋落ちたを想像して、この時点で少しドギマギしてしまった。
さて、なぜ祐司は今は廃屋と化しているはずのかつての祖父母宅を訪れようと思ったのか。
彼は重田という男を殺してきたところだった。
重田は祐司の妻を殺した。当時誰でもいいから殺したかったと証言した重田は、犯行当時未成年だったため被害者遺族である祐司にも素性を明かされなかったのだが、今は魅力的なゲームを作って一儲けしている重田の顔写真を見て、あの時の犯人だとわかってしまったのだ。
重田が本当に祐司の妻を殺した理由を問い詰めたところ、家電量販店の光るロゴマーク、星形の真ん中がくり抜かれた形のマークが妻の背中に映ったのが的みたいだったからだと答えた。
そんな風に話す彼の態度はとても反省しているようには見えず…
話を棚枝集落に戻す。
他の集落の家屋はどれも崩れていたにも関わらず、もう誰も住んでいないかつての祖父母宅は、まるで当時のままであり、祐司が住んでいた時飼っていた鶏さえいた。
不思議に思いながら祖父母宅を探索するうちに、だんだん子ども時代を思い出す祐司。
当時祐司は陰湿ないじめを受けていた。離れて都会で働く母の悪口も言われた。タチの悪いことにいじめの主導者は村の有力者で、逆らうことができなかった。
苦しんだ祐司は……
過去の因縁が悲劇を織り成し、果を生み出した。祐司が辿り着いた先の帰結。なぜか当時のままの祖母宅で、もういるはずのない祖母に「もうええぞ、祐司」「気が済んだか?祐司」
「うん」
辛かった。残酷な因果だ。けれど、ある種穏やかな、救いさえ感じられるラストに、辛い以外の感情もないまぜになって、もう感情がめちゃくちゃになった。
・愛と見分けがつかない
さまざまな人物の視点からの証言集のような形で進んでいく本編。
その証言は共通点を次第に生み出し、2つの事件…いや、3つの事件の原点を明らかにしていく。
かたや教育虐待を受けていた少年と、少年の目の前で喘息の発作を起こし死んだ気位の高かった母親。母親は用意周到で、吸入薬を常備していたはずなのだが…
かたや憧れの先輩に告白して付き合い始めたものの、彼氏に暴力や異常な束縛、人格否定をされていた高校生の少女。彼女は彼氏をナイフで刺し、彼は重度の寝たきり障害者に。
絡み合う二つの事件と被害。
「憎しみと愛とは見分けがつかないのよ」
伝播する暗い思い。
どうにかならなかったのだろうか…と思いつつ、彼らの運命に想いを馳せる。
・送り遍路
これは沈下橋渡ろと雰囲気が似てると思った。
そしてこの話も私は好きだ。
「あんたのその手で」
「殺さないかん」
送り遍路となって、円環のような四国八十八箇所を巡り続ける彼女たちは…
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タイトル『夢伝い』を含む11篇の短編集。「恐怖と戦慄の怪談集」の期待其の儘に、何れもが生々しく不思議で美しかった。終始物語に陶酔し、著者の思惑通り、どっぷり彼方の世界に引き込まれた。
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「夢伝い」「水族」「エアープランツ」「沈下橋渡ろ」「愛と見分けがつかない」
「卵胎生」「湖族」「送り遍路」「果てなき世界の果て」「満月の街」「母の自画像」
11話収録の怪奇短編集。
装丁から既に宇佐美ワールド。
数行読み進めば、あっという間に静寂で湿り気を帯びた宇佐美沼に、どっぷりと呑み込まれてゆく。
怪異と怪奇が全編に共通するテーマだが、それぞれシチュエーションが全く異なり、その不思議な世界に磁石のように引き寄せられ身動きが取れなくなる。
得体の知れない恐怖や、薄気味悪さで背筋に冷たいものが走る選りすぐりの作品集。
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薄暗い雰囲気が漂うし、儚いし恐ろしいし、でも描かれている風景がなんとも私好みの美しいものでとても読んでいて心地よかった。割とさっくり読めてしまうホラー風味のファンタジー。
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2.6。一つ一つなら気にならないのだけど、連続するとどうも安易さや主人公とその近く以外の人間への蔑ろさが浮き彫りになって最後の方はちょっと辟易してしまったかな。
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ホラー短編集。ファンタジー風味を盛り込んだりさまざまなテイストのホラーを楽しめます。物悲しい着地点が何とも言われぬ感じ。宇佐美さんが描くホラーを堪能できました。
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日常に潜む不可思議なこと。
夢を伝ってやってくる、死んだはずの友人。
ヴァーチャルの世界で恋をする男女。
パラレルワールド。
様々な不可思議が書かれているが、短編集と言う事もあり各作品が短すぎて物足りなかった。
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不思議な、そして少し怖い短編小説。
ちょっと気持ち悪いところもある。
人間の嫌な部分がちょっと表面化したら、こういうことが起きるんじゃないか?と思わせるような短編ばかりだった