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性犯罪による父親の逮捕を機に瓦解した家族。出所後の復讐に怯える母親。家出し、消息不明の姉。罪なき罰を背負わされた北町貫多は17歳、無職。犯罪加害者家族が一度解体し、瓦礫の中から再出発を始めていたとき、入所から7年の歳月を経てその罪の張本人である父親が刑期を終えようとしていた。──表題作と“不”連作の私小説「病院裏に埋める」、〈芝公園六角堂跡シリーズ〉の一篇「四冊目の『根津権現裏』」、“変化球的私小説”である「崩折れるにはまだ早い」の全四篇を収録。
没後、初めて読む作品。変化球がよかった。
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2022年2月5日、西村賢太死去。享年54。
文庫派の不肖な読者だが、残された仕事を、今後も読み続けていきたい。
■瓦礫の死角
「魔太郎じみた性質」!
■病院裏に埋める
「坊ちゃん坊ちゃんした至極誠実で真面目そうな見た目」!
■四冊目の「根津権現裏」
落日堂新川さんの過去ワロタ。盟友なんだか被害者なんだか。
■崩折れるにはまだ早い
!!!!! 西村賢太を読んで久々に驚いたわ。
◆あとがき
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惜しい人を亡くして損失大だと思う、日本の純文学の世界。
相変わらず枯れた純文学調の文体の中に罵声を混ぜたり「アイテム」「ノーサンキュー」みたいなカタカナ言葉を入れて敢えて浮かせて笑いを取るのがうまいなーと思う。今を生きる現代人の感覚と文豪チックな明示大正昭和の感覚がないとあの面白さは出せないと思う。懐古調の文体に著者自身が溺れてしまうような作家もある中、現代に軸足を置きつつ過去の文体を力技で引き摺り出してくるような特異な筆致、これは著者の唯一無二の芸だと思う。
内容はお母さんをいじめる短編と男色家に狙われる短編はDVシリーズほどのインパクトがない。古本屋の風俗のエピソードはユーモアとペーソスが満量処方してという感じで最高。
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相も変わらず露悪的な短篇集。いい歳した高齢フリーターを蔑む若者といった視点は悪いなぁと思いつつ、大学時代の自分がバイト先で抱いた薄汚い気持ちそのものであり、自分が綺麗な人間ではないことをまざまざと感じさせてくれる。
自分を一般化するわけではないが、コンプライアンスだ何だとどんどん煩くなっている世の中で、人間の本当の姿を垣間見させてくれる短編なのかもしれないな·····と感じた。自分の矮小さを存分に味わうこともできずに、何ができるというのだろう。
同著者が芥川賞を取ったばかりに読んでいた頃には、そんな感想を抱くことはなかった。自分が変わったのか世の中が変わったのかは分からない。
最後の短編は、普段の私小説とはひと味違う変化球。この人が書くいつもと違う変化球小説を、もっと味わってみたかった。帯に書かれる追悼の文字と著者の笑顔の近影のせいで、梅雨明けなのに晩夏のような物悲しさに襲われた。ご冥福をお祈りします。
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本の題名になっている「瓦礫の死」も面白かったが、僕としては西村賢太さんが師と仰いでいる藤澤清造氏の事を小説にした「四冊目の『根津権現裏』」や「崩折れるにはまだ早い」、そして西村賢太さん自身で書かれた「あとがき』が優作だとおもった。
今回もやはり西村賢太ワールドに引き込まれてしまった。
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西村賢太2冊目。べらぼうにおもしろい。
なんだろう、本人はいたって深刻なのにどうしようもなく滑稽なモノローグの味がとても好きだ。
「崩折れるにはまだ早い」はオッ、そういうのもあるのか…と思った。